126号表紙

No.126(昭和58年3月)

特集:

市バス沿線スケッチ

市バス沿線スケッチ フラワーロード「花と彫刻の道」の彫刻と市バス
 きょうもバスは行く。市民の足として、苦しい交通事情にもかかわらず、きょうもけなげに頑張っているそんなバス路線のいくつかをとりあげて"市バス沿線スケッチ"を試みた。
 バスがさっそうと走っているときは、こちらもうれしくなり、渋滞などでしょんぼりしているとつい悲しくなった。
ガンバレ市バス!

12系統

(21.4km 乗客数3,370人/日便数往復5便/日)
※他に明石駅前〜田井、国道大久保〜新々田間など運行)

 明石駅前から西明石、さらに大久保へと足を伸ばし、そこから北へ折れてやっと神戸市の西区岩岡町へ出る。神戸の市街地が、明石市の北部にこんなに出張っていることがバスに乗ってみるとよく分かる。広々とした田園路線を北上するにつれ、神出富士と呼ばれる雌岡(めっこ)山、雄岡(おっこ)山が次第にその姿を大きくする。神出小学校へ通う児童3、40人が毎朝このバスを利用するそうだ。

・雄岡山、雌岡山(雄岡山口) 東が雄岡山(標高241b)、西が雌岡山(249b)、ともに形がよく美しい。雌岡山の中腹に陽石をまつる社があり、良縁や安産を祈る風習がある。
・最明寺(老ノ口) 鎌倉時代、北条時頼が諸国を巡ったときこの地に来て、仏堂を寄進したと伝える古刹(さつ)。
・観光農園 いも掘り(老ノ口、五百蔵)・なし狩り(農場前)・ぶどう狩り(上新地、老ノ口)・いちご狩り(老ノ口)・貸農園(五百蔵)。
・金棒池(金棒池) 雄岡山と雌岡山の間にある池。昔、両方の山がたがいに高さをきそい、それぞれ金棒を中心に土盛りをしていたとき、雄岡山の金棒が池へ折れこんだので、池の名になったといい、雄岡山の低いのはそのためだと伝えている。

  • 写真広大な田園風景をバックに、天王山テニスコートでプレーを楽しむ人たち。正面のこんもりとした形のよい山は雄岡山(神出中学校前付近)
  • 写真すすむほ場整備。小さいながらさっそうとバスは行く(新々田)
  • 写真村の鎮守さん・嶋姫神社(弁財天)
  • 写真最明寺本堂(老ノ口)
  • 写真路線沿いのキャベツ畑で取り入れをいそぐ農家の人たち(上村〜上岩岡)
  • 写真市バスを利用して登下校する神出小学校の児童(田井)

14系統

(17.6km 乗客数1,668 便数往復16
※他に神姫バスも運行)

 この路線の目玉は太山寺。このお寺へ行きたくても、以前はマイ力ーでもないかぎりすごく遠い、へんぴな所へ行く感じだったが、須磨ニュータウンの核・名谷駅(市営地下鉄)と路線がつながってから気安く行けるようになった。伊川谷周辺の開発が進み、沿線の各地区に都市化の波がひたひたと押し寄せている。

・太山寺(太山寺) 国宝の本堂、重要丈化財の仁王門など、現存の建築・絵画・彫刻・古文書等の多数が重要文化財になっていることは県下第一。また境内は広く、周囲は原生林がよく茂り、四季ともに風致に富んでいる。
・伊川谷総社(伊川谷小学校前)伊川庄13か村の氏神。総社という名は、明石郡衙(ぐんが・郡の役所)がここにあって、郡中の神社の神を集めて祭ったからだといわれているが、明らかでない。
・観光農園 いも掘り(太山寺)、貸農園(小寺橋)、みかん狩り(永井谷口)

  • 写真きょうは楽しい遠足。地べたに座っておとなしくバスを待つ幼稚園児(太山寺小学校前)
  • 写真伊川沿いによく整備された車道が続く(前開下付近)
  • 写真伊川谷総社(伊川谷小学校前)
  • 写真太山寺にお参りした後、市バスで家路につくお年寄り(太山寺)

臨5 5系統

臨5 6.5km 5 6,3km 乗客数合計8,353 便数合計往復140)

 この路線に限ったことではないが、住宅地がどんどんひらけている西北神地区から市街地へ出る道路は、朝夕かなり渋滞する。
 通勤のマイカーが渋滞を見越して少しずつ早く家を出るため、板宿〜若草間も午前七時前から長い車の列ができ始める。もちろんバスも例外ではない。この渋滞に巻き込まれると、あとはノロノロと動く行列に身を任せる以外どうすることもできない。
 旧白川街道のこの沿線には、道から一歩入るとまるで別世界のような、静かな風情をたたえた古い社寺が多い。

・禅昌寺(褝昌寺)"すずめのお宿"で人々に親しまれており、本堂西の開山堂の軒先に無数のひょうたんがぶらさがっている。開山堂の前に「濃きうすき紅葉やいづれ寺の塵 露城」の句碑もある。
・妙法寺(奥妙法寺) 本尊の毘沙門天立像は像高180・4a、藤原時代の秀作で重要文化財。また境内には応安3年(1370)在銘の宝篋(ほうきょう)印塔があり、これも県指定の重要文化財。
・大歳神社(車大道) 毎年1月14日の夜に行われる「翁舞」(おきなまい)は、翁舞の古い原形をとどめているため昭和50年、県指定の重要無形文化財になった。52年には国の選択芸能の指定も受けた。

  • 写真

    板宿の商店街のアーケードの下を行くバス、アーケードの下をバスが走るのはここだけで、朝夕のラッシュ時はたいてい車が数珠つなぎになる

    写真新神戸駅を出た新幹線の下り列車は、若草町の南西付近で初めてちらりと地上に姿を見せる。路線を行くバスと新幹線の瞬間の対面だ
  • 写真「翁舞」で知られる大歳神社(車大道)
  • 写真軒先にひょうたんがぶらさがっている禅昌寺の開山堂(禅昌寺)
  • 写真お年寄りの参拝者の多い那須神社。信心すれば死ぬときにシモの世話にならないといわれる(那須神社前)
  • 写真バスの到着を待つ人たち(前池町)
  • 写真バスの前方に続く車の列(明神町)
  • 写真細い歩道を行く人も、その横を走るバスも窮屈そう(禅昌寺)

72系統

(12.7km乗客数3,277 便数 循環20)

 離宮公園前から西へ折れると、歩道のない道が下畑まで続く。鉄拐山の北側を行くこの辺りはさながら田舎バスだが、多井畑厄神を過ぎて高倉台へ入ると、とたんにさっそうとした都市バスに変わる。高倉台から離宮道にかけて、バスのフロン卜ガラス越しに見る海の色は、太陽の動きにつれて幾とおりにも変化し美しい

・綱敷天神(天神下) 毎年2月25日に梅まつりがあり、子供の書き初めの展覧がある。
・多井畑厄除八幡神社(多井畑厄神)厄除祭は1月18、19、20日で、この3日間は夜を徹して多くの参拝者があり、にぎわいを見せている。

  • 写真"同僚"の姿を見ながら、バス専用レーンを快適に走る(離宮公園前付近)
  • 写真多井畑厄除八幡神社の社殿(多井畑厄神)
  • 写真光る海と国電と市バス。上はベルトコンベア(須磨一の谷バスターミナル)
  • 写真まぶしく光る離宮道
  • 写真車窓に広がる摩耶埠頭

29系統

(4.8km 乗客数3,700 便数往復109)

 神戸港で働く人たちを送り迎えする典型的な片道輸送路線。朝夕のラッシュ時は随所で車が渋滞するが、昼間は比較的楽に走れる。田園地帯ののどかさとは正反対に、ここでは世界有数の神戸港内の活気がじかに伝わってくる。
 突堤に着岸した外国人船員が紙幣交換をしないままバスに乗り、ドル紙幣などを運転手に出す例がよくある。言葉も通じないため、運転手は「外貨をお預かりしました。後日、清算においでください」と、英語と中国語で印刷したチラシを用意している。

  • 写真ざわめきの去ったたそがれの摩耶大橋バス停
  • 写真摩耶大橋を行く
  • 写真

    車窓から見た夕暮れどきのハシケの親子連れ(摩耶大橋北)

    写真雪をかぶった摩耶山と市バス(摩耶大橋)
  • 写真フラワーロード「花と彫刻の道」の彫刻と市バス
  • 写真船と上屋と市バスと
  • 写真神戸税関前の交差点

34 35系統

(14.4km 乗客数7,666便数循環75)

 岡本の静かな住宅街と、工場の多い第三工区の埋立て地区。全く別の顔をした路線のようだが、この両方をバスで実際に走ってみると、思ったほど違和感はない。第三工区がまだ新しく、道も公共施設も工場も、それぞれスケールが大きいからだろう。ここの広い道路からふり仰ぐ六甲のパノラマ風景は、岡本辺りで見上げる保久良山の比ではない。また、両地区の中継ぎ役を果たしている魚崎南町一帯には酒蔵が多い。いきな黒塀を見ると、140円の市バスの旅にも何となく旅情がわいてくる。

・保久良神社(本山第一小学校前)大阪湾を望む社殿の突端に、古くから「灘の一ツ火」として知られる常夜燈がある。沖を行く船の夜の標識として今も点灯を続けている。毎日登山の山として親しんでいる市民が多い。
・本住吉神社(住吉駅前) 由緒ある古社で、神社沿いの東の道の辻に「有馬道」の道標が建っている。六甲山の住吉越えの古い道の一つであったことがこれで分かる。

  • 写真本住吉神社の鳥居を見ながらバスは右折する
  • 写真酒蔵地帯を行く(魚崎南町3)
  • 写真岡本の静かな住宅地を走るバス(岡本9)
  • 写真神功皇后が化粧したと伝えられる沢の井。今も清水がわいている(阪神御影南口)
  • 写真

    国道43号線沿いにある覚浄寺(魚崎寺前)

    写真紅白の梅が咲き誇る岡本梅林公園(岡本7)
  • 写真時間帯を決めた珍しいスクランブル交差点(本山駅前)
  • 写真朝のラッシュ時の定期運行を終え。魚崎車庫へ帰る回送車。(魚崎中学校前付近)
  • 写真東部第3工区へ渡る魚崎大橋から東を望む
  • 写真住吉川を渡る
  • 写真兵庫運河の新川橋を行く市バス(中之島)

3系統

(11.1 km 乗客数17,550 便数循環178)

 歴史の古い兵庫区南部の運南地区と山麓(ろく)の住宅地を結ぶ路線沿線には工場や商店、民家がびっしりとはりつき、兵庫・長田両区役所、中火卸売市場、長田神社などもあって、見た目には乗客数は多いはずなのに、現状はそうでもないそうだ。兵庫区全体の人口が、いわゆるドーナツ化現象で年々減っていること、それに造船業界の不況や新開地の不振なども影響しているのではないか、と古参の運転手さんはいう。兵庫運河に浮かぶ太い材木も心なしかさびしげである。

・清盛塚(中之島) 鎌倉期の優秀な十三重の石塔で、塔の台石に弘安9年(1286)2月の刻銘がある。平清盛は全盛時代を神戸(平野)で過ごし、その間に経島築造の大事業を完成して、今日の兵庫の基礎とした功績は大きい。
・長田神社(長川神社前) 節分の日の鬼追いの行事は有名で、この日は観客が境内を埋め、外国人の姿も見られる。また境内に弘安9年(1286)4月の銘の石倒籠がある。県指定重要文化財

  • 写真ハッとするような情緒を感じる工場横の街路樹(東尻池5)
  • 写真兵庫運河築造の功労者・八尾善四郎の銅像が高松橋西詰めに見える(東尻池8)
  • 写真

    ワイド感のある市立中央球技場前(吉田町1)

    写真兵庫運河独特の活気(鍛治屋町)
  • 写真買物客でにぎわう東山商店街入り口
  • 写真バスの前後を囲む車の列(長田8)

64系統

(9.6km 乗客数4,427 便数往復129)

111系統

(6.3km 乗客数1,153 便数往復60)

 箕谷と三宮を結ぶ64系統の半分以上は、わが国で2番目に長い新神戸卜ンネル(6・9q)。中間には新神戸駅があるだけで、停滞がほとんどないためダイヤ時間も狂いが少ない。そして111系統は、市内で最ものんびりした田園路線。山あり川あり、歴史的な史跡ありで、沿線の随所にかわいい火の見やぐらが立っている。箕谷から20分で「箱木千年家」のある衝原(つくはら)に着く。

・下谷上農村歌舞伎舞台(小橋) 兵庫県下に約137棟ある農村舞台の中でも優秀なものの一つ。天保11年(1840)の棟札がある。昭和52年1月に損焼したが、54年9月再建された。重要有形民俗文化財。 ・無動寺(福地) 本堂に重要文化財の仏像が5体も安置されている。また、境内の本堂西の高みに若王子(にゃくおうじ)神社の本殿がある。この建物も重要文化財。 ・六条八幡神社(福地) 境内に文正元年(1466)建立の三重の塔がある。重要文化財。 ・箱木千年家(衝原) 現存する日本最古の民家。呑吐(どんと)ダム建設のため移築工事が行われ、現在は従来のところから数10b離れた高台に建っている。重要文化財

  • 写真いつも満車状態の箕谷の"パーク・アンド・ライド"駐車場
  • 写真わらぶき家の珍しいふき替え作業。この家のふき替えは20年ぶりだそうで、こんな作業風景はこの地区でも最近はあまり見られなくなった(七社前)
  • 写真のどかな山田の里を行く市バス
  • 写真新神戸トンネルの入り口
  • 写真

    前方に火の見やぐらがぽつねんと立っている

    写真手前左側は山田川疎水の取水口
  • 写真箱木千年家と市バス
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