155号表紙

No.155(昭和60年8月)

特集:

ユニバシアード神戸大会

神戸を訪れる人を、温かく迎えようと市内の主要道路に掲出された市民の手作りバナー(中央区”みどりと彫刻の道”で)

世界の若者が燃えるユニバーシアード神戸大会 8月24日〜9月4日

 学生のオリンピック、ユニバーシアード神戸大会がいよいよ今月二十四日から開幕です。九月四日までの十二日間、世界の若者が国際都市・神戸に集い、スポーツと文化を通じて友情の輪を広げます。
 大会には百か国以上から、約五千人の選手・役員の参加が予定されており、大会史上最大の規模になります。実施される競技は、陸上競技、バスケットボール、フェンシング、体操競技、競泳・飛込み、水球、テニス、バレーボール、サッカー、柔道の十競技で、百二十種目。市内を中心とした十七の会場で行われます。
 神戸大会では、モスクワ及びロサンゼルスオリンピックでは見られなかった東西のスポーツ交流が実現します。ソ連、キューバ、チェコスロバキアなどの東側諸国の参加に加え、アジアからも韓国と朝鮮民主主義人民共和国がそろって参加する予定です。また、大会初参加のネパールやブータン、チャドなどをはじめ多くの発展途上国も参加が予定されています。

市民も積極的参加

 大会の運営面では、県・市民・各種団体による「神戸ユニバーシアード推進協議会」の力強い支援活動とともに、運営面へのたくさんのボランティア参加も大会の大きな特色です。また資金面では、各種団体や一般からの募金のほか、わが国初のオフィシャル企業制度を導入し、民間企業の協力も得ています。
 このように、募金活動や歓迎ムードづくりなど様々な分野で市民が積極的に参加、さらに大会の文化行事であるユニバーシアードフェスティバルやグリーンエキスポ'85も開催されており、街全体で大会ムードを盛り上げています。

陸上競技

ポスター「歓喜」。図柄は表彰台の上で、観客やチームメイトに勝利の歓びを全身を使って表現している三人の若者。作者はペーター・佐藤氏

 神戸大会での陸上競技は男子二十三種目、女子十九種目が実施されます。女子の一万メートルと五千メートル競歩はオリンピックにもない種目。また、マラソンは早朝七時三十分、男女同時スタートと話題も豊富です。
 陸上の主な出場選手は、棒高跳びでは、前回のエドモントン大会でボルコフ(ソ連)と息づまる熱戦を展開したチェリ・ビネ口ン(仏)。またロス五輪男子八百メートル金メダルのジョアキム・クルス(ブラジル)、男子三千メートル障害でロス五輪金メダルのユリアス・コリル(ケ二ア、男子四百メートルに障害のダニー・ハリス(米)ら。ハリスは世界記録保持者のモーゼスの後継者といわれるホープで、口ス五輪はモーゼスに次いで二位になっています。
 女子も、四百メートル障害でロス五輪優勝のナワル・ムタワキル(モロッコ)をはじめ砲丸投げ金メダルのクラウディア・ロッシュ(西独)、女子三千メートルでは、ゾーラ・バッドを破ったダーレン・べックフォ―ド(米)らがいます。
 一方、地元・神戸での開催で、選手二百四十二人が十競技にフルエントリーしている日本勢は、残念ながら陸上は苦戦を強いられそう。今大会の陸上で期待されているのは長距離で、エドモントン大会の五千メートルで三位、一万メートルで金メダルの米重修一、マラソン四位の渋谷悛浩ら連続出場組の快走が楽しみです。マラソンでは渋谷のほか、地元神戸の林清司がいます。

林は昨年の福岡国際マラソンで二時間一二分四七秒の自己最高を出したホープ。すでにマラソンコースを試走しており、地の利をどう生かすか注目したいところです。
なお、今大会の陸上のトラック競技の着順はすべて写真判定で行われます。スタートのピストルが鳴った瞬間から自動的に夕イマーが動き出し、判定はトルソー(腕、脚、頭を除いた胴体)がゴールラインを通過したところで下します。タイムは百分の一秒まで測定され、すぐに電光掲示板に表示されます。

マラソン走者に声援を送りましょう

 マラソンでは5kmごとに関門が置かれ、主催者または競技者が用意した飲み物の供給が行われます。また、関門と関門の間には、水だけを供給するスポンジステーションも設けられます。、ただし、飲食物は選手が自分でテーブルから取るように決められています。同じように、倒れたランナーに手を貸したり、助け起こしたり、沿道で観戦しているとつい手を出したくなりますが、声援を送るだけにしましょう。
 神戸大会では、坂道の多い地形上、コースは下りの片道になっています。

ユニバーシアード神戸大会のメダル

 神戸大会の金、銀、銅メダルは直経60o。跳躍する青年を中心に、太陽、海がデザインされています。また、神戸大会のメダリストの名前は、総合運動公園陸上競技場の前に立てられたブロンズ像、「勝利者の像」の台座に刻まれることになっています。作者はメダル、ブロンズ像とも神戸市出身の彫刻家、柳原義達氏。神戸大会では、金265個、銀265個、銅288個のメダルが授与されます。

バスケットボール

 バスケットボールは一チーム五人ずつのプレーヤーが、一個のボールを奪い合い、三・〇五メートルの高さにつるされたバスケットにボールを投げ入れて、得点を争うゲーム。コートは縦ニ八メートル、横一五メートル、他の球技と比べて決して広いとはいえないコートの中を、十人のプレーヤーが得点を争って激しく動きまわります。どのプレーヤーがボールを取り、シュートしてもかまわないので、ボールが相手に渡ると一瞬にして攻守が入れ替わる。この攻守の切り換えの早さも、バスケットボールの特徴の一つです。
 また、バスケットボールの競技時間は十分間のハーフタイムをはさんで、前半二十分、後半二十分の四十分間ですが、ゲームは秒単位で進められます。例えばボールを持ったチームは三十秒以内にシュートしなければならないなど、秒単位で時間が規制されているので、スピーディに試合が展開します。なかでも世界のトップクラス、米ソの熱戦が観客を魅了することでしょう。

フェンシング

 フェンシングがスポーツとして確立したのは、十八世紀に金網のマスクが発明されてから。それ以来、技術も発達し、フルーレやエぺの突きの速さは審判の目でも追いきれないほどになったが、近年は電気審判器の導入で判定しやすくなりました。
 出場する主な選手としては、男子エペ個人の世界チャンピオン、ウラジミール・アプツァウリ(ソ連)や、女子フルーレにロス五輪で東洋に初の金メダルをもたらした欒菊傑(中国)ら。いずれにしても、エドモントン大会で活躍したイタリアをはじめ、ソ連、キューバ、フランス、ルーマニア、中国といった国々から強力な選手団の派遣が予定されており、見ごたえのあるゲーム展開が期待できます。これらの世界の強豪を相手に、日本の下川禎、金津義彦、岡智子、宮原美江子のロス五輪代表選手四人がどこまで奮戦するか楽しみです。

フェンシングの決勝戦

 フェンシングの競技は、ピストとよばれる金属製の敷物の上で行われます。フルーレは幅約2m、長さ約14m。エペとサーブルは幅約2m、長さ約18mに規定されています。競技時間は予選が男女とも6分で5本勝負、準決勝・決勝は男子10分で10本勝負、女子8分で8本勝負です。
 フェンシングは、決勝戦をとても大切にします。ピストも予選の時とは違う30cmの高さのものを用い、照明をすべて落としてスポットライトを当てます。また、主審や2人の副審、役員が正装して試合にのぞむというのも、いかにも貴族の武術から発達したスポーツらしい趣です。

体操競技

 ユニバーシアードでの体操競技はチーム競技と種目別の二種類が行われ、規定演技はなく、自由演技だけで競います。一チームは四人(最低三人)で構成し、男子はゆか、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の六種目、女子は跳馬、段違い平行棒、平均台、ゆかの四種目のそれぞれについて演技します。そしてチーム四選手の各種目での成績のうちベスト3の得点の合計が各種目のチーム得点になり、その総合計がチームの総合得点となり、チームの優勝が決定します。
 前回のエドモントン大会の団体総合はソ連、中国、米国、日本の順でしたが、今回も伝統のソ連と、ロス五輪で大躍進した中国のメダル争いが人気を呼びそうです。地元開催の日本が「体操ニッポン」のメンツにかけてどこまで追い上げるか。ソ連からは一昨年の世界個人総合チャンピオン、ドミトリ・ビロゼルチェフやナタリヤ・ユルチェンコらが顔を見せます。

競泳 飛込

 大会二日目からスタートする水泳は、口ス五輪のメダリストがずらりと出場する豪華メンバー。特に競泳は、ロス五輪で男子の二百メートル自由形と百メートルバタフライに世界新を出した金メダルのミハエル・グロス(西独)、ソ連男子自由形長距離のナンバーワン、ウラジミール・サルニコフを中心に、男子二百メートル背泳ぎのリック・ケアリー(米)とイゴール・ポリャンスキー(ソ連)、同じく男子百メートルバタフライのパブロ・モラレス(米)二百メートルバタフライの世界記録保持者ジョーン・シーベン(豪)。女子では、四百メートル自由形のミシェルフォードこ(豪)、ロス五輪の百、二百メートルバタフライ金メダルのメアリー・マーハ(米)ら、昨年のロサンゼルスオリンピックを上回る多彩な顔ぶれがずらりとならんでいます。
 エドモントン大会は男女ともソ連勢が圧倒的な強さをみせ、男子はリレーを含む十五種目のうち十種目、女子は十四種目のうち十二種目を制し、合わせて二十二個の金メダルを手にした。しかし。スポーツ大国を自負する米国も今回は有力選手をそろえてライバル意識をもやしており、「米ソ対決」が"目玉"になる神戸大会で再び激しいメダル争いが展開されることでしょう。
 なお、神戸大会で行われる女子八百メートルリレーは、オリンピックや国際大会でも行われたことのない種目で、注目を集めています。

水泳

 競泳の場合は何分の1秒でも速く泳げばよく、まわりをそれほど気にする必要はないが、水球は、常にゲーム中の自分の位置、マークする相手選の位置、味方の選手の位置、ボールの位置などをしっかりつかんでおく必要があるため、頭をあげて、しかも素早く移動できることが必要です。
 水球の基本になる泳ぎ方は、常に頭を水面上に出し、ピッチの速い独得のフロントクロールと早抜手。これに横泳ぎや背泳、立ち泳ぎなどが加わります。水球選手のスタートダッシュの早さは、水泳選手の中でも群を抜いています。

テニス

 若い女性からミセスまで、幅広い人気のあるテニスの原型は、今から六〜七年前ごろ、フランス王侯貴族の遊びとして始まったといわれています。初めのころはほとんど屋内で行われ、特殊な階級の人々に限られた遊戯的なスポーツでしたが、もっと簡単にできるようにと、十九世紀ごろから芝生や土の上など屋外でできる方法が考え出され、なかでも一八七四年、ウイングフィールド少佐が考案した様式が、近代テニスに最も近いものだといわれています。
 今大会で活躍が期待される選手としては、エドモントン大会の女子ダブルスで銀メダルに輝いた岡本久美子をはじめ、昨年の全日本学生室内選手権でシングルス、ダブルスを制した辻季之の活躍ぶりが楽しみです。外国勢では、米国、ソ連、西独などの選手が、迫力あるゲームを展開してくれるでしょう。

バレーボール

 バレーボールがアメリカで誕生したのは一八九五年。以来バレーボールは年を追って世界中に普及し、現在ではサッカーに次ぐ世界第二位のワールドスポーツとなりました。
 バレーボールが世界の国々で盛んになるにつれて、戦術や戦法も大きく変化してきました。第一は、ブロックアウト戦法やリバウンド戦法を執ように仕掛け、相手の崩れを待つという、チェコスロバキアに代表される技巧バレー。第二がソ連に代表されるように大型選手をそろえ、パワーにものをいわせる力のバレー。第三が、東ドイツが完成させた高さのバレーで、高いところから相手の穴をねらって打っていく方法。第四は日本が得意とする、選手の機敏性を最大限に活用する速攻・コンビネーションバレー。五番目が調子に乗ると実力以上の力を発揮するムードのバレーで、かつてのキューバに代表されます。
 メダルをねらう日本は、男子は全日本のエース、二十七歳の岩田稔がユニバーシアードの出場資格を獲得、主将としてチームをまとめているのが強みですが、男女とも、中国、ソ連、カナダ、キューバなど強敵ぞろいです。

サッカー

 サッカーは、現在世界で最も多くの人に親しまれているスポーツで、特にヨーロッパや南アメリカでの人気は大変なもの。ボールを追う選手たちの激しい動きと華麗なボールコントロールに興奮する観衆。グラウンドと観客が一体となっての熱狂シーンが繰り広げられます。
 神戸大会のサッカーは、フリー・エントリー制の他の競技とは違った独自のエントリー制をとっています。大陸ごとに地域予選を行い、参加チームを決定します。神戸大会には日本のほか、西ドイツ、フランス、英国、米国、メキシコ、韓国、朝鮮民主主義人民共和国、クウェート、マダガスカル、アルジェリアの計十三カ国が参加します。
 プレーには、大きく分けるとヨーロッパ型と南アメリカ型の二つがあり、ヨーロッパ型は西ドイツに代表されるコンチネンタルスタイル。パスを重視したチームプレーにのっとり組織的に攻撃します。一方、南アメリカ型はブラジルやウルグアイ、アルゼンチンに代表されるラテンスタイルで、個人プレーが中心となりプレーヤーの華麗なテクニックが見ものです。

柔道

 柔道は一九六四年、東京オリンピックで正式種目に採用されて以来、全世界に普及。豪快な投げ技や巧妙な固め技などの応酬で激烈な試合が展開される柔道は、現在では世界でも人気スポーツとなっています。
 神戸大会では個人戦と団体戦が行われ、個人戦は、六〇s以下級、六五s以下級、七一s以下級、六八s以下級、九五s以下級、九五s超級の体重別及び無差別。団体戦は各クラス一人ずつの七人編成で行われます。
 体が大きく力のある外人選手と、技巧派の日本選テがどう戦うか。メダルの期待を一身に集めた形の日本柔道チームの切り札は、重量級の正木嘉見と滝吉直樹で、ともに昨年の世界学生選手権で優勝しているエース。中、軽量級では強敵が多く、フランス、ソ連、あるいは強化の著しい韓国といったところとの対戦が興味深い。韓国からは、ロス五輪で初の金メダルを韓国に持ち帰った九五s級の河亨柱、また、無差別級で山下泰裕とな金メダルを争ったエジプトのラシュワンも出場する予定です。

柔道の主審の宣告はすべて日本語

 柔道は剣道などと違い1本勝負、先に1本を取った方が勝ちです。1本は完全という意味で10点が与えられます。1本と認められるのは、投げ技では、相手の背中が畳につき、だれが見ても鮮やかに技が決まった場合。固め技では、あお向けの状態で、しかも足をからめられないよう30秒押さえ込んだ場合、絞め技や関節技では、相手がギブアップするか、このままでは危険だと審判が判断した場合です。1本以外の判定では、技ありか7点、有効が5点、効果が3点で表示されます。
 柔逆は日本生まれだけに、試合はすべて日本語で進められます。

村新聞も発行 選手村

選手村の"旗広場"

 ユニバーシアード神戸大会に参加する約五千人の選手、役員が寝起きする選手村はまさに一つの街です。選手村は、選手、役員の国際的な共同生活の場で、最高のコンディションで競技に参加できる環境を整えるとともに、村内生活を通じて選手団相互の国際交流が図れるようにするもので、神戸研究学園都市(西区)の中心部にあり、八月十四日から開村しています。
 選手村のサービスセンターには、ショッピングセンター、銀行、郵便局、理・美容店、旅行案内所などがあり、診療所もあります。また娯楽施設としては、選手村劇場やディスコホールもあります。さらに選手村では、村新聞、村日報が発村されるほか、英・仏二か国語でニュースや神戸の紹介をする村テレビ放送も流されます。
 また、選手村の食事は西洋食中心でおいしいことはもちろんですが、スポーツ選手の食事ということでボリュームはたっぷり。カロリーは普通の人の必要量の約三倍、一人一日六千カロリーを標準にしています。

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