152号表紙

No.152(昭和60年5月)

特集:

神戸の野草

表紙写真・ツクシ(スギナ)(トクサ科)“ツクシだれの子 スギナの子”といわれるほど、私たちの生活と深いつながりのある草です。日のよくあたる田のあぜ道や土手に、冷たい風が残る2月に土の間から顔を出し、一番に春の訪れを知らせてくれます。土の間から顔を出すさまはとてもかわいく、大人も子供もツクシ取りを楽しみます。摘んできたツクシのはかまを親子で語らいながらとるのも楽しいものです。おひたしに、佃煮に、油いために、食卓に春の香りをはこんでくれます。ツクシが枯れるころ、地下茎から緑色のスギによく似た形のものが出てきます。これがスギナで、形が筆に似ているところから土筆(ツクシ)と名付けられました(白川〜藍那)
野草を観賞する家族連れやグループが最近は多くなりました。春の野を、野草に話しかけながらハイキングする気分は格別です(藍那)

神戸の野の春を満喫してみませんか

神戸市立西脇小学校教諭 藤池 安代

(1)須磨区白川台〜徳川道〜藍那道〜神戸電鉄藍那駅間

(4.7km 所要時間約4時間)

市営地下鉄名谷駅から白川台行き市バスで終点下車。神戸三木線を少し東へ折れて古い白川の里へ入ります。大蔵神社のすぐ東側から徳川道へ入りますが、山伏山神社の入り口にある「神戸の名木」の"石抱きかや"から北へ行っても間もなく合流します。

(2)神戸電鉄藍那駅〜丹生神社前バス停間

(4.0km 所要時間3時間30分)

藍那駅から小部明石線を少し西へ行くと北側に藍那小学校があります。趣のあるかわいい校舎が印象的です。学校横の舗装路を北へ行くとやがてのどかな田んぼが開けてきます。

(3)神戸電鉄藍那駅〜長坂山〜清光寺〜山田小学校前バス停間

(3.4km 所要時間3時間30分)

今回は山田小学校から長坂山を経て藍那へと歩きましたが、藍那から山田へ抜けても高低差はあまり変わりません。(2)のコースの途中に「至長坂山」の木の目印があります。長坂山(391.6m)の峠を越えると、あとは気持ちのよい山道から田んぼ道へ続きます。

アブラナ(アブラナ科)

"なのはな ばたけに いりひうすれ…"の歌が自然に口ずさまれる風景です。春だなあと感じさせてくれる一番の花です。なたね油を種子からしぼり取りますが、花だけ見ているとみんな同じアブラナのように見えますが、畑で、このように花が開くのにはハクサイ、トウダチナ、カブ、スギナなどたくさんあります。花だけでなく、葉もよく見てみましょう(白川)

ツタにおおわれたひなびた農家の石垣

ナズナ(アブラナ科)

春の七草の一つ。子供たちはこの草を赤ちゃんが持つがらがら(おもちゃ)ににせて遊びます。茎の上部に穂状に十字形の白い花をつけ、花が咲き終わったあと三角状の実をつけます。この実の様子がしゃみせんのばちに似ているところからペンペングサ、シャミセングサなどと呼ばれています。昔は、日常の野菜として町を売り歩く人がいたそうです

タネツケバナ(アブラナ科)

一面に白い花でおおわれた広々とした田を見かけます。柔らかな緑の葉と白い十字の花が特徴です。花の咲く時期が苗代に稲のもみだねをまくころで、もみだねを水につけるころ咲く花ということからこの名が付けられました

オオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科)

寒さが残る2月の初め頃に、春の訪れを一番に知らせるかのごとく鮮やかな青紫色のかわいい花をつけます。明るい日ざしのもとで花を開き、夜は閉じます。4枚の花びらは、離れているように見えますが根元でくっついています。かわいいから摘もうとすると、花だけがボロっと手のひらに落ちてしまいます。まるでお星様のようです。この花の蜜を吸いに虫が集まります。花の中から2本の長いおしべが虫がとまりやすいように突き出ています。果実がハート型になり、その様子が犬のフグリに似ているところからこの名が付けられました。花の美しさをとらえ、英名ではバードアイ(小鳥の目)とか、キャッツアイ(宝石)と呼ばれています

ムラサキサギゴケ(ゴマノハグサ科)

葉のわりに紫色の唇形の大きな花を咲かせます。かたまって咲くので田のあぜではよく目につきます。サギゴケという名は、サギのように白い花をつけるコケという意味です。花が紫色なのでムラサキサギゴケといいます

アブラナ(アブラナ科)

鮮やかな花をつけたタンポポが点々と咲く田んぼ道を子供たちがやって来ます。手に網を持っているところをみると、近くでメダカか、オタマジャクシでもとっていたのでしょう。みんな子供らしい生き生きとした表情でした(白川〜藍那)

カタバミ(カタバミ科)

葉は3つの小葉からなり、1枚の小葉はハートの形をしています。普通は緑色ですが、時には紅紫色を帯びたものがあります。この葉は昼間開いていて夜閉じます。葉の先の部分がへこんで欠けているように見えるので、カタバミと名付けられました

ハコベ(ナデシコ科)

春の七草の一つで、七草がゆに入れて食べるとほのかな野の香りを味わうことができます。花びらは本当は5枚ですが、一つの花びらが元の方まで深く裂けているので10枚のように見えます。茎の片側に並ぶ毛があります

ノミノフスマ(ナデシコ科)

田のあぜや畑でよく見かけます。小さな白い花がかたまって咲きます。ハコベと違い全草無毛です。ハコベ属の区別は種子の表面の突起でします

ホトケノザ(シソ科)

田のあぜや道ばた、石垣のすきまなどでよく見かけます。茎を向かい合った葉が抱くようにつき、その上に無柄の淡紅紫色の唇形の花が咲きます。花の下部は筒状になっています。花は開く数が少なく、ほとんどの花は閉鎖花となって伸びないことが多いです。向かい合ってくっついた葉の上に咲く花の姿が仏さまの蓮華(はすの花)の座に似ているところから名付けられました。

ゲンゲ(マメ科)

春の代表的な花としてタンポポと並ぶのがこの花です。赤紫色の美しい花が畑一面に咲きほこる様はふかふかの花のじゅうたんで、だれもが一度はその中で寝ころび、青空を見上げてみたいと思う気持ちにさせられます。ゲンゲという名よりレンゲ(ソウ)と呼ばれていますが、この花を摘んで首かざりや王冠、髪かざりなどを作りながら、花の仕組みを知るなど自然にふれる機会をもちたいものです。水田跡に緑肥として栽培されていましたが、近ごろでは少なくなってきました。田の肥料だけでなく。家畜のえさにも用いられます。また、ミツバチによって集められた蜜は上質のものとして重宝がられています(山田町福地)

五月晴れの日ざしを浴びてゲンゲ摘みに余念のない親子連れ。見るからにのどかでほほえましい風景でした(山田町福地)

ノアザミ(キク科)

紅紫色のぼんぼりのようなかわいい花をつけます。素手でとろうとすると葉にあるするどい刺(とげ)がささります

春の訪れを共に喜び合っているようなゲンゲソウとワラぶきの農家

ヘビイチゴ(バラ科)

田のあぜに多く生える草で、黄色い小さな花をたくさんつけます。花びらは5枚で長い枝の先に1個ずつ花をつけます。赤い果実は、毒ではないがあまりおいしくありません。花の色や形がよく似たものが数多くあって、一番似ているのがオヘビイチゴですが、各部分のつくりにいくつかのちがいがあります。オヘビイチゴは雄蛇苺という意味で、ヘビイチゴより大形であることを表わし、この点からも区別できます

清光寺の本堂(山田町中岡ノ上)

イタドリ(タデ科)

スカンポ、イタンポ、カッポン、スッポン、スイスイなど数多くの方言で大人から子供まで広く親しまれています。タケノコのように見える赤紫色のまばらに葉のついた若い茎は、かむとすっぱ味があり、のどをうるおすので子供たちのかっこうのおやつになります。この葉をみそ汁に入れたり、漬け物にしたりする地方もあります。この根茎は痛みどりの薬効があるところからイタドリと名付けられました。中空の茎を使って水車や笛を作って遊ぶことができます。春のはじめに若芽を出し、夏には土手をおおうほど大きく成長します。雌株と雄株に分かれているのも特徴です。長い時期、楽しませてくれる草です

初めての人ならおどろくほど大きく風情のある蛇池

心が洗われるような新緑の山道。サカキの小枝を手にした地元のおばさんは「この辺にはワラビもたくさんあるし、山歩きは今が一番気持ちいい」と話していました

ワラビ(ウラボシ科)

明るい雑木林の中でポツン、ポツンと一本ずつ若芽を出します。先が3つに分かれ、それぞれに丸くなっているのでシダ類と区別できます。ハイキングをしながら山菜をつむのも楽しいものです

スギ木立ちの下草に生えるシダ類

ゼンマイ(ゼンマイ科)

ワラビよりも柔らかそうで太い茎をもっています。先がゼンマイのように巻いている所が綿毛でおおわれているので区別できます。ワラビとちがい何本かかたまって生えます

芽吹く木々。須磨区白川〜北区藍那間の"太陽と緑の道"から西区神出方面を望む。前方かすんで見える山は"神出富士"と呼ばれる雌岡(めっこ=左)、雄岡(おっこ=右)山

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