121号表紙

No.121(昭和57年10月)

特集:

神戸空中散歩(下)

神戸空中散歩(下) 須磨浦公園と須磨海岸
 

"人、西へ行く"―壮観な団地群

西神戸有料道路の入口と夢野団地

鵯越墓園からひよどり台団地を望む

市街地の上へのしかかるように広がる烏原貯水池

 前号にひき続いて空中散歩の第2弾。今回は西神戸を中心に飛んでみた。9月下旬の昼下がり、ひよどり台のへリポートをスタート。空は一面に雲の粒子を散りばめたように薄青く、上空から見下ろす市街地も、淡く優しい陽の光につつまれていた。
 飛びたって早々、鵯越墓園の墓地群が目に入る。墓地ごしに見える団地群は、何かしら幽玄な風情、慣れないヘリコプター飛行の無事をこっそり祈った。  ヘリは悠々と水平飛行をはじめた。4本の長いプロペラがリズミカルな回転音を響かせながら、西神戸有料道路に沿って市街地に向かう。

目をひいた16角形ドーム

 国鉄神戸駅周辺。一番に目をひいたのは駅前広場の十六角形ドーム。まるで大きな風車のようだ。この大屋根から取り入れる自然光が地下の"サンこうべ"に注いでいるのだ。湊川神社の境内が深緑色にこんもりと盛り上がっている。中央体育館、神戸文化ホール、中央図書館などの文化施設が建ち並ぶこのあたりは、いかにも文化圏らしく、整然と落ち着いた感じである。
 神戸の市街地は確かに東西に細長いが、この上空から西に見る市街地は、まるで三角定規のような格好だ。底辺が六甲連山のすそ野で、頂点が和田岬。西に向かってだんだんと町はせばまり、須磨浦の鉢伏山から向こうは見えない。ゆったりとうねる兵庫運河には、上からでもはっきり見えるほどの巨木がたくさん浮かんでいる。兵庫港に面した造船所に大型船が停泊していた。修理中なのだろうか、4、5隻の小さな船がそのまわりを、見守るようにしてとり囲んでいた。

街路樹の貴重さがよく分かる

 兵庫、長田区の上空を飛んでいると、街路樹の緑の貴重さがよく分かる。もしこれがなければ、どんなに殺風景な眺めになることだろう。新長田駅周辺の高層ビルがひときわ目立つ。市営地下鉄が東西に伸びるにつれて、東西神戸の接点として一層発展することだろう。西代の市民グラウンドが真下に見える。このグラウンドを見ると、いつも夏の高校野球の歓声が聞えてくるような錯覚にとらわれる。あちらこちらの小学校の校庭で白い豆つぶほどの子供たちが、運動会シーズンを控えての体育練習だろうか、トラックを行進していた。目の高さより低いところを、高取山の山頂が流れていく。
 須磨離宮公園は、下で見ても上から見てもきれいで、優雅である。目を凝らすと、芝生の上に点々と彫刻が据えられている。2年に一度のビエンナーレ"第8回神戸須磨離宮公園現代彫刻展"である。
 須磨海岸の上空にやって来た。テトラポッ卜が並ぶ西部第一工区の西に、"養浜事業"で広くなった砂浜が鉢伏山の少し手前まで続く。西日本一の規模をもつ須磨ヨットハーバーと赤い鉄骨組みの海づり公園が、白い砂浜に花を添えている。一の谷の山間をぬって須磨ベルトコンベアが、まるで白い大蛇のように海に伸びている。ポートアイランドが完成した今も、六甲アイランドの土砂運搬に汗を流す頼もしいジャンボコンべアだ。

山の向こうは一面のニュータウン

 ヘリコプ夕ーがお尻を突き上げるようにして急上昇、鉢伏山を飛び越しにかかった。きり立った斜面と海がとけ合ったほんのわずかなすき間を、国鉄・私鉄の線路と国道2号線が寄りそって走っている。山の向こうは、一面に二ュータウンだ。高倉台・名谷・多聞台団地…がきれめなしに連らなっている。そんな団地がわれわれを拍手で迎えてくれているようで、ついうれしくなってしまった。"山、海へ行く"のとは逆に、"人、西へ行く"実感がひしひしと湧いてくる。
 来年秋の一部操業をめざして新垂水下水処理場の埋立工事がいま真っ最中だ。この処理場は、周辺の人口増加に対応した下水処理に加えて、垂水海岸の水質汚濁の防止をめざすそうである。きれいな海が海岸線の美しさを一層ひき立てているのを見ると、ぜひそうあってほしいと思う。端正な五色塚古墳に続いて舞子ビラ、そして松の緑が東西に伸びる舞子公園の端にこじんまりとした六角堂が見える。このあたりでヘリコプターは機首を北にふった。
 大きな名谷団地の西隣りに、どうも似合わない土くれだけの地面が広がっている。昭和60年にユニバーシアードが開催される神戸総合運動公園の建設現場だ。数台の卜ラックが土煙りを上げながら、列をなして走っている。その西向こうに、西神住宅団地の家々がかすんで見える。市営地下鉄西神延伸線が開通するようになればこの辺一帯がどんな近代都市に生まれ変わるのか、今は想像もつかない。ツンと澄まし顔の周辺の団地までが、新しい都市の誕生を心待ちにしているかのように見えてくる。

奥行き深い北神戸

 ヘリコプターはどんどん北へ飛んで行く。平均時速200q。あの丘この丘越えて、あっという間に裏六甲だ。裏六甲はとにかく広くて深い。新神戸トンネルの北出口・箕谷のすぐ北に、山田の里が見える。ワラ葺き家がポツンポツンとあって、山田川が静かにうねっている。山に囲まれた有馬温泉からは湯の香がただよってくるようだ。
 有馬川と有野川の合流点、道場の上空にやってきた。すぐ北は三田市、東は西宮市。もちろん神戸の東北端だが、ここもまだ神戸か、というのが実感である。南をふり返ると、はるか彼方に、六甲の山並みが帯のように細長くかすんでいた。

写真
森の中に広がる須磨離宮公園。高速道路をへだてて左側に本園、右側に植物園が見える
ページトップへ