163号表紙

No.163(昭和61年5月)

特集:

森林浴ハイキング

森林浴ハイキング

(左)
新緑あふれる背山をバックにした神戸の玄関、新神戸駅。駅舎をくぐると、すぐに山深い感じのする山道になる

森林浴ハイキングコース

コース概略
神戸市立青少年科学館指導主事 廣瀬 重夫

(1)新神戸駅→布引の滝→市ガ原→トエンティクロス→徳川道→シェール道→穂高湖→摩耶山(健康コース、約10km)

 神戸の玄関、新神戸駅のホームをくぐり五分ほども歩かぬうちに、深山幽谷の気分が味わえる布引渓谷のなかに入ると、ついさっきまで喧噪の大都会にいたことが不思議に思えてくる。
 いくつものポットホールをくぐり、四十メートル直下の滝つぼに勢いよく飛び込む滝の音を聞きながら、白布を長く垂れた優美な姿に見とれていると身も心も洗われる気分にさせられる。
 滝を囲むアラカシとクスノキ、ムクノキなどのうっそうとした木立をあとに徳光院、展望公園、「猿のかけ橋」を通り、布引貯水池に出れば市ガ原まではもうすぐだ。
 ひと休みしたあと、道は新しいえん堤工事のため、夏から秋なら、クズの大群落で覆われた日ざしの強いう回路を登り、卜エンティクロスに入る。川のふちにはオオバヤシャブシがよく生えているが、川原のネコヤナギは少なくなってきた。
 何回となく飛び石伝いに布引谷の流れを横切りながら登り続けると、道はやがて徳川道に至る。このあたりからは、アカマツ林が残っていてコナラやクリの高木がまじり、ウラジロガシも育っているのが確かめられよう。
 しばらく行って黄蓮谷への道標のある徳川道の近くには何本かのナツツバキが残っていて、梅雨の明けたころ白い大きな花を上に向けてつけている珍しい木に出会う。さらに登り、大きな岩の転がる渓流を飛び越えると、桜谷を経て摩耶山に通じるが、左手に進むと徳川道が続き、しばらくしてさらに左にとるとシェール道に入る。このあたりコナラやリョウブの林となっていて所々炭焼きがまの跡を見付けることかできる。
 登山道はやがて林道につながり、穂高湖のえん堤が迫まるとダムを右に見て遠巻きに登りつめれば、青々と水をたたえた新緑の木立に囲まれた美しい湖に出る。ここまで来れば摩耶山までは、奥摩耶ドライブウェイからの眺望を満喫しながらゆっくりと歩いても、半時間ほどの道のりだ。
 天上寺に参るのもよし、展望台から七〇〇メートル下の市街地を見晴らすのもよし、帰路はロープウェー、ケーブルとつなぐか、余力のある人は青谷道か上野道を歩いて下るのもよい。たっぷりと一日を歩き通した人に程よい疲れが感じられるコースである。

  • 写真「久方の天津女の夏衣 雲居にさらす布引の滝」の古歌で知られる雄滝。四十メートル直下の滝つぼに落ちる水しぶきはすさまじい
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    緑の中でひときわ華やかに咲くザイフリボク(シデザクラ)。バラ科の落葉小高木で、五枚の花びらは白くて線形をしている

    写真布引貯水池の北斜面には落葉広葉樹の高木であるアベマキ、クヌギ、コナラなどが多いが、その樹下にはアラカシ、カゴノキ、ツバキなどの常緑樹が育ってきた
  • 写真新神戸駅から滝のあたりにかけて最も多いアラカシの新緑。若葉は紫色をおびた茶色をしているので遠くからでもよく分かる。秋にはドングリがなる
  • 写真市ガ原天狗峡の道標。ここはトエンティクロスと地蔵谷、黒岩尾根道の分岐点である
  • 写真キブシ。淡黄色で小さな鐘形の花を二列につけて花穂を垂れるので風情がある
  • 写真「猿のかけ橋」。この橋を渡れば城山を経て二本松林道の方へ出られる
  • 写真

    布引貯水池

    写真紅葉茶屋南側のアベマキ、コナラ林。以前は尾根にアカマツが残っていたが、今は数えるほどしか見られない。茶屋付近にはイロハカエデが植えられていて秋の紅葉がすばらしい
  • 写真トエンティクロスの渓流と新緑
  • 写真徳川道のアカマツと杉の植林。徳川幕府が外国人と武士の衝突を避けるため、住吉から六甲山に入り、垂水の奥から明石に出る大う回路を建設したのが世にいう"徳川道"である
  • 写真穂高湖。湖岸沿いに歩道、桟橋が設けられており、明るいアカマツ、コナラなどの林が続いている。周辺には野鳥が多い
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    徳川道の道標

    写真トエンティクロスから見えるヤマザクラ。淡いピンク色をした花が新緑に混じって美しい
  • 写真シェール道の渓流とコナラ林。六甲開発初期、多くの外国人が背山ハイキングをしていてドイツ人のシェ―ルという人がよくこの道を通ったので、この名が付けられたといわれている
  • 写真森林浴ハイキングの楽しみ方や、付近のハイキングコースなどを分かりやすく書いた立て看板(穂高湖入り口)
  • 写真摩耶自然観察園周辺の"緑と風の丘"にあるトリム遊具や休憩ベンチ
  • 写真
  • 写真

森林浴ハイキングコース

(2)神戸電鉄鵯越駅→イヤガ谷東尾根→北区君影町(健康コース、約2・5km)

 新しく開設された「健康コース」は神戸電鉄鵯越駅から北に向かい、いったん谷におりて渓流を横切り、クヌギ林の尾根を登っていく。そのあと、まばらにアカマツの高木が残るパノラマ道で、ほとんど坂道のない楽な散策道となって北区君影町に至る。
 この間二・五km、南に淡路島を遠望し、東に菊水山、西に鵯越墓園を眺めることができ、約一時間、ゆっくりした気分で森林浴を楽しむことができる。

  • 写真静かで明るい新緑の雑木林。四、五日して再びこの道を歩くと青葉が見違えるほど多くなっているのに驚いた
  • 写真ハイキングコースの入り口ともいえる、イヤガ谷川に懸かるフジの花。川を渡るとしばらく急な登り道が続く
  • 写真クヌギ林を行く。四季の中で今の新緑シーズンが最もすがすがしい
  • 写真

    山道から振り向くと山麓バイパスの陸橋が見える。付近の新緑は淡い緑色で、主にコナラやクヌギだろう

    写真コースから菊水山を望む
  • 写真山道に咲くツツジ
  • 写真アヤメを思わせるシャガの花。山道のわきでやや暗く少し湿った木陰によく生える
  • 写真マルバアオダモの花。モクセイ科の小高木で、新しく伸びた枝の先に白い線形の花をたくさんつける
  • 写真アカマツ林の明るい山道。木の間隠れに西神戸の市街地が見える

森林浴ハイキングコース

(3)保久良神社→風吹岩→雨ガ峠→本庄橋→七曲り→一軒茶屋→県道→極楽茶屋→紅葉谷→有馬(健脚コース約15km)

 阪急岡本駅から保久良神社の境内を通り抜け、眺望の良い尾根道を登り、芦屋口ックガーデンを右下に見るころ、さびた鉄色の花崗岩が露出した風吹岩につく。
 ここから道を左にとれば、アカマツの高木がまばらな明るい林が続き横池の東に出る。少し道をそれて横池で休むのもよい。ひと休みしたら、元の道にもどり、なおもアカマツの林を進むと、だらだらと坂道が続き峠にさしかかったことが知れる。このあたりからは背の低いコナラの林となり、やがてネザサとススキだけの原野へとかわり、木陰のない雨ガ峠につく。
 峠を下れば、大きな花崗岩でつくろった由緒ある本庄橋につく。あたりの渓流を眺めながら昼食をとるのもよい。
 ひと休みしてえん堤を遠巻き、住吉川の源流を横切って通称「七曲り」にとりつく。登りつめるころ、木立が低くなって視界が広がれば、そこはもう最高峰のたもと一軒茶屋だ。
 ここから最高峰を左に仰いで下りを行けば魚屋道につながるが、県道を横切ったり、尾根をつたったり、山腹をぬって約二km南進すれば極楽茶屋につき、春の新緑、秋の紅葉で名のある紅葉谷を下りることになる。
 いずれを選んでも約四kmで湯の町有馬につく。このコースは、六甲の南麓から九三一mの最高峰に迫り、北面の有馬に越えるため標高差を大きく稼ぐことになるばかりでなく、延長約十五kmと道のりもしっかりあって健脚向きといえる。

  • 写真保久良神社への参道。急な匂配(こうばい)の参道わきには桜が植えられている。神社までは毎日登山をしている年輩の人が多い
  • 写真うっそうと茂る保久良神社境内のヤマモモ。境内林には樹齢一○○年前後のヤマモモのほか、クロガネモチやアカガシが多く、境内から市街地の眺望はすばらしい
  • 写真風吹岩への道標。林の中ではウグイスやホオジロがはずむように鳴いていた
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    保久良神社の境内の森を抜けると、見晴らしのよい尾根道になる。この付近のニセアカシヤの林は、戦後植林され育てられてきたもので、晩春には白くて香りのよい花をつける

    写真ベニシダの若葉。常緑のシダであるが、若葉の出るころは文字どおり紅色を帯びている
  • 写真アカマツ林の下で美しい花をいっぱいに咲かせるコバノミツバツツジ
  • 写真気持ちのよいスギ、ヒノキの造林地。こうした植林は谷あいの斜面などによく施されている
  • 写真赤茶けた大きな岩が尾根にどっかりと座っている風吹岩。ロックガーデンが眼下に見える
  • 写真キツネヤナギ
  • 写真アカマツ林を行く。道の上にはみ出した大きな根に木の生命力の強さを感じる
  • 写真横池。この辺りはアカマツの高木がよく残っていて水に写す姿が美しい。ハイキングの途中、ここに立ち寄って憩う人が多い
  • 写真芽ふくらむブナ。本庄橋を過ぎ、七曲りの急な山道を登っていくと、アカマツやコナラの明るい斜面にこの木を見かけることがある。六甲山の南面では希少な存在になってきた
  • 写真紅葉谷を下る。極楽茶屋から有馬まで4km余り。初夏の新緑と、秋の紅葉が実に美しい
  • 写真濃い紫色の花を咲かせるスミレ
  • 写真高地の草原を思わせる雨ガ峠。女性的な山肌はススキやネザサで覆われている
  • 写真アセビの花。小さな釣り鐘状の白い花をいっぱいにつけたこの木は、遠くから見ると雪をかぶったように美しい
  • 写真アカマツの高木。さまざまな原因で減少する一方の六甲山系のアカマツも、この谷ではまだ健在である
  • 写真ブナの大木を見上げる。北国育ちのブナやイヌブナの高木が谷のあちこちで見られ、人手のあまり加わってこなかった本来の自然の姿に接することができる
  • 写真シキミの花
  • 写真タムシバの花
  • 写真有馬までもうすぐ。幅広くなった川原にはオオバヤシャブシやヤナギの高木が群生している
  • 写真スギの見事な植林地
写真
拡張工事を終えた六甲山牧場。日一日と緑を増す芝生の上で、のんびりと時を過ごす羊の親子連れがほほえましい
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