192号表紙

No.192(昭和63年10月)

特集:

白鶴美術館・香雪美術館

白鶴美術館・香雪美術館

香雪から白鶴への道
緑・石・水そして美術

(左上)大慧宗杲墨蹟(だいえそうこうぼくせき)

 書翰 重要文化財 紙本墨書 南宋時代 37.6×51.7cm 香雪美術館蔵
 大慧宗杲が才長老に宛てた手紙である。恐らく急いで書いたものとみられているが、その文章や筆触に少しも屈託がなく、天真爛漫な枯淡の味がよく表わされている。


(左下)鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗(ときんりゅうちえんおうそうぎょもんぎんせん)(部分)

重要文化財 唐時代 高さ5.2cm 口径14cm 白鶴美術館蔵
 唐時代の中国は、長安の都を中心にシルクロードを通して西方との交流が盛んに行われた。 この銀製の酒杯の意匠(唐草文様)にも、ササン朝ペルシャの意匠の影響がうかがわれる。

香雪(こうせつ)美術館

東灘区御影町郡家字石野二八五 電話(○七八)八四一−○六五二
●阪急御影駅から徒歩約五分・JR住吉駅から徒歩約十分

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香雪美術館入り口

 香雪美術館は、朝日新聞社の創始者である村山龍平(香雪)翁の収集した美術品を一般に公関するため昭和四十八年十一月、翁の四十年祭を機に設立され、館名は香雪の雅号にちなんで名付けられた。鉄筋コンクリート造り二階建て、一部地下一階建てで、閑静な住宅街の中、豊かな自然林の緑に包まれて建っている。
収蔵品は日本美術、東洋美術の各分野にわたっているが、仏教美街と茶道具に有名なものが多い。また、翁が武家の出身ということもあって早くから刀剣や武具の収集が行われ、特に刀剣は正恒・吉家・俊長など国の重要文化財二点、重要美術品四点を含む数多くの名刀を収蔵している。開館は春・秋二回。

秋季展(後期)「館蔵の名刀展」
●期間 10月21日(金)〜12月11日(日)無休
●開始 午前10時〜午後5時(入館は4時30分まで)
●入館料 大人500円、学生300円、小人150円

  • 写真着物姿がよく似合う静かなムードの香雪美術館の庭
  • 写真豊かな緑に包まれた香雪美術館
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レパント合戦図・世界地図屏風(びょうぶ)

一双 重要文化財桃山時代 香雪美術館蔵
世界地図と組み合わせ一双の屏風に仕立てたもので、桃山時代南蛮美術後期の華麗な作風をよく伝えている。レパントの戦いは1571年10月7日、トルコ海軍に対してスペイン・ローマなどの連合艦隊が勝利した合戦で西欧ではよく描かれている。
  • 写真香雪美術館の1階常設展示室
  • 写真二階展示室
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    伊賀耳付花生(いがみみつきはないけ)

     銘 慶雲 江戸時代高さ28.0cm
    胴径16.3cm 香雪美術館蔵
     伊賀では早い時代から雑器が焼かれていたが、戦国時代に茶陶が芽生えた。焦げやビードロを出すために何度も窯に入れて大変な手数と費用を要したといわれている。
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    砧青磁筍花生(きぬたせいじたけのこはないけ)

     南宋時代 高さ27.7cm口径7.8cm 香雪美術館蔵
     砧青磁花生では鳳凰耳と並んで双璧といわれるもので、室町時代前期には筍(竹の子)が最も貴ばれたようである。底裏に「茂」の刻字があるが、遺例では宮殿名などの場合が多い。
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    志野茶碗(しのちゃわん)

     銘 朝日影 桃山時代 高さ8・5cm 口径12・3cm 香雪美術館蔵
     銘 朝日影の志野茶碗は、志野茶碗中五指に入ると評されている名碗。卓抜な描画、理想的な発色がそれを裏付けている。
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    色々縅腹巻(いろいろおどしはらまき)

     重要美術品 室町時代 香雪美術館蔵
    腹巻は本来衣服の下に着込んだので袖をつけず、兜(かぶと)もなく単に胴を守るだけが目的であった。しかし後には兜・袖をつけた胴丸と同じようになった。
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    太刀(たち)

     銘 吉家 重要文化財 平安時代末期 身長69・9cm 香雪美術館蔵
     吉家は京三条に居住していたことから三条吉家と呼ばれている。その作刀は細身で反りの高い優美な太刀姿と、よく鍛えられた精美な地肌に特色がある。
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    稚児大師像(ちごだいしぞう)(部分)

     重要文化財 絹本着色 鎌倉時代 77×39.4cm 香雪美術館蔵
     弘法大師空海の童子時代の像と伝えられている。美しく切りそろえた頭髪の巧妙な筆致、端麗な顔の描写、美しい文様の上衣と袴(はかま)を着け、蓮華座上に端座する姿は崇高で芸術性に満ちている。
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    山水図

     重要文化財 雪舟筆 李そん・朴衡文賛
    紙本墨画 室町時代 88.4×37.1cm 香雪美術館蔵
     中央にそそり立つ山岳を描き、前景に江水に一隻のと山荘に通じる道を表わし、漁夫がー人歩む静寂な山水である。要は濃墨でー気に描き、その間に淡墨を用いて調子を整え、遠近感を出している。
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    石造釈迦三尊像(せきぞうしゃかさんそんぞう)

     重要美術品 北魏時代高さ121cm 幅67・7cm 香雪美術館蔵
    舟形の光背を負って直立する釈迦如来像を大きく浮彫りにし、左右に小さく脇侍像を配した三尊像である。微笑をたたえた顔、左右に張った衣の裾や深い襞(ひだ)の曲線など、北魏様式をよく表わしている。
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    木造勢至菩薩立像(もくぞうせいしぼきりつぞう)

     重要美術品 唐時代 高さ131m 香雪美術館蔵
     桐の一木彫刻。円満な相好、豊満な体躯、要領のよい衣紋の取り扱い方など細部にわたって巧妙で、表面の着色ははげ落ちているが全体として破損も少ない。
  • 写真さわやかな音を立てて住吉山手の住宅街を流れる水路
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    小林墓地の北の入り口にある古い六地蔵。左端の石仏に「文禄三年二月吉日」の銘がある。文禄3年(1594)製とすれば、区内最古の在銘遺品である

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    大きな屋敷塀が続くゆるやかな坂道

    写真山田公園で遊ぶ母子
  • 写真柿の木地蔵。村の安全と、荷車の安全を祈つて村人が有馬道わきに立てたもので、切り出した石や、水車場からの米を積んだ車がここを行き来した当時がしのばれる
  • 写真住吉村を火災から守つてくれると古くから親しまれてきた火伏地蔵。もとは赤塚山中腹にあったが、今は白鶴美術館西隣の徳本寺境内にある。

白鶴(はくつる)美術館

東灘区住吉山手六丁目一番一号 電話(○七八)八五一―六〇〇一
●阪神御影駅、JR住吉駅から市バス渦森台行、白鶴美術鶴前下車・阪急御影駅から北東徒歩約十五分

 白鶴美術館は、白鶴酒造七代目の嘉納治兵衛(鶴翁)が昭和六年設立、同九年五月に完成して開館式を挙げた。住吉川西岸の緑の山を背にして建ち、青銅屋根、和様二階建ての堂々とした建物で、内外装・調度品ともに豪華である。
収蔵品は大部分が中国の古美術品で占められ、ことに殷周時代の青銅器、漢〜清時代の陶磁器、唐時代の銀器・鏡などは世界に誇るコレクションである。また、日本の経巻・漆器などの奈良古物や絵画・刀剣なども含まれている。国宝二件のほか、重要文化財は計二十一件にのぼっている。開館は春・秋の二回。

秋季展「殷周時代の青銅器」
●期間 〜11月30日(水)月曜休館
●開館 午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで)
●入館料 大人600円、大学・高校生400円、中学・小学生200円

  • 写真白鶴美術館入り口。大きな御影石が門の両わきにでんと据えられている
  • 写真住吉川の清流を引いて造られた中庭の池のコイ
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  • 写真中庭中央にある銅の灯ろう。奈良東大寺大仏殿前の天平の灯ろうと同じ形をした模品である
  • 写真裏庭の散策道
  • 写真美術館の中庭と本館。本館2階の回廊からは住吉川を隔てて遠く大阪の方まで望まれる
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    一階陳列室

    写真別館と本館を結ぶ廊下
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    白地黒掻落龍文梅瓶(しろじくろかきおとしりゅうもんめいびん)

     重要文化財 宋時代 高さ40.5cm 白鶴美術館蔵
     口が細く、頸(くび)が短く、肩が広く、下部の方が細くなる器形の瓶を梅瓶と呼ぶ。白の化粧土の上に黒釉(ゆう)をかけ、その黒釉を掻き落として鮮やかな白と黒の対比を見せて龍文を浮きだたせている。掻き落としの技法は宋代に流行した方法である。
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国宝 賢愚経残巻(けんぐきょうざんかん)

 (大聖武) 奈良時代 白鶴美術館蔵
 賢愚経は賢者と愚者の比喩(ひゆ)を論じた経巻。一行11〜13字の大字経で、筆使いは豊艶で雄渾である。料紙は荼毘紙(だびし)といわれ、香木の粉末を漉(す)き入れた紙と思われる。聖武天皇筆とされているが確証はない。
 
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    饕鍵婪龍文方ゆう(とうてつきりゅうもんほうゆう)

     重要文化財 殷時代 高さ39・2cm 口径11・4cm 自鶴美術館蔵
     胴部を方形に造り、頸(くび)のところがくびれ、美しく湾曲した大きな提梁を付けている。ゆうは酒を盛る器として使用された。殷時代の青銅器の祭器として厳格な荘重さをみせている。
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    鳥形ゆう(とりがたゆう)

     西周時代 高さ23.4cm 白鶴美術館蔵
     前に鋭く突き出したくちばし、丸く大きく見開いた目と後ろに垂れた鶏冠(とさか)等をもつ鶏をモチーフにしたゆう(ゆう)。繁雑な文様はなく、鶏の形を簡潔、明快に表現し、彫塑的な造形をみせている。
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    象頭じこう(ぞうとうじこう)

     重要文化財 殷時代 高さ17.2cm 白鶴美街館蔵
     鼻をくるりと上方にまいた象の頭部の形をした蓋(ふた)をもつじこうである。じこうは酒を盛るのに用いられた。小さな器であるが、文様・器形ともに充実しており、力強さをよく表わしている。
  • 写真2階陳列室からの眺望
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    2階陳列室

    写真静かな雰囲気の中で、中国の古美術品に見入る人たち
  • 写真陳列室の天井に施された鶴の意匠
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    唐三彩鳳首瓶(とうさんさいほうしゅへい)

     唐時代 高さ35.6cm 口径8.7×5.8cm 白鶴見術館蔵
     唐時代に白、緑、褐色の三色の釉(ゆう)を用い低火度で焼かれた陶器で、死者の死後の世界を飾る明器(めいき)として用いられた。器形の豊満さや文様や色の華やかさから、奢侈(しゃし)な唐時代の生活がしのばれる。
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    瀟湘八景図画帖(しょうしょうはちけいずがじょう)

     八図一帖(遠浦帰帆) 重要文化財 祥啓筆 室町時代 紙本墨画淡彩35・5cmX23・6cm白鶴美街館蔵
     瀟湘八景を一図ごとに図したもので、遠浦帰帆図には岸辺に立って沖合の帆船を見送る人が描かれている。筆者の祥啓は建長寺の僧であって絵をよくし、鎌倉派画人の一人として、清澄感漂う画風を特色としている。
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    五彩武人図(ごさいぶじんずつぼ)

     壷明時代 高さ38.5cm 口径14. 1cm 白鶴美術館蔵
     髯顔(せんがん)の二人の男が高官の前で拳法をしている様子と、この裏には乗馬をしようとする人物が華やかな五彩でもって絵画的に描かれている。沈香(じんこう)壺ともいわれ、沈香の香木を入れた壺である。
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    銀貼霊獣鏡(ぎんばりれいじゅうきょう)

     隋時代 径21・4cm 白鶴美街館蔵
     鏡の内区には八匹の霊獣、外区には霊獣と霊鳥がみられるほか、内区・外区ともに中国の伝統的な雲気文様や山形文様と西方のパルメット(忍冬唐草)文様がみられる。
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四季花鳥図屏風(部分)

 狩野元信筆 室町時代後期
屏風は金地極彩色で、六曲一双(162.4×360.2cm)のなかに四季の花鳥を描いている。写真の絵は秋景と冬景を描いた左隻(せき)の部分である。和様と唐様を融合させ、種々の花木や草花と鳥で濃密な構成をはかっている。
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