185号表紙

No.185(昭和63年3月)

特集:

神戸の塔

神戸の塔

神戸の塔

西区櫨谷町谷口の如意寺三重塔(重要文化財)。一乗寺三重塔(加西市)に次いで県内で2番目に古い塔。色つやの落ちた古色が特に印象的で、歴史の重みをひとしお感じさせてくれる堂々とした三重塔である


表紙写真・北区淡河町神影の石峯寺三重塔(重要文化財)。市内はもちろん県内最大の三重塔で、軒の曲線が美しい。昭和29年に解体修理して朱塗りとしたので、周りの樹木の緑とよく調和している

質・量ともに高い神戸の木造の塔

神戸大学工学部教授 多淵 敏樹
木造の塔とは


如意寺(にょいじ)三重塔(重要文化財)

●西区櫨谷町谷口
●至徳二年(一三八五)建立
●高さ二十一・三メートル
●あし/JR明石駅から市バス谷口下車。徒歩十五分


  • 如意寺仁王門。門の前方に三重塔が見える
  • 非常にすっきりとした初層の隅の組物(くみもの)。柱の上にあって軒を支えている
  • 整然とした構成美を見せる如意寺三重塔の軒下。二重繁垂木(しげたるき)、三手先(みてさき)など、この時代の和様の典型がよく分かる
  • 二重になっている鬼がわら

    如意寺境内の石仏と三重塔
  • 北区山田町中の六条八幡神社三重塔(重要文化財)。三方を境内の老杉に囲まれ、遠くからでは目立ちにくいが、近くで見ると、桧皮(ひわだ)ぶきで反りのある屋根といい、安定感といい、実にすっきりしている
  • 如意寺文殊堂(重要文化財)。室町時代中期の建立とみられ、延暦寺(えんりゃくじ)の文殊楼に似せて建てられている。南面は懸崖(けんがい)造りになっている。入り口は北で内部は東側に仏壇がある

    如意寺阿弥陀堂(重要文化財)。平安時代末期の常行三昧(ざんまい)堂の原形をよく伝えている
六条八幡神社三重塔(ろくじょうはちまんじんじゃ)(重要文化財)

●北区山田町中
●文正元年(一四六六)建立
●高さ十九・一メートル
●あし/神戸電鉄箕谷駅から市バス山田小学校前下車、徒歩十分


  • 長い風雪に耐えてきた三重塔と杉の巨木
  • 南面から見た六条八幡神社。境内の東の端に三重塔が立ち、それから西へ六条稲荷、本殿と続き、西端には神仏習合時代の名残として薬師堂が残っている。境内の後ろに杉、ヒノキなどの巨木がそびえている

    六条八幡神社本殿
  • 三重塔の脇間の連子(れんじ)窓。元は彩色があったようだが、今は素木のままで当初の部材が多く残っている

    三重塔の組物のほとんどは正規の和様であるが、肘木(ひじき)(上からの重みを支える横木)の木口が曲線になっており、この部分だけ禅宗(唐)様である
石峯寺(しゃくぶじ)三重塔(重要文化財)

●北区淡河町神影
●文安1〜応仁年間(一四四四〜六八)建立
●高さ二十四・四メートル
●あし/神戸電鉄道場南口駅から神姫バス野瀬下車、徒歩三十五分


  • 南面の上空から見た石峯寺。中央手前の参道を北へ突き当たり、石段を上って境内に入ると、正面に宝形造りの本堂、右に薬師堂、さらに右上に三重塔が見える。境内は樹木が多く景観美に富んでいる
  • 三重塔の風鐸(ふうたく)。風鐸は塔の装飾の一つで、
    銅または青銅製の鐘に似た鈴

    美しい三重塔の組物。比較的装飾の少ない和様であるが、
    肘木の木口は唐様である
  • 安定感のある石峯寺三重塔(重要文化財)
  • 三重塔
  • 三重塔の組物の一つ、斗(ます)の背がやや低く時代の特徴が出ている

    石峯寺薬師堂(重要文化財)。室町時代後期の建立で、和様と天竺(てんじく)様(大仏様)の折衷様式になっている
徳光院(とっこういん)多宝塔(重要文化財)

●中央区葺合町布引山
●文明五年(一四七三)建立
●高さ八・五メートル
●あし/JR新神戸駅から徒歩十五分


  • 明るい木立の中に立つ徳光院多宝塔(重要文化財)。市内の木造の多宝塔はこの塔だけで、県内でも最古。上層が小さく、均整のとれた美しい姿をしている
  • 多宝塔
  • 徳光院多宝塔の上層。丸い平面で組物は四手先(よてさき)。前へ大きく張り出した軒を支えるために複雑に組まれている

    上層に比べ下層は一手先(ひとてさき)(出組(でぐみ)ともいう)の簡単な組物を用いている。塔は勾欄のない縁の上に立っている
  • 木造増長天立像(ともに県指定重要有形文化財)。像高は持国天七十七センチ、増長天八十四センチ。手法は全く同じでずんぐりした表現であるが、体は引き締まり、量感も豊かである
  • 徳光院多宝塔の中に安置されている
    木造持国天立像
  • クスノキの多い徳光院の境内。木はすべて下枝を切り落としているので明るい
太山寺(たいざんじ)三重塔

●西区伊川谷町前開
●貞享五年(一六八八)建立
●あし/市営地下鉄伊川谷駅から市バス太山寺下車、徒歩五分


  • 太山寺三重塔。各層の逓減率(次第に減る率)が少なく、全体としてずんぐりした感じだが、逆にいえば、重量感があるといえる。背景に寺の原生林があるのもこの塔の強みだ
  • 本堂から見た三重塔
  • 南面から見た太山寺。中央手前の参道を上り境内に入ると、正面左側に阿弥陀堂が立っており、天台様式独特の伽藍配置となっている。本堂は昭和39年春改築された
  • この塔も下から見上げると美しい。江戸時代の塔の代表作の一つである
  • 縁の腰組の木鼻。中の渦が少しくずれている
    張り出した軒を支えている尾垂木の上の邪鬼がユーモラスである
  • 太山寺三重塔の相輪
  • 相輪
  • 江戸時代の特徴がよく表れた初層の組物。中央の間斗束(けんとづか)の下がばち形に広がっている。斗の繰り形が直線に近いし、肘木の形も弱々しい

    太山寺本堂
祥福寺(しょうふくじ)二重塔

●兵庫区五宮町
●明治二十一年(一八八八)建立
●高さ七・三メートル
●あし/市バス五宮町北百メートル


  • 祥福寺二重塔。全国的にも珍しい二重塔で
    初層は納骨堂になっている
  • すっきりとした軒下
  • 山際に広がる祥福寺。
    二重塔が緑の山腹に景観美を添えている
鏑射寺(かぶらいじ)三重塔

●北区道場町生野
●昭和四十七年(一九七二)建立
●高さ二十三メートル
●あし/JR道場駅から徒歩二十分


  • 鏑射寺三重塔。戦後に木造で建築された最初の三重塔。様式的には伝統に忠実に従っている
  • 各層にかわいい姿を見せている風鐸
  • 鏑射寺。本堂の後ろの森の中に三重塔が見える
福祥寺(ふくしょうじ)(須磨寺)三重塔

●須磨区須磨寺町
●昭和五十九年(一九八四)建立
●高さ二十五メートル
●あし/山陽電鉄須磨寺駅から徒歩十分


  • 福祥寺三重塔。各層の背が高くスマートである。
    現代建築のせいだろうか
  • 三重塔に安置されている大日如来像にお参りする人たち
  • 福祥寺本堂内の宮殿及び仏壇(重要文化財)。南北朝時代の和様と唐様の折衷形式をとっており、この種のものの最も古い例である
  • 静な山の中にある如意寺(西区櫨谷町谷口)。くぼんだ四角い平地を囲むように、東に三重塔、南に文殊堂、西に銅板ぶきの阿弥陀堂が並んでいる。北側の広い空き地は本堂跡。この寺の堂塔の配置は、本堂の前面に三重塔と阿弥陀堂が左右に並んでおり、天台様式の伽藍配置の一典型として貴重な遺例とされている。戦後、本堂は失われたが、阿弥陀堂、文殊堂、三重塔が保存され、昭和27年7月、ともに重要文化財に指定された。写真左側の家は庫裏。
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