122号表紙

No.122(昭和57年11月)

特集:

市立博物館オープン

市立博物館オープン 1階ホールの階段と東山魁夷「 江月明」の大タペストリー
 

市立博物館
親しみやすい博物館に
神戸市立博物館館長 井尻 昌一

動と静を感じさせる華麗な騎馬図泰西王侯騎馬図二双(ともに重要文化財。神戸市立博物館、東京サントリー美術館蔵) =1階ホール

井尻昌一館長(右)と一番乗りの根本直明さんによるテープカット(11月3日)。根本さん(34) =会社員、灘区城内通2の4=は午前5時前にやって来たという 開館式で喜びのあいさつをする宮崎市長(11月2日)

美しく整備された市立博物館前の"くつろぎのタウンロード"

平清盛像(柳原義達作)=1階ホール

ドーム型の屋根が見える博物館西面の新築部分。南蛮美術館や収蔵庫がある

 十ー月三日のオープン以来、おかげで人気も上々で、長い間準備をしてきた私たらとしてもホッとしたような気持ちです。それに入館者数もさることながら、単に物珍しさで来たというのでなく、非常に熱心に鑑賞していらっしゃる人が多いのは何よりうれしいですね。過去の神戸の歴史を振り返りながら将来、神戸がどういう方向へ、どう発展したらいいかを考えていただきたい。そのためにも、みんなから親しまれる博物館でなければと考えています。
 この博物館のユニークさをいくつか挙げてみますと、九年ほど前に調査委員会をつくり、有名な先生方に博物館が何を中心に、どんなテーマで展開したらいいかを考えてもらったところ、結局、神戸という土地柄は港とともに大きく発展した町といことですから、「国際文化交流―東西文化の接触と変容」といったことをテ−マにしたらいいのじゃないか、 ということになりました。ですからこの考え方をもとにして、いろんな展開をしているわけです。
 第一は常設展示ですね。第二は南蛮美術館。そして第三は、ある期間を限って特別のものをやっていく特別企画展です。この三つの展開が、すべて東西文化交流を基本に流れています。従って常設展にしても、人文系陣物館として原始、古代から近代までずっと流しているわけですが、必ずしも歴史を勉強するような、ただ歴史を振り返るようなものに重点をおくのでなしに、神戸の過去の歴史が、あるいは日本の歴史が東西文化にどんな影響を与え、また影響を受けてきたかというようなことを重点に展示しています。

時代によって違うポイントの置き方

 通史的な常設展ではあるけれども、ポイントの置き方がまた違うわけです。例えば、原始時代から中世あたりまでの時代は、東西の交流といっても中国、朝鮮、あるいはペルシャといったアジアとの交流が多かったわけですから、そこにポイントを置く。それから中世から江戸以降になると、ここは鎖国時代も入るわけですけど、スペイン、ポルトガル、オランダといったヨーロッパとの東西交流がポイントになってきます。
 また神戸は、明治時代に入って非常に欧米の影響を受けた港町ですが、この時代には、そういった交流に重点を置くという風に展開をしていますので、東西文化交流という観点から物を考えれば、必ずしも順番に見ていかなければならないというのでもないわけですね。基本さえ頭においておれば、どこから見てもおもしろく見られるのではないかと思います。

四百余点を展示 海のシルク・ロード展

 それから、この博物館の特徴は、何といっても池長孟(はじめ)さんの非常に大きなコレクションを展示した南蛮美術館の作在ですね。これが博物館の一つの中心なんです。ですから二階に、従来の中央区の熊内にあった時の倍ぐらいの広いスペースをとって南蛮美術館とし、池長コレクションの伝統を引き継いでいくことにしています。従って能内の時も随時展覧してましたけど、これからは展示面積が 倍になってますから、より以上に順次取り換えながら展覧していけると思いますね。それだけ一般の市民の方にも楽しんでいただけると思います。  今回の第一回特別展「海のシルク・ロード」は、特に私どもが力を入れたもので、オランダから二百数十点、国内から約百七十点、合わせて四百余点の品物を借りてきて、南蛮美術館を含め三つの展示室に展示しています。こういう特別展はもちろん今後も続けていく予定です。第二回は来年一月から古い地図を一堂に集めた「古地図展」、第三回は四月ごろに「神戸の文化財展」を行う予定で、すでに借りるべきものについては交渉しています。来年いっぱいぐらいの特別展の構想はできているんです。

銅鐸の音色を通じて古代人のくらしぶりをしのぶ

 また郷土作家のギャラリーもこの博物館にあって、神戸ゆかりの一流の画家の作品展示を随時やっていくつもりです。第一回は東山魁夷さんの「中国の旅」展です。これは特別展の会期中ずっとやりますけど、第二、第三回は小磯良平さん、田村孝之介さんと続く予定で、そういうユ二ークなギャラリーがここにあるということ。博物館だから古色蒼(そう)然とした、古いものばかり集めるということではなくて、要するに文化遺産というか、人類が作り出した文化的なものであればいいと考えています。
 それから、学習室や図書室もこの博物館の特色の一つです。普通の博物館ですと、これもさわったらいかん、あれもさわったらいかんで、物が物ですからやむを得ないんですが、この学習室では実際に手でさわって、耳で聞いて、そして考えてもらう。例えば、鋼鐸なんか本物は全部国宝ですから、とても手で触れたりはできません。ですからそのレプリカを作って部屋にぶら下げておき、自由にさわってもいいし、力−ンと鳴らすこともできるようにしています。鋼鐸の音色を通じて、古代人のくらしを身近に感じてもらおうということなんです。
 また別の部屋では、神戸の伝統的なお祭りや、街角の今昔や、神戸人形の生産工程などがビデオテープに撮ってあって、自分で好きなボタンを押せばそれが出てきます。また考えるコーナーでは、Q&A式に神戸に関するいろんな質問に答えてもらう。そして解答の正誤がすぐにわかるようになっていて、これも小、中学生には人気があるようです。

きれいになった"くつろぎのタウンロード"

 図書室は、館内の展示部門の基礎的理解をもっと深めたい人や、専門的に勉強しようとする人たちに気安く利用していただくほか、他の博覧会や研究機関と交流の窓口になります。このほか、親しみやすい博物館にするため、博物館の友の会組織もつくりたいし、また「博物館だより」を定期的に刊行します。
 博物館の前の京町筋も随文きれいになって"くつろぎのタウンロード"と呼ばれるようになりました。場所も、神戸にとっては由緒のある旧居留地の真ん中ですし、駅からもそう遠くありません。一時間や二時間で見ようと思っても無理ですから、せめて半日は館内でゆっくり過ごすつもりで来ていただきたいですね。(談)

  • 写真大理石の壁面に鮮やかに映える一階ロビーの銅鐸ステンドグラス
  • 写真
    付近案内図

特別展「海のシルク・ロード」

第1部 波濤を越えて
第2部 日本における異国趣味

  • 写真2階特別展示室前のロビー
  • 写真1600(慶長5)年、オランダから初めて日本に渡来した商船デ・リーフデ号の船尾にあった木造エラスムス立像(「耶蘇紀元一千五百九十八年」在銘、重要文化財 栃木龍江院蔵)
  • 写真1613年、セントヘレナのジェームズ湾で沈んだヴィテ・レーウ号より引き揚げられた中国磁器染吋芙蓉手向付破片(明17世紀初期、アムステルダム国立博物館蔵
  • 写真南蛮美術館の生みの親・池長孟(はじめ)氏の肖像画を掲げた同館入り口。看板の字は池長氏の長男澄(きよし)氏の筆
  • 写真重厚な四都図・世界図(八曲屏風一双、重要文化財、神戸市立博物館蔵)が展示された特別展示室
  • 写真祇園会鯉山掛装類一具(16世紀 毛綴織ベルギー、重要文化財、京都鯉山保存会蔵)
  • 写真同じ柿右衛門の色絵を使って焼いた皿。左から日本製(有田窯、18世紀初期)、日本製オランダ絵付(デルフト窯、18世紀初期)、ドイツ製(マイセン窯、1730年頃)
  • 写真オランダ商館長道中図蒔絵簟司(まきえたんす)(オランダ王室蔵)。江戸時代に京都でつくられたもので、扉部分に江戸に向かうと思われるオランダ・カピタン(商館長)の道中図が加飾されている=開館記念特別展「海のシルク・ロ−ド」
  • 写真オランダ東インド会社の澎湖島の稜堡で使用されたV.O.Cマーク入り青銅製大砲(1750年頃、アムステルダム国立博物館蔵)
  • 写真織部南蛮人燭台(個人蔵)。岐阜県美濃の最もエキゾチックな焼きものの代表例で、桃山時代後半期に流行をみた南蛮意匠が陶芸の分野に大きな影響を与えたことがわかる。
  • 写真洋時計(革箱付)重要文化財(静岡久能山東照宮蔵)。日本で現存する洋時計のうち最古のもので、1581年マドリッドで製作された。

常設展

@東アジアとの交流
A地方文化の発展
B江戸時代の兵庫津
C鎖国下の日本と外国
D開港をめぐって
E文明開化と近代化

  • 写真大壺(弥生時代中期)のある常設展示室
  • 写真青銅の祭器・銅鐸(灘区桜ヶ丘町の桜ケ丘遺跡から出土。国宝。弥生時代)
  • 写真旧石器、縄文時代の狩人たちのくらし
  • 写真五色塚古墳の周辺模型
  • 写真縄文時代や弥生時代人の生活の本拠であった竪穴住居の模型。ワラやカヤで屋根を葺き、建物の中央に炉かあることが多く、炉の周囲が作業や飲食の空間であったと考えられている
  • 写真灘の樽廻船。1859(安政6)年に造られた約1700石積の模型。樽廻船は、菱垣(ひがき)廻船とならんで上方・江戸間航路で活躍した
  • 写真石造宝篋印塔(複製)。原品は垂水区久昌寺所蔵、県指定重要有形文化財、1352 (観応3)年
  • 写真望遠鏡(18世紀初頭)。森仁左衛門作、全265.0cm、最大径9.5cm。外筒は皮張り、のぞきの部分はべっ甲細工。非常に大きく豪華なものである
  • 写真畿内の寺院跡から出土した瓦
  • 写真

    1897 (明治30)年ごろの神戸外国人居留地の復元模型(模型設計者・坂本勝比古氏)

    写真異人館旧トムセン住宅の再現模型。現当主アーサ・トムセン氏より寄贈された建具と建築当時の写真などで当時の様子を再現している
  • 写真明治の人力車。神戸では1870(明治3)年に初めて人力車が登場し、翌年末には80台余が市内を走っていた(蓬莱公平氏蔵)=常設展示「開港をめぐってー交通の発達」
  • 写真明治初期に輸入されたと伝えられるドイツ製の印刷機械(松本和夫氏蔵)。神戸では、開港のころから外国人経営の英字新聞が印刷、発行されていたが、やがて日本人も活版印刷をはじめた
  • 写真

    イラストレイテッド・ロンドン・ニュースに掲載された開港当時の神戸港風景

    写真兵庫県発行銭札(明治1〜2年、若林泰氏蔵)
  • 写真

    明治の女性の髪型。1871(明治4)年に断髪令が出たあとも、女性の日本髪はそのまま続いていたが、1885(明治18)年に婦人束髪会が結成され、日本髪は不便、不潔、不経済であるとして束髪を提唱、全国的に普及した

    写真絵年表で見る近代の神戸

学習室、図書室…

  • 写真神戸の歴史や空からの都市景観などをビデオディスクやVTRを使って映像で紹介する"見るコーナー"
  • 写真レシーバーをかけ、楽しそうに質問に答える学習室 考えるコーナー。
  • 写真国宝の銅鐸と同じ材質でつくられ、自由に鳴らすことのできる"さわるコーナー"の銅鐸(複製)
  • 写真来館記念のスタンプ押し
  • 写真にぎわう図書室<
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