224号表紙

No.224(平成3年6月)

特集:

神戸の庭園

神戸の庭園

(左)
石峯寺の参道にある竹林寺。門の奥に古庭園の一部が見える。近年、市の文化財整備事業のー環として庭の整備を完了した

石室寺塔頭 竹林寺の庭

北区淡河町神影
枯山水庭園(非公開)
江戸時代後間

 真言宗高野派の名刹・石峯寺の仁王門から直線にのびる参道の正面に石峯寺本堂が建ち、参道に塔頭三力院が点在する。その一院が竹林寺である。
 庭門に入ると、禅寺風の枯山水庭園が開ける。西部の隅に、枯滝(かれたき)を中心とした豪華な中心的石組を組み、北部・東部に向かってゆるやかな石組構成となる。力強さに加えて優美さが目を引く枯山水の名庭である。日本の庭は、自然と人工の境界、無技巧の技巧の世界である。この石庭をみているとそのことがよくわかる。
メモ 神姫バス野瀬 北西1.5km、歩約20分

  • 写真守護石を中心に、枯滝(かれたき)を構成した竹林寺の庭の石組。守護石は、その家のあるじを守護するという意味の中心石で、庭の正面奥に立てることが多い。枯滝は、最初から水を落さず、石組だけで滝を表現したもの。枯山水庭園だけでなく、池泉庭園に組まれる例もかなりある
  • 写真石峯寺三重塔(重要文化財)。室町時代中期の三重塔として、わが国きっての名建築といわれている。高さ24.4m
写真
竹林寺の庭。西側(右)を庭園構成の中心とし、東側へゆるやかな石組を施している。岩と砂とが織り成す静寂の世界である

石峯寺十輪院の庭

北区淡河町神影
池泉庭園(非公開)
江戸時代前期

 石峯寺は、盛時には70有余の僧坊・末寺があったが、大半は秀吉の三木城攻めなど戦乱による焼失で姿を消していった。十輪院はその中にあって、下屋敷的な存在として、領主の休憩所や宿泊地としても使われたようである。
 庭内は南部に枯滝を組み、中央に富士石という巨石を置き中島に亀島を配した蓬莱式の庭である。人間がこの世に生きるかぎり、長寿延年の希望は永遠の理想であった。
メモ 神姫バス野瀬北西1.5km、歩約20分

  • 写真石峯寺十輪院の庭の枯滝付近の石組。奥行があり、力強く見ごたえがある
  • 写真庫裏書院の前にある舟形のちょうず鉢
  • 写真庭の中央築山の"富士石"。神秘的で美しい富士山に似ており、高さ2m余、最大幅4m
  • 写真太山寺成就院の庭。庭のシンボルは、樹齢数百年のヤマモモの巨木に寄り添うように配した枯滝の石組。滝の手前の池には亀島を組んでいる。亀島は、長寿延年を願う神仙思想に基づいて庭園に作られる島のーつで、亀の形をした島。亀頭石、亀尾石を配して亀を表している
  • 写真石峯寺十輪院の庭。枯滝を中心にして細長い池を掘り、亀島を配している。築山には富士石と呼ばれる巨石を据えた堂々とした構成である。庭を囲む土塀を低くして(85cm高)、背後の西岡山を借景にとり入れている

太山寺成就院の庭(県指定文化財名勝)

西区伊川谷町前開
枯山水庭園(非公開) 
江戸時代後期

 原生林を背景にして開ける天台宗の巨刹・太山寺は、盛時は41の坊舎を数えたというが、現在は4坊を残すだけ。仁王門から本堂への石畳の参道の途中右手に、成就院と安養院が並んでいる。
 庭門に入ると、飛石を中心とした露地風の枯山水庭園が開ける。正面に蓬莱山を築き、一方からは枯滝をも兼ねる三尊石組とした構せ日本庭園ならではの技巧で、作者は大蔵谷(明石)に住む庭師・天一(てんいち)の作庭と伝えている。
メモ 地下鉄伊川谷駅下車、市バス・神姫バス太山寺東100m

  • 写真蓬莱(ほうらい)山をかたどった太山寺成就院の庭の築山。蓬莱山は中国の伝説で東方の海中にあって仙人が住むという霊山
  • 写真太山寺安養院の書院前にある仏手石型ちょうず鉢。人差し指と中指の間から水が流れ出るょうになっている
  • 写真本堂から見た太山寺三重塔。原生林に囲まれた落ち着いた雰囲気の寺で、建築・絵画・彫刻など重要文化財の多いことは県下第一
  • 写真庭へのアプローチとなっている成就院の前庭

太山寺安養院の庭(国指定文化財名勝)

西区伊川谷町前
開貼山水庭園(非公開)
桃山時代

 安養院は現在無住状態で、庭の維持管理が極めて困難をきたし随分荒れているが、県下カ古にして最高の庭と評価されている。卓起した石組の技法、北宗山水画的な立面構成は、四周、美しい自然林の中にあって、自然では造ることのできない神仙の世界を創造し、その風格を今日に伝えている。
メモ 地下鉄伊川谷駅下車、市バス・神姫バス太山寺東120m

  • 写真内面的で玄人好みのする安養院の庭全景。太山寺の阿弥陀堂と原生林を借景にして、この庭は構成されている。左に蓬莱山と亀石組を配し、右に鶴石組を配した典型的な蓬莱式の庭園である(写真は昭和63年撮影)
  • 写真
    安養院の庭にある石橋。洞くつ石組の上に石橋を架けた手法は、立体感を強めて神秘的である

白鶴美術館の庭

東灘区住吉山手6
池泉庭園
現代

 中国古美術で有名なこの美術館は、白鶴酒造の第7代嘉納治兵衛(鶴翁)が昭和6年、古稀の記念に美術館建設を決め、3年の月日をついやして完成。日本庭園もこの時に作庭した。茶人でもあった鶴翁は、地元の植木屋・植福を指揮して施工したという。
前庭、主庭、奥庭とあって、本場御影石(花崗岩)の良材をふんだんに使っている。
メモ 阪急御影駅下車北東1km、歩約15分。JR住吉・阪神御影駅から市バス38系統で白鶴美術館前。9月8日からの秋季展まで閉館中

  • 写真本館の裹にある奥庭の散策路。昼でも薄暗く、深山の趣がある
  • 写真奥庭の築山から流れ落ちる滝。水は住吉川の支流から引いており、せせらぎとなって中庭の池に注ぐ
  • 写真白鶴美術館の中庭。目を引く中央の大灯ろうは奈良・東大寺にある国宝の等寸大の写し。つつじの咲くころはひときわ美しい
  • 写真中庭の東寄りにある池。中央に亀島を浮かべ、周囲の石組は本場の御影石。「本御影」と呼ばれる淡紅色の最良の大石である。池の上にカエデが大きく枝を延ばしている

相楽園

中央区中山手通5 
池泉回遊式庭園
明治・大正時代

 総ケヤキ造りの壮大な表門を入ると、ソデツ園、クスノキの大木など雄大な景観を見せる中、広い池を中心に回遊式庭園が開ける。神戸市の都市公園の一つであるが、もとは小寺氏の邸であった。
 昭和16年に神戸市が譲り受け、修理・塗替えをして、園名を『易経』より採って"相楽園"と命名、戦後も整備し手を入れて今日に至っている。
 四季を色どる緑と石組、築山、滝、小川などが回遊路を進むにつれ変化していく、豪状で貴電な庭である。
メモ 地下鉄山手(県庁前)駅下車、北へ歩約5分。1月4日から12月28日まで9時〜17時開園(毎週木曜休)。入園料150円。電話351-5155

  • 写真相楽園の池のほとりに浮かぶ船屋形(ふなやかた)。重要文化財。この船屋形は江戸時代、姫路藩主が河川での遊覧用に使っていた川御座船(ござぶね)の屋形部分。現存する川御座船としてはこれが唯一のもので、非常に華麗で繊細な造りとなっている
  • 写真船屋形の2階から見た庭園風景
  • 写真池のほとりに組まれた滝石組
  • 写真船屋形の2階。殿様の御座になる「上段の間」と「床几(しょうぎ)の間」「次の間」の3室から成っている
  • 写真旧小寺家厩舎(きゅうしや)。重要文化財。円型の塔屋、急傾斜の屋根や屋根窓、豊富な切妻飾りなど、馬屋とは思えないほど変化に富んだ意匠で飾られている
  • 写真庭園内にある旧ハッサム住宅(重要文化財)。英人貿易商ハッサム氏が明治35年(1902)ごろに建てた住宅。かつては北野町にあったが、昭和36年に市が寄贈を受け、同38年ここに移築保存した
  • 写真総ケヤキ造りの相楽園の大門

萌黄の館の庭

中央区北野町3
和洋折火式庭園
現代

 神戸開港とともに居留地には洋風建築が建てられるが、神戸の山手、北野町・山本通りに残る洋館は明治20年以降大正初期に建てられたものが多い。
 萌黄の館は、旧シャープ邸で、明治36年の建築である。現在は神戸市の手によって保存・管理され、昭和55年国の重要文化財に指定された。庭は、清楚(そ)な館にふさわしい和洋折衷式となっている。
メモ 市バス中山手1 北600m。都心の観光地をめぐるループバス(シティー・ループ)北野異人館 北100m。開館10時〜17時(冬場は16時。毎週水曜休)。無料

  • 写真清楚(せいそ)な館にふさわしい萌黄の館の庭

祥福寺の庭

兵庫区五宮町
枯山水庭園(非公開)
現代

 山号を天門山と称する祥福寺は、盤珪禅師を開山とする古刹で、妙心寺派屈指の道場。
 寺域は景勝地を占め、禅寺らしい雰囲気をいたるところに釀し出している。ここの枯山水庭園は、礎石を座禅石風に配石して景の中心とした石庭である。
 人びとが石を使い始めたのは古いが、日本の庭は、その石の文化の結晶ともいえよう。
メモ 市バス五宮町北100m

  • 写真礎石を座禅石風に配して景の中心とした祥福寺の庭。座禅石は上座石ともいい、禅僧が座禅したという伝承からこの名がある
  • 写真
    祥福寺本堂。玄関左の塀の向こうに庭がある

大倉山公園・ふるさとの森

中央区田町3
都市公園
現代

 昭和47年に、和歌山県人会が"和歌山県の森"を作ったのがきっかけで、数年の間に35の県人会が、それぞれの県の森を大含山公園に開設した。桜島溶岩とソテツで構成された"鹿児島県の森"、ミニ男体山とトチノキで構成されだ栃木県の森。等々。ふるさとをテーマにした庭のオンパレードである。
メモ 市バス大倉山、地下鉄大倉山駅から北すぐ

  • 写真大倉山公園の"ふるさとの森"。市内にある県人会がそれぞれのふるさとをテーマにした庭を構成しており格好の散策路となっている
  • 写真

ホテルオークラ神戸の庭園

中央区波止場町
池泉庭園
現代

 メリケンパークにあるホテルオークラ神戸の主庭は、15トン以上もある大石を含む約500トンもの吉野石で作られており、落差4m、幅3mの滝を中心に、芝生の広場とゆったりとした池で構成されている。池の一部は渡り廊下をくぐり、離れの和食堂の間に入り込み、離れをせせらぎの中にある建物のように見せている。自然美が落ち着いた雰囲気を釀し出す日本庭園である。
メモ JR・阪神元町駅から南へ歩約10分

  • 写真木と水と石が落ち着いた雰囲気を醸し出すホテルオークラ神戸の主庭
  • 写真
    ホテルオークラ神戸の庭越しに、庭とは対象的な、白い船の帆の形をしたモダンな神戸海洋博物館の大屋根が見える

須磨離宮公園

須磨区東須磨
洋式庭園
現代

 もと武庫離宮跡に、皇太子(現天皇)ご成婚を機に着工、10年にわたる記念事業が昭和42年に完成した。背に山を、前方に須磨の海を望む絶景の地に"ヨーロッパ風整形式庭園"として、イタリアテラス式とフランス平面幾何学式を併設した様式となった。
 カスケード(段々滝)、カナール(運河)、噴水、緑の芝生などがみごとに調和して景観を高めている。平成元年、「日本の都市公園100選」に選定された。
メモ 市バス須磨離宮公園前すぐ、山陽月見山・須磨寺駅から歩約15分。駐車場300台収容。入園9時〜15時、7月20日から夏季開園21時まで。休園年末年始のみ。入園料300円電話732-6688

  • 写真須磨離宮公園・植物園の温室と梅桃園の前庭。植物園では、早春から初冬まで花々が絶え間なく咲き誇っている
  • 写真華やかな須磨離宮公園の中で、落ち着いた安らぎの空間となっている和庭園。静かなたたずまいを見せる園内の和室は、句会や茶会などが催される
  • 写真水をモチーフにした須磨離宮公園・本園の噴水広場。前に海、後ろに山の借景が庭園のスケールを一段と大きく感じさせる
  • 写真バラの花が咲き乱れる須磨離宮公園の美しい欧風庭園。写真中央右のレストハウスからわき出た水はメインフォール(瀑水)となってカスケード(段々滝)を下り、小さな噴水の並ぶ水路を流れ、最後はダイナミックな大噴水となる
  • 写真今年は梅雨入りと同時に満開となった花しょうぶ園。清そでかれんな花は、晴れた日も雨の日もそれぞれ趣があってたくさんの人が訪れた

六甲高山植物園

六甲山
ロックガーデン風
現代

 標高865メートル、ロックガーデン風の趣を持つ園内(約5万平方メートル)に、寒地性植物4百種をはじめ1千5百種を集めている。国内はもちろん、ヨーロッパアルプス、ヒマラヤなどの高山植物も多い。高山植物の最盛期は6〜8月で、名花エーデルワイスなど珍しい花々が咲き乱れる。
メモ 六甲ケーブル山上駅から山上バス(回る十国展望台行)10分、高山植物園前下車。開園9時30分〜17時、木曜休(11月下旬〜3月下旬休園)。入園料500円。電話891-0366
  • 写真六甲高山植物園の園内。池とあずまや
  • 写真ミニ・ロックガーデン
  • 写真ムードのある湿地帯の踏み板

瑞宝寺公園・日暮らしの庭

北区有馬町
都市公園
現代

 明治6年廃寺の有馬瑞宝寺境内は、いまは公園となり、寺時代から伝わる、公園一面の紅葉の美しさには定評がある。終日見ていて飽きないところから、"日暮らしの庭"の異名がある。
 紅葉が見ごろの11月2日、3日には、有馬にゆかりの太閤秀吉をしのんで、有馬大茶会がこの庭で行われる。
メモ 神鉄有馬温泉駅下車南東1km、歩約20分

  • 写真瑞宝寺公園の園内老松や力エデが多く、秋の紅葉は素晴らしい
  • 写真
    瑞宝寺公園の入り口。この門は伏見城の遺構を移したものといわれている

舞子ビラの庭

垂水区東舞子町
和洋折中式庭園
現代

 前方に明石海峡をへだてて淡路島を望み、背後に歌敷山を背負った舞子公園は、万葉、古今の昔から白砂青松の地として名高い。
 舞子ビラは、明治から大正6年までは皇室の行在(あんざい)所、以後終戦までは住友家の迎賓館。米軍の接収後、民間のホテル、さらに神戸市が買い取り現在のビラとなった。
 洋風建物の南面に芝庭が開け、老松、磯馴松(いそなれまつ)が編笠状に枝を下げて散在する。朝霧に浮かぶ淡路島、夕日にきらめく明石海峡と、借景効果も高い。
メモ JR舞子、山陽舞子公園駅から東へ歩10分。電話706-3711

  • 写真芝生の上にさまざまな形をした磯馴松が並ぶ舞子ビラの庭。小松ばかりを植えたのは、バックの海の景色を生かすための配慮で、日本三景の一つ・松島を摸して造られた
  • 写真
    舞子ビラの庭で結婚式の記念写真を撮る人たち

しあわせの村・日本庭園

北区山田町
池泉回遊式庭園
現代

 神戸市が市制100周年記念事業として建設を進めてきた総合福祉ゾーン「しあわせの村」が平成元年4月にオープンした。
 広大なエリアの中に宿泊館、福祉施設、テニスコートなどが点在するが、その中心広場に接した一角が日本庭園である。
 この村を訪れた人たちが、ゆっくり散策したり、国際的なイベントを開催したおりに日本文化を紹介する場として、格好の場となるとともに、くつろぎの場としてその価値はますます高まっていくだろう。
メモ 三宮から市バス(しあわせの村行)で35分。地下鉄湊川公園・名谷駅などからも市バスが出ている。電話743-8181

写真
しあわせの村・日本庭園 桂離宮をモチーフにした池泉回遊式庭園で、四季折々の風情が楽しめる・回遊路は車イスでも楽に通れる。園内には茶室や野だて、園遊会などができる芝生地もあり、たくさんのコイが泳ぐ大池の周囲は、カシ、ケヤキ、ツツジなど50種、約4,000本の樹木が植えられている。
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