229号表紙

No.229(平成3年11月)

特集:

布引公園

布引公園

(左)
布引ハーブ園の「ラベンダー園」に咲くアヤメ科のハーブ、サフラン。秋に紫色の花をつける。この花のオレンジ色のめしべを乾燥したものが料理に用いられるが、めしべを集める手作業に時間がかかり、1グラムのサフランをとるのに160個あまりの花が必要とされるため高価である。秋のラベンダー園に彩りを添えようと、オープン後初の連休(11月3・4日)に見てもらうため植えられた

写真
新神戸ロープウェーのゴンドラからの素晴らしい展望。右側の海上にポートアイランド、左側に六甲アイランドがくっきりと見える。手前のビルは新神戸オリエンタルホテル

布引ハーブ園・新神戸ロープウェー

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  • 写真山頂広場の彫刻「錐形の時間」(鈴木久雄作)。現代人が日常的に得ることのできない悠久とした時の流れ、時間のサイクルへの思いを、ステンレスの風化様相で表現
  • 写真市街地と布引ハーブ園を結ぶ標高差330bのロープウェー。ダイナミックな市街地の展望とともに、山の景色にも秋の深まりが感じられる
  • 写真北野1丁目駅から約10分で山頂の布引ハーブ園駅(写真中央やや左)へ。山頂広場からの眺望は素晴らしい

布引ハーブ園
おしゃれな香り「布引ハーブ園」オープン

 約百五十種・七万五千株のハーブに囲まれた「布引ハーブ園」が、十月ニ十三日オープンした。同園は、市制百周年を記念して布引公園内のJR新神戸駅北側の六甲山系・世継山(四一八m)南斜面に建設されたもので、市街地や大阪湾の眺望も抜群。園内のいろいろな施設やゾーンは、ハーブのおしゃれな香りや色だけでなく、ハーブと人間生活のかかわりなど、ハーブのすべてを知り楽しむためのきめ細かい工夫がされている。
 そして、ハーブとの出会いは山麓とハーブ園を結ぶ新神戸ロープウェーで。「神戸夢風船」の愛称がつけられた六人乗りのかわいいゴンドラが、異人館街にも近い新神戸の「北野一丁目」駅から山頂の「布引ハーブ園」駅までを、約十分で上り下りしている。ハーブ園とともに、ロープウェーからの素晴らしい眺望も神戸の新しい名所として人気を集めている。
 布引ハーブ園の主な施設・ゾーンを紹介すると―。

 〔展望レストハウス〕
 ヨーロッパ中世の古城をイメージしたしゃれた造り。レストランでは神戸牛や瀬戸内海のシーフードなど、神戸ならではの新鮮な素材にハーブスパイスを効かせたオリジナル料理が楽しめる また、グリーンショップでは各種のハーブや、ハーブグッズも豊富にそろっている。

 〔香りの資料館・森のホール〕
 香りの資料館では、約百六十種の香水びんや、油に風味をつけたハーブオイルの抽出器、天然の香料などの展示品を集め、ハーブと香りの歴史を詳しく紹介。また、木構造で音響効果が良く、落ち着いた感じの森のホールでは、コンサートや映写会などさまざまなイベントが行われている。

 〔見本園〕
 立体ハーブ図鑑を見るようなスペース。約七十種のハーブの主な利用法が一目で分かるように、料理用、薬用、芳香、ハーブティーなどのテーマごとにハーブを植栽している。中央部にあるレスト・プレース(休憩所)のベンチに座ると、ローズマリーのさわやかな香りが漂う。

 〔香りの庭園〕
 ハーブをながめながら散策できる日当たりの良い南斜面の庭園。四季それぞれに咲くブルーの花を集めた「ブルーガーデン」、青紫色の花から甘い高貴な香りが漂う「ラベンダー園」、リンゴの香りのする「香りの芝生」「滝のレス卜」などがある。

 〔グラスハウス〕
 ガラス張りの四つのドームからなるグラスハウスは、ハーブを知り、感じる体験ゾーン。温室内に小川が流れる「香りの温室」は、カレーに使うスパイスの木や草、クッキーに入れるハーブなどをテーマごとに紹介し、一年中楽しめる。このほか、スパイスの利用法や魅力、歴史などを紹介した「スパイス工房」、ヨーロッパの家庭のリビングなどを通して、ハーブのある生活を紹介した「ハーブの家」などがある。また「カフェ・グラスハウス」では、スパイスを効かせた軽食やハーブティーが味わえる。

  • 写真中世ヨーロッパの古城をイメージした山頂広場。広場の左は展望レストハウス、その右側の時計のある"城門"をくぐると、向こうに森のホールがある
  • 写真森のホール1階にある「香りの資料館」では、美しい香水びんやハーブオイルの抽出器など珍しい展示品を集め、ハーブと香りの歴史を分かりやすく体験できる
  • 写真グリーンショップのハーブの鉢植え
  • 写真

    山頂広場から南の斜面に広がる「香りの庭園」ヘ

    写真レストハウス一階のグリーンショップには、ハーブの香りを小さなビンにとじこめていつまでも楽しむ"ポプリ"など、ハーブを使ったオリジナルグッズが豊富にそろっている
  • 写真森のホール1階にある「香りの資料館」では、美しい香水びんやハーブオイルの抽出器など珍しい展示品を集め、ハーブと香りの歴史を分かりやすく体験できる

個性的なハーブたち

 ハーブのイメージは「かわいくて香りがよい植物」「料理、薬用などに利用できる」など。"自然"や"手づくり"が見直されるにつれ、自然からの授かりものの個性的なハーブに、関心が高まっている。(ハーブの写真提供/市立森林植物園)

●ラベンダー(シソ科)
 2O種以上の変種があるが、青紫色の花はもちろん茎・葉の全草がすがすがしい芳香に富む。ロンドンでは"ラべンダー通り""ラベンダー小路"の名が今も残っており、古くから人々に親しまれていたことを示している。ラベンダーの香りには気分をリラックスさせ、疲れをいやす効果があるといわれ、夜の入浴にラベンダーのオイルを浴槽に入れたり、紅茶とブレンドして寝る前に飲んだりする。また、化粧料としても広く知られている。

●ローズマリー(シソ科)
 ラベンダーと並んでヨーロッパでは古くから薬、香水に使われ、数え切れないほどの伝説や逸話がある。香りが強く、いつまでも残るところから結婚式で花嫁が身につけたり、また故人をいつまでもしのび続ける意味をこめて弔いにも用いられた。クリスマスの飾りとして月桂樹とともに教会や家々の戸口にとりつけられることも多い。ローズマリー・ティーは頭痛、風邪を治し、神経症に良いといわれている。化粧水、リンスなどにも利用される。

●チャイブス(ユリ科)
 白く小さな球根で増え、株が群生する性質があるためチャイブスと複数形で呼ばれる。初夏に球状の赤紫色の花をつける。装飾的に美しいのでドライフラワーによく使われる。アサツキに似たエメラルドグリーンの葉は、ネギよりも上品でマイルドな香り。摘んだ葉はグリーンサラダなどにちらして味を引き立てるほか、オムレツなどの玉子料理やマッシュポテトにもその風味がよく合う。また、エッセンシャル・オイルに含まれる硫黄は腎臓の強壮、血圧を下げる効果があるといわれている。

  • 写真ラベンダー
  • 写真ローズマリー
  • 写真チャイブス
写真
布引ハーブ園周辺のハイキングコース
 新神戸駅から布引の雌滝、雄滝などを見て展望公園へ、ゆっくり歩いて約20分。この公園からすぐ北側の車道へ出、北へ約20分歩くと、新神戸ロープウェー「風の丘」駅が見える。
 駅から布引ハーブ園の南ゲートまで2、3分。ゲート前から北へ新しく整備されたハイキングコースがあり(道標あり)、これをたどると約15分でハーブ園の「森のホール」。さらに約10分で市ヶ原から摩耶山へ至る天狗道に出る。
  • 写真約70種のハーブを植栽している見本園。べンチのある中央部の休憩所ではロ−ズマリーの香りが漂う
  • 写真

    個性的なハーブたち
    ●カモマイル(キク科)

     古くから薬草として知られている。リンゴに似た甘い香りをもち、古代ギリシャ人は「大地のリンゴ」(カマイメロン)と名付けた。カモマイルの名前はこれに由来している。カモマイル・ティーは花頭だけを利用するが、リラックス効果を含む鎮静作用、消化促進作用があり、フランスでは油っこい食事の後は消化を助けるため、このお茶が広く飲まれている。また、花を熱湯に浸した液体は冷まして美容にも利用される。
  • 写真

    個性的なハーブたち
    ●セージ(シソ科)

     細かいしわのある銀緑色の葉に樟脳に似たすっきりとした芳香と苦みがあり、肉料理に使うと生臭さや脂っぽさが消える。薬草としても古くから用いられ、中でもセージティーは健康飲料として、17世紀に紅茶が伝わる以前からイギリスはじめヨーロッパ各国で広く飲まれていた。強壮、消化促進、解熱、浄血作用があるといわれている。6〜7月にかけて紫色の花が咲<が、花をつける直前の葉に最も多くエッセンシャル・オイル(精油)が含まれている。
  • 写真「滝のレスト」前の花壇
  • 写真

    個性的なハーブたち
    ●ヤロー(キク科)

     イギリスをはじめヨーロッパ各地で空き地、道端などに自生しているのが見かけられる。白、薄ピンク、または黄色の小さな花が夏中咲き続ける。この草は「兵士の傷薬」という古い呼び名があるように、殺菌力があり、傷を治す薬効が昔から有名。葉をそのまま傷口にあてがったり、粉末にして軟こうにしたものを用いる。葉と花で作るハーブティーも強壮、食欲増進、風邪を引いたときの発汗作用があるといわれている。
  • 写真香りの庭園にある『滝のレスト』
  • 写真ペニーロイヤルを敷きつめた庭。踏みしめるとほのかにハーブの香りが漂う
  • 写真見本園はハーブの利用法が一目で分かるように工夫されている
  • 写真ロープウェーのゴンドラから「香りの庭園」を望む 写真手前から北へ、滝のレスト、香りの芝生、ブルーガーデン
  • 写真四季それぞれに咲くブルーの花を集めた「ブルーガーデン」
  • 写真りんごの香りのする「香りの芝生」
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    個性的なハーブたち
    ●タイム(シソ科)

     ピリッとした刺激のある強い風味は、料理に奥行きのある味を与え、ヨーロッパの料理にはなくてはならない代表的ハーブ。野菜から肉・魚・玉子まであらゆる材料と相性が良いので使い方はさまざま。長時間熱を加えても香りを保つので、ビーフシチューなどの煮込み料理やスープにもよく使われる。
     また、防腐効果や殺菌作用が強く、茶は口臭を防ぎ、ノドの痛みやセキ止めに利用される。
  • 写真

    グラスハウスの北入り口。明るい休憩コーナーといった所で「英国のガーデン」の写真展示なとか行われている

    写真グラスハウスの"香りの温室"。小川が流れ、スパイスの木や草、ハーブなどをテーマことに紹介している
  • 写真"香りの温室"の南入り口付近には、カランコエの花でつくられたアーチがある。その下を小川のせせらぎがサンゴを敷きつめた人工のなぎさに流れ込んでいる
  • 写真グラスハウスの北側から見た外観。入口を入るとガラス張りのドームが4つ連なっている
  • 写真ダイニングルーム
  • 写真リビングルーム
  • 写真スパイスの利用法や魅力を紹介した"スパイスエ房"
  • 写真ヨーロッパの家庭のリビングなどを通してハーブのある生活を紹介しているグラスハウス内の"ハーブの家"
  • 写真「グラスハウス」近くの"出合いの庭"にある彫刻「出合いの門」(速水史朗作)。人と人、人と公園、人と彫刻、あるいは自然と人工の出合い。さらにそこに存在する信頼感を2体の黒御影石で表現
  • 写真スパイスを調合してカレーづくりに挑戦(スパイスエ房)

スパイスあれこれ

 私たちの食卓に欠かせないスパイス。私たちはスパイスといつ出会ったのだろう。また、どんな種類や利用法があるのだろう―。

原始人とスパイス
 約5万年前、人間が狩猟生活をしていたころには、冷蔵庫や防腐剤はもちろん無い。捕えた獣の肉は2〜3日もすると腐って臭気を放ちはじめる。たまたま、泥やほこりを避けるため、近くに生えていた草の葉に肉を包んでおいたところ、肉においしそうな香りがつき、臭いが気にならずに食べられることが分かった。
 この香りのある草が、現在ハープやスパイスと呼ばれるもので、スパイスと人間の最初の出会いはこのようなものであったと考えられている。
 旧約聖書には、シバの女王がソロモン王に金とラクダとスパイスを捧げたこと、モーゼが神より十戒を授かった時、儀式に用いられた香油の中にスパイスが含まれていたことが記されている。また、新約聖書でもキリストの言葉から、当時、スパイスは税金の代わりや供え物として用いられ、それがクミン、ハッカ、アニスであったことが分かっている。
 スパイスはこれほど遣い昔から人間とかかわりをもち、そして時代を経て、今なお世界中で使われ人々を魅了し続けている。

スパイスのはたらき
 スパイスは舌(味覚)、鼻(きゅう覚)目(視覚)に楽しさを与えてくれる。そのはたらきは@くさみを消す、A香りをつける、B辛味をつける、C色をつける―の4つに分けることができる。
 ●くさみを消す スパイスは効果的に使うことにより、くさみを消すだけでなく料理に旨味(うまみ)とコクを与えてくれる。オニオン、ガーリック、ジンジャーなどは肉料理に欠かせないスパイスだが、さらにナツメグやクローブ、セージ、ローズマリーなどもくさみを消すとともに、独特の香りで食欲を促してくれる。
 ●香りをつける バニラ、アニスは洋菓子づくりに欠かせないスパイス。ソーセージの風味づけに活躍するマージョラム、ピクルス(洋風漬物)の風味をつけるディル、ドレッシングに使われるタラゴンなど、すきっとした香りを持ち食欲をそそるスパイスは数多くある。ティータイムにはレモンバームやラベンダー、ミント、カモミール、レモングラスなど。
 ●辛味をつける 香辛料と呼ばれるスパイスは、文字どおり香りと辛みの材料。コショウ(ペパー)はその代表格で、世界中で最も親しまれているスパイスである。カレーの辛味である唐辛子や、サンドイッチに使われるマスタード、刺身にワサビ、鰻(うなぎ)にサンショなど、料理のアクセントとしてなくてはならないものもある。
 ●色をつける 香りや味だけでなく、スパイスは色でも食欲を促してくれる。カレーの黄色のもとになるターメリックの色素は料理だけでなく、染料としても使われる。同じ黄色でもパエリアやブイヤベースにはサフランが用いられる。また、鮮やかな赤色のパプリカは、唐辛子の仲間だが辛味はない。煮込み料理や調味料の色づけに使われたり、そのままふりかけて彩りを楽しんだりする。

写真
布引ハーブ園の山頂広場から南の市街地を望む。写真左側、夜空に輝く4つのガラス張りドームはハーブ園の「グラスハウス」。その先、ポートアイランド、大阪湾を隔てて、対岸の町々の灯が細く横に連なって見える。
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