187号表紙

No.187(昭和63年5月)

特集:

続・森林浴ハイキング

続・森林浴ハイキング

続・森林浴ハイキング

歩いて頂いた方

旗振山コース
神戸市民山の会委員 諸岡 博熊氏


丹生山コース
神戸市教育委員会指導主事 白岩 卓巳氏


石楠花山コース
六甲全縦市民の会委員 森本 泰好氏

 

森林浴ハイキング

体調、体力に合わせて計画変更も自在

奥平野浄水場〜平野谷東尾根〜鍋蓋北道〜修法ヶ原〜分水嶺越〜トエンティクロス〜黄蓮谷〜石楠花(しゃくなげ)山〜炭ヶ谷〜谷上駅
(約14km、所要時間6時間)


 楠谷町バス停へ五十メートル。「平野谷東尾根展望歩道」の道標を山側へ折れる。奥平野浄水場の西端をかすめるように、三分ほどで、階段状の山道にとりつく。いきなり登りが続くのでしんどいが、どんどん高度がかせげる。小さなピークを三つばかり越えると、広く開けたゴルフ場のグリーン状の台地に出た。標高一八七・九メートル。眼下にメリケンパークからポートアイランドへ、神戸港の中心部が広がり、天気さえ良ければ淡路島から友ケ島まで、大阪湾が一望に収まる。木のベンチや展望図も整っていて、抜群の"ハ―バー・ビユー"だ。この日は黄砂が流れ込んで遠望がきかず、同行のカメラマンが苦労していた。
 この尾根筋は戦前から防火線と呼ばれて、地元の人に親しまれてきた。一昨年、神戸市が整備し、随分と歩きやすくなった。しかし尾根通しだけにアップ・ダウンの繰り返しが続く。あせらぬこと。樹齢五十〜六十年の山桜が多く、隠れた名所。すでに"若葉寒"(わかばさむ)の季節に入っていたが、あまりの見事さにシャッターを切る。イノシシ、キツネ、野ウサギ、リスの姿を見かけることも。いったん二本松林道へ下り、再び尾根にとりつく。ほどなくササ原の開けた七三峠だ。菊水、鍋蓋、再度、摩耶と六甲全縦の核心部が眼前につらなる。鍋蓋への登りは見た目よりは楽。山頂への東肩で、全縦コースに出会い、鍋蓋北道へ回る。ツツジのピンクが鮮やか。途中から修法ケ原へ出る。二時間半がたっていた。



 外国人墓地の西側を仙人谷ヘ下る。キャンパーに人気のところ。すぐ人工の洞川湖。立派な湖畔回遊路ができ、梅林も造成中。川を渡って東へ。奥再度ドライブウェイを横切る。昔から分水嶺越と呼び慣れている道だ。布引谷と天王谷との流域を分けるのだが、道標は布引林道となっていた。工事用の車が通るので要注意。二十分ほどでトエンティクロスの清流に出会う。
 副堰堤(えんてい)を持った二十渉(にじゅうわたり)堰堤は、石積みの幾何学模様や落下する豊かな水量など、ちょっと見ごたえのある風景だ。飛び石伝いに沢歩きを楽しむ往年の風情は薄れたが、それでもこの川はシーズンに入ると、力二、カエル、カジカ、ホタルが生息していて、子供の川遊びに最適。ウグイスのさえずりを聞きながら森林植物園への分岐路を左に見て、八洲嶺(はっしゅうれい)堰堤を過ぎる。この辺りのたたずまいは、徳川道のハイライト。黄蓮谷は登りの連続だが、大正から昭和にかけて植林した杉やヒノキがよく育って趣がある。
 西六甲ドライブウェイを渡って尾根に出ると、雑木林で明るい。ササの斜面を一気に石楠花山頂へ。立派な展望台がある。西は山の街、鈴蘭台の新しい住宅街と歴史を秘めた丹生・帝釈連峰。遠くは明石海峡。南は六甲全山縦走路が緑のびょうぶをつくる。裏から眺めると印象も新鮮だ。東は六甲の山並み。六甲山牧場のチーズ館が美しい。これだけの眺望に恵まれながら、なぜか訪れる人は少ない。專門家の話では、自生の石楠花が一株だけ見つかっていて、毎年きれいな花を咲かせるそうだ。「字石楠花」という古い地名が残っているから、昔はかなり自生していたのを、採りつくしてしまったのだろう。再生させる手だてはないものか。あちこちに見えるコブシに似た白い花はタムシバ。
 東へ向かう広い道の途中から炭ケ谷に入る。沢に沿って炭を焼いた跡が残っている。杉やヒノキの植林が美しい。六甲山脈の裏側は、生活に密着した里山だったのだ。夏になるとヤマアジサイやウバユリも咲く。有馬街道に出ると、大変な自動車の洪水。十五分ほどで北神急行・神戸電鉄の谷上駅につく。修法ヶ原から三時間半の道程だった。
 全コース、道標・案内板完備。通して歩くと六時間かかるが、体調、体力に合わせて計画変更も自由自在。六甲の表と裏が一度に楽しめる特薦コースだ。
(森本 泰好)


  • 山桜の花びらで白くなった山道。この付近の山桜は4月中旬から20日過ぎにかけてが一番見ごろだ
  • 大きな山桜の下を通って…。白色と淡紅色の花をいっぱいにつけた山中の山桜は実に美しい。平野谷東尾根は隠れた山桜の名所である

    平野谷東尾根の休憩所。ゆっくりとベンチに腰を下ろして市街地を見下ろす気分は最高だ
  • 奥平野浄水場の西側から山道に入ると、いきなり急な階段道となる。展望の良い明るい道だ
  • 二本松林道にあるユニークな道標

  • 楠谷町バス停の50メートルほど西にある
    新しい石の道標
  • 七三峠でくつろぐグループ。
    左手前方の山は鍋蓋山頂上

    ウイークデーでもハイカーでにぎわっている再度公園。高い松林の下にいると自然と気分が開放的になってくる
  • トエンティクロスの二十渉堰堤(にじゅうわたりえんてい)。山の堰堤といえばコンクリートの塊のいかにも殺風景なものが多いが、水が多かったせいか違和感は全然なかった
  • 分水嶺越(林間歩道)の案内板。桜が美しい
  • トエンティクロスの清流。思ったより水量は豊かだった
  • 石楠花山頂上へ

    炭ケ谷の炭焼き窯跡。登山道のそばにこんな窯跡が2、3か所残っていた

    石楠花山頂上から北へ少し下って炭ケ谷へ
  • 自然ガイド板

    炭ケ谷の見事なヒノキ林

    トエンティクロスの自然ガイド板を見て、登山道から右手上方の尾根筋や前方の斜面に生き続けるアカマツを観察。日当たりがよく、やせた土の尾根筋のマツは松枯れにも強い
  • 北神急行と神戸電鉄の谷上駅。北神急行電鉄の開通によって、市北部と都心部を結ぶ足の便は一段とよくなった

    黄蓮谷の登山道

    石楠花山頂上付近から六甲山牧場のチーズ館を望む



森林浴を楽しみながら植物の生態観察

丹生(たんじょう)神社前バス停〜丹生神社〜シビレ山〜こうもり谷〜箱木千年家〜衝原(つくはら)バス停
(約8q、所要時闘約4時間)


 丹生山への登山道はバス停丹生神社前の鳥居をくぐり宝物館の前を通って上っている。
田のあぜにはカキの古木があり、その下に秋から濃い緑を広げていたヒガンバナの葉が枯れてきているのが目に付く。民家近くの竹林にはタケノコが伸びてきていた。
 右側に杉、ヒノキ林を見て登った台地はコナラ・アベマキ、コバノミツバツツジ、コウヤボウキ…が生え、新芽と花がいり混じっている二次林である。
 さらに丹生への道を進む。道には一丁目ごとに丁石が立っている。左下の林はリンボク、ナナメノキ、シロダモ、ヤブニッケイなどが茂っている。橋を渡ると沿道には古株の間に植えられた桜の若木が花を咲かせていた。


 道はやがて尾根道を通る表参道と谷沿いの林道(脇参道)に分かれるが、広い杉林のある林道を選ぶ。ここでは、林の中の植物がお互いに深いかかわりを持って育っている様子を森林浴をしながら観察できる。植林後三十年くらいまでの若い杉林の内部は暗い。広げた葉がいっぱい日光を浴び、林床には光を全く下ろさないからである。
 しかし、五十〜六十年も経過すると、林内は明るくなる。杉の木の上部で茂っている葉と地面とが広く大きな空間をつくるからである。この林内はまさしく大きなドームになり、日光、湿度などの条件が安定している自然のままの温室となっている。したがって、この林内にはこれらの条件でよく育つ植物(特にイノデの仲間を中心とするシダ植物)の宝庫となっている。
 神社を取り囲むように残っている頂上付近の自然林は、モミ、ツガ、ケヤキ、ムクノキなどの大木で構成されている。
 続いて、丹生山を後にシビレ山へのコースをとる。帝釈山への道と分かれると道は急に狭くなるが、アラカシ、アカガシが多い常緑樹のトンネルになる。
 しばらく、シビレ山を目指して下っていると急に視界が開けてくる。振り返ると、さきほど登った丹生山が右後ろに、帝釈山が左にその姿を見せる。右前方には衝原湖の水が光っていた。
 鮮やかな紅紫の花をつけたコバノミツバツツジと針の葉をつけたネズミサシ、銀色の芽をまばゆいばかりに展開しているウラジロノキなどの下には、ウラジロ、コシダが仲良く住み分けて群生している。ところどころに地衣類のハナゴケが生えていた。
 さらに下り、山陽自然歩道と別れ、こうもり谷への道をとる。平たんな道が続く。周りの木々も高く伸びている。いつの間にか小川ができている。この林を歩いていると、水の流れの音、小鳥のさえずりの声しか聞こえない。すべてが自然と同化し、その中に生命の躍動を感じさせる林である。
 しかし、平たんな道は長くは続かない。谷はやがて本格的な渓谷の様相を加え、急傾斜の岩床が目の前に迫ってくる。一歩ずつ安全を確かめながら下りていく。周りの木やロープ(一か所だけ)の助けを借りる。谷は岩壁が両方から迫り、ホソバタブ、ヤブツバキの常緑の林となるにつれて、一段と暗くなっていく。
 下に行くほどホソバタブは本数を増すとともに大きな木になっていく。ホソバタブの純林である。成長の著しく早い木で、岩壁から崩れ落ちた巨大な岩と岩の間にも生えている。
 岩の間をくぐったり、跳び下りたりしながらやっとの思いで谷の出口へたどり着く。眼下に衝原湖に沈んでいく旧村の道や橋が見えていた。なお、神戸電鉄箕谷駅から衝原行き市バスは、日曜日でも一時間におよそ二本ぐらいの割で運行している。
 (白岩 卓巳)


  • 冬枯れの柿の木、ワラ積み、火の見やぐら(左前方)…と山田の里らしい雰囲気を感じさせる丹生山への道
  • 丹生神社前バス停のすぐ横にある丹生神社鳥居。鳥居の前方左手に見える山が丹生山で、神社はその頂上にある
  • 苗代づくりに精を出す農家の人たち
  • 丹生山林道(脇参道)の杉林。植林後五十年以上はたっているとみられ、杉林の下に生えているイノデ(シダの一種)の種類・株数の多さでは、兵庫県下でも有数といわれている
  • 山道に咲くあでやかなコバノミツバツツジ
  • 丹生山ヘゼンマイやワラビ採りにやってきた家族連れ
丹生山の登山道で見かけた野草
  • タチツボスミレ

    シャガの花
  • 頭部が五輪塔の形をした珍しい丹生山の丁石。山の歴史の厚みが感じられる

    ウバユリ(種が散ったあと)

    表参道と林道の分岐点に鎮座している地蔵さん。ここから左に折れると表参道、真っすぐが林道。林道の上から少女たちが手をつないで楽しそうに下りてきた
  • アケビの花(大きのがめばな)

    イノデ(シダの一種)の新芽
  • シビレ山への尾根道から帝釈山を望む。一斉に白い芽を吹いたウラジロの木が美しい

    シビレ山を過ぎ、ここからコース最後のこうもり谷へ入る

    丹生神社境内から山懐に抱かれたのどかな山田の里を望む
  • 明要寺跡から薄暗い谷を少し下った所にあるわき水の貯水所。一般にはほとんど知られていない

    丹生山からシビレ山への道標

    風趣に富んだこうもり谷。上から下りると半時間そこそこの短い谷だが、石は滑りやすく、ハイカーが少ないため全体として踏み跡のはっきりしない所が多いので注意が必要だ
  • 頂上にひっそりと建つ丹生神社の社殿。秀吉の夜襲によって寺は焼かれ、多くの人々が殺傷されたという丹生山哀史がしのばれる

    森林浴そのものの静かなシビレ山への道

    丹生神社の近くに残っている昔の明要寺跡の石垣
  • 鉄拐山から旗振山へ。美しい新緑を満喫しながらの散歩道コースである
  • こうもり谷の入り口から見た衝丿原湖の東端付近。やがてこの一帯も湖水が満ちることだろう

    箱木千年家
  • 丸太橋を慎重に渡ると、こうもり谷から離れ衝原湖沿いの新道に出る

森林浴ハイキング

森林浴、日光浴、そして海水浴もどうぞ

山陽電鉄月見山駅〜栂尾(とがお)山展望台〜おらが山〜鉄拐(てっかい)山〜旗振山〜鉢伏山〜須磨浦公園
(約7km所要時間約3時間)


  • 栂尾山展望台。眼下に高倉台、前方に鉄拐・旗振山の山並みと明石海峡、淡路島が見渡せる

    栂尾山への静かな登山道
  • 山陽電鉄月見山駅

    おらが山から鉄拐山へ。高倉台の造成時に植樹されたおらが山の緑は年を経るごとに濃くなってきた
  • 栂尾山への道標
  • 栂尾山から高倉台ヘー気に下る階段

    新緑のトンネルが続く登山道

    鉢伏山公園で昼食をとる遠足の小学生
  • おらが山(高倉山)展望台

    登山道からそのまま海へ飛び込んでしまいそうな、鉢伏山から須磨浦公園への"逆落し"の道。そう快感が体中に満ちてくる

    鉢伏山のふもとから見た満員の須磨海づり公園
  • 夏でも冷やりとした気分になるウバメガシ林。この木を焼くと最高級の木炭になる

    鉄拐山頂上への階段道

    毎日登山の回数を表示した旗振茶屋の採点表。登山回数の最高は「七三三九」、一日二百五十人ぐらいの人が毎日登山をしているという

    鉢伏山頂上付近から須磨の海づり公園や海岸線を望む。養浜事業で幅の広くなった砂浜が白く光っていた
須磨浦公園から鉢伏山への"逆落とし"の道を元気に登る遠足の小学生。真下に見える青い海を何度も振り返り、かわいい歓声を上げていた。右手前方に、施設の一部が平磯海づり公園や平磯緑地として開放されている垂水下水処理場と、淡路島が見える。
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