177号表紙

No.177(昭和62年7月)

特集:

須磨海浜水族園

須磨海浜水族園

須磨海浜水族園(7月16日)オープン
ラッコ館、波の大水槽…など楽しい話題がいっぱい

 楽しい話題がいっぱいの須磨海浜水族園が神戸開港百二十年を記念して誕生、七月十六日午後一時にオープンします。
 その特色は、魚の種類を見せる水族館から、魚の生きる姿「生きざま」を見せる水族園になったこと。単なる魚の館(やかた)でなく、緑を豊富に取り入れ、人と水族の出会いを大切にした"公園"として生まれ変わったことです。
 次はラッコ。岩組みを背景に、愛きょうあるしぐさを水中・水面の両方で見ることができます。好物の貝を食べる時は胸の上で貝と貝をたたきつけて割り、身を取り出して食べます。
 外洋性サメなど約四十種、一万尾の魚を泳がせた波の大水槽も壮観そのものです。照明、音響を施したエントランスホール。世界で初めて横から見せる人工波。水槽ガラス面の清掃に活躍する、これも世界で初めての"水中ロボッ卜"。また、魚ライブ劇場のピラニアの通り抜け水槽、えさやり実演水槽も人気を集めそうです。
 このほか、映像・音響などを駆使した各種の展示解説、世界最大級のチタン葺きの大屋根をもつ本館、さらに屋外には、大阪湾・淡路島が一望できるお弁当広場や多目的広場も整備されています。新しい水族園は、建物延べ面積約一万一千六百平方メートル。これまでの水族館に比べると、広さは二・八倍、水量は五・三倍、飼育水族は約五百種、二万点になり、質・量ともに世界の卜ップクラスになりました。
 引き続き第二期計画としてイルカ海獣館や遊園地の建設を進め、昭和六十四年度に完成します。

(左)
本館1階の波の大水槽で悠然と泳ぐサメ。波の大水槽では、外洋性サメやエイ、サバ、シマアジなど約40種、1万尾の魚が泳いでいる

波の大水槽(本館一階)
 須磨海浜水族園の入り口を入ると、天井の高い広々としたエントランスホールの奥に、わが国最大の屋内大水槽「波の大水槽」が見えます。ホールを進むにつれ、波の音にシンセサイザーの音がオーバーラップし、音像移動の効果によって波が打ち寄せるかのように感じられます。大水槽の前では、"ボディソニック"により迫力ある波の音が魚の観覧をさらに臨場感のあるものにします。
 間口二十五メートル、奥行き十五メートル、水深四メートル、水量一千二百トンの波の大水槽には、外洋性サメのほか、エイの仲間やアジ、サバ、イワシ、シマアジの大群などが泳いでいます。造波機がつくる波は波高〇・五メートルで、右から左へ押し寄せています。この波に対して魚がどんな動きをするかも見て下さい。水中にはホンダワラやアラメなどの海藻(人工)が水に揺れています。
 大水槽のガラスを清掃する水中ロボットは、水中カメラを内蔵しており、大水槽の中から見た観覧者の映像やエントランスホールの様子を、横のモニターテレビに映し出します。
 二階では、波が岩に当たって砕ける様子を上から見ることができ、大水槽の向こうには瀬戸内海を行き来する船も見えます。

夜と昼の水槽(本館一階)
 魚には瞼(まぶた)がないため、眠らないと思われがちですが、魚も夜には活動をやめ、さまざまな姿で眠ります。一方、夜行性のものは昼間はあまり活動せず、夜間にえさをあさり活発に動き回ります。
 例えば、ベラは、昼間は泳ぎ回っていますが、夜には砂の中に潜ったり水底に横になって寝ます。反対に、マアナゴは、夜になって水槽の中をうろうろと泳ぎ回ります。昼の間は、管の中で、体を寄せ合ってじっとしています。マダイは、昼も夜も活動にあまり大きな違いはありません。
 夜と昼の水槽では、アナゴ、ベラ、マダイの夜と昼の行動が観察できるよう、全く同じ水槽をペアで背中合わせに配置し、夜と昼を対比して見ることができるよう工夫されています。

生きざま水槽(本館一階)
 魚たちの体の形や色、習性は、彼らが生きるために、住み場所の環境に合わせて上手にえさを取ったり、群れをつくったり、素早く逃げたり、隠れたりするのに都合がいいようにでき上がってきたものです。
 このような「生きざま」を、このコーナーではいくつかのテーマに分け、それぞれを代表する魚で展示しています。また、水槽の横にはビデオモニターを設置し、魚だけではなく陸上動物との対比をしながら解説をしています。
 例(1)群れと単独生活―。イワシやサバは、それぞれ同じ方向を向き、同じスピードで大きな群れをつくって移動します。特にイワシは「海の牧草」と呼ばれるほど多くの魚の格好のえさとなっていますが、群れをつくることは、彼らが外敵から身を守る手段なのでしょう。反対に、クエやハタの仲間は群れをつくらず、岸近くの岩場などに身をひそめ、堂々とした風格で単独で暮らしています。
 例(2)相手の目をごまかす、隠れる―。カレイやヒラメ、コチなどは、体の色や模様が周囲の砂とよく似ています。オニオコゼやカサゴは、体の色や形が岩にそっくりです。中には、海藻によく似た突起まで体から生えているものもいます。ゴテンアナゴなどは砂の中にもぐって、頭だけを出しています。
 例(3)海の中での共生―。ホンソメワケベラという魚は、他の魚の体表やエラにつく寄生虫、あるいは古くなった皮膚などを食べるので、「掃除魚」と呼ばれています。掃除される側の魚もホンソメワケベラをよく知っていて、魚食性の大型魚でも、この魚は食べません。むしろ、掃除してもらっている間は、気持ちよさそうに口やひれを広げてじっとしています。

魚以外の水族展示水槽(本館二階)
 動物は、脊椎(せきつい)の有るものと無いものに大きく分けられます。海の中には、背骨がなく変化に富んだ動物がたくさんいます。
 魚類に最も近いホヤの仲間、世界最大のカニといわれるタカアシガニ、砂浜に住むチゴガニ、シオマネキ。マダコ、ミズダコ、イカ、巻貝などの軟体動物。ウニ、ヒトデ、ナマコなどの棘皮動物。そしてサンゴ、クラゲなどの腔腸動物等、約五十種類の無脊椎動物を展示しています。

水族園おもしろ教室(本館三階)
 魚や貝、イソギンチャクなど水生の動物についての生態を電子機器などを使っておもしろく解説しています。
 例(1)魚の目から見た世界―。魚は水中で、いろんな生物や景色をどのように見ているのでしょう。魚眼レンズを通して展示室を眺めることにより、魚の視野を疑似体験してもらいます。
 例(2)おどかしてみよう―。ハリセンボンというフグの仲間は、敵に出会ったりおどかしたりすると体をふくらませ、体の針を立てて身を守るといわれています。大きな声で「ワァー!」とおどかすと、ハリセンボンは、ぷうーっとふくれます。針が千本あるかどうかは本物を見て研究してください。
 例(3)貝の目―。私たちが貝の目と呼んでいるところは、実は、貝がえさや水中の酸素を取り入れたり、排出したりする出水管のことです。人が近づくと、水を吹き出す様子が見られます。

魚ライブ劇場
 生きるために最も重要な「食べる」ということをテッポウウオ、デンキウナギ、ピラニアの三種で見せます。
 ■えさやり実演水槽 直径十八メートルの円形小劇場風な建物。内部は三十七インチの大型モニターテレビを中心に、右側にテッポウウオ水槽二個、左側にデンキウナギ水槽二個が並び、一日数回、コンパニオンの解説でえさを食べる様子を見ることができます。
 テッポウウオは、コンパニオンがボタンを押して、えさをつけた標的板を水面上まで下ろすと、口から水を飛ばしてえさを撃ち落として食べます。また、デンキウナギは、生きたドジョウに触れ、感電させて動けなくなったところを食べます。
 モニターテレビは、このほか陸上動物を含め動物たちのいろいろな捕食行動を放映しています。
 ■ピラニアトンネル 逆L字型の観覧通路の両側約十八メートルの水槽に、ほぼ大きさのそろったピラニア二千尾が群れになって泳いでいます。天井も水槽になっていて、トンネルの中に立つと、まるで南米のアマゾン川に潜ったような気分になります。
 ピラニアは、アマゾン川に住む淡水魚です。川の中を渡る牛などが数万のピラニアの群れに襲われると、数十分で骨だけにされるといわれています。一日に数回、ボタン操作でえさを水槽に入れると、ピラニアの群れが襲いかかって鋭い歯で食べるすさまじい、迫力ある様子を目のあたりにすることができます。

世界の魚館
 これまでも「世界中の魚が見られる水族館」をキャッチフレーズに話題のある世界の魚を集めてきましたが、新しい水族園でも、特に生態的におもしろい世界の淡水魚を選び展示しています。
 例(1)群れで生活する魚―。代表として南米産のネオンテトラ、プリステラ、日本産のメダカの三種を展示。いずれも小型の魚で、群れで泳ぐ姿がかわいい。
 例(2)変わった習性をもつ魚―。腹を上にしてひっくり返って泳ぐサカサナマズ、左右の目がそれぞれ上下二つに仕切られ水中と水上を同時に見られるヨツメウオ、暗い洞穴の中で生き続けてきたため目が退化してしまったメナシウオを展示。
 例(3)中国の淡水魚―。草魚、雷魚を展示。今秋には天津市からケツギョとパイユー(白魚)が贈られることになっており、コイとで中国の三名魚がそろう。
 例(4)コイの池―。ニシキゴイは慣れると体に触られても驚かず、また指を口元に近付けると吸いついたりするので人気があります。コイの池は水族園で唯一の魚に触れる場所です。コイはタニシの殼でもかみ砕いて食べますが、口先には歯がなく咽頭にあるので、コイの口に指を入れてもけがの心配はありません。

森の水槽 北館
 冷水性の水族を集めた北館ではニジマス、アマゴなど日本の淡水魚と、ロシアチョウザメ、シロチョウザメ、ベルーガなど五種のチョウザメを飼育展示しています。水槽の後は大きなバードケージになっており、木立の中を鳥やリスがたわむれています。
 チョウザメのベルーガからとれるキャビアは最高級品で、ソ連政府はべルーガの持ち出しをなかなか認めません。現在、飼育中のベルーガは昭和五十八年にソ連政府から贈られたもので日本では最初で唯一のものです。
 また、特別天然記念物のオオサンショウウオの水槽では、産卵を試みようと岩の後に産卵箱を設けています。

森の水槽 南館
 北館とは反対に熱帯性の淡水魚を飼育展示。
 大型水槽の一つには南米産のピラルクを展示しています。ピラルクは、大きなものは体長約二メートル体重約百キログラムあり、えさのアジを丸のみにする時には「ガボッ」という音がガラス越しに聞こえます。

ラッコ館
 かわいいしぐさで人気者のラッコたちの故郷は、遠くアラスカの大自然です。ラッコ館の展示水槽は、アラスカの自然の雰囲気を少しでも味わっていただくために岩礁を模した特別な岩組みで背景をつくり、プールの深さや形に変化をつけています。観覧席からは大型のガラス面で水面と水中を同時に見ることができ、潜水したり遊泳しているラッコのダイナミックな姿が観察できます。
 ラッコは、国際条約で保護されている動物で、大きさは成獣の雄で体長約一メートル体重約三十〜四十キログラム。子供から成獣になるまで三〜四年かかります。動きの素早い動物ですが、夜眠る時やえさを食べる時など一日のほとんどは水面にあお向けに浮き、好物の貝を食べる時は、胸の上で貝と貝をたたきつけて割り、身を取り出して食べる習性があります。

寝て、食べて、潜って、遊んで…

写真
須磨海浜水族園(電話番号 ○七八‐七三‐七三〇一)

■開園時間
・九時〜十七時・夏休みは十八時まで・水曜日、十二月二十九日〜一月一日休園・祝日、春休み、夏休みの水曜日は開園

■料金
・大人(十八歳以上)八百円・中人(十二歳以上十八歳未満)五百円・小人(六歳以上十二歳未満)三百円・幼児(四歳以上六歳未満)百円

■交通機関
・JR、山電「須磨駅」→市バス85系統・JR、地下鉄「新長田駅」→市バス臨85系統(夏休みは毎日、その他は日祝日のみ)・JR「鷹取駅」南西へ徒歩二十分、山電「月見山駅」南へ徒歩十五分

■有料駐車場
乗用車六百五十台、バス駐車可(海水浴シーズンは特に混雑します。なるべく電車、バスを利用してください。)

写真
須磨海浜水族園の「波の大水槽」。間口25メートル、奥行き15メートル、水深4メートルのわが国最大の屋内大水槽で、外洋性サメのほか、エイの仲間やシマアジ、アジの大群などが泳いでいる。造波機が作る波高0.5メートルの波が右から左へ押し寄せており、波に対して魚がどのような動きをするかも見ていて興味深い
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