120号表紙

No.120(昭和57年9月)

特集:

神戸空中散歩(上)

神戸空中散歩(上) ポートタワーはいつ見ても絵になる存在だ。光る海がその美しさをいっそうひき立てていた
 

ポートアイランド。地についた生活のにおいが伝わってくるようだ

摩耶埠頭上空から東を望む。六甲アイランドが加わって、ワイド感に一段と厚みを増した

東部第4工区。こじんまりとした出島のようだが、中央卸売市場東部市場などがあり、活気に満ちている

六甲アイランド北岸壁には自動車運搬専用船などがぴったりと接岸していた

快適!神戸上空1000フィート

 いま神戸の町はどんな表情をしているのだろうか―。
8月下旬のかすみがかった日に、市消防局の最新式ヘリコプター「KOBE−U」号に乗って北区ひよどり北町のヘリポートを飛びたった。上空300m(約1000フィート)の高さまでエレベーターが急上昇するような調子で舞い上がっていく。あとは風にのってスルスルと、まるで空を滑るような乗り心地だ。思わず声を上げたくなるほどうれしくなってくる。飛びたってから3分そこそこでもうポートアイランド上空である。

島全体から生活のにおいが伝わってくるポートアイランド

 ポートピアの期間中にもヘリコプターで会場周辺をぐるぐる回ったことがある。林立した色とりどりのパビリオンと10万人以上の人波が入りまじって、壮観で華やかだった。でも、あの時のポートアイランドは神戸港にぽっかりと浮かぶ島だったが、こんどは違う。デンと腰が座って、神戸大橋をはさんで市街地とすっかり一体感をなしているように見える。こちらの目がなじんできたせいというより、島全体から生活のにおいが伝わってくるせいだろう。真下に見える高層住宅に住んでいる何組かの知り合いの顔が浮かんでくる。大きな原口記念公園を走り回っている子供の姿も見える。地面に根をおろした生活をたくさんの人がここでするようになって、島は人工島という殼を破って"都市"に変身したのだ。ポートピア会場跡地では、すでにインターナショナルスクエアの建設工事が始まっている。60年ごろにこれが完成すれば、ポートアイランドはもっと大きな顔をするようになるかもしれない。
ヘリコプターは海岸線を東に、六甲アイランドに向かった。ピンク色の上屋が並んだ摩耶埠頭の上まで来ると、目の前に六甲アイランドが横たわって見える。この位置から東を見た東部の神戸港も、中央部とはまた違ったワイド感があってとても好きだ。これも六甲アイランドがあるからだろう。その存在の大きさがこうして上空から見ると歴然とする。
六甲アイランドの北岸壁にはコンテナがたくさん光って見え、船が4隻接岸していた。まだ幼な顔の六甲アイランドが、南岸沿いでは盛んに土砂の投入が行われている一方ですでにこんな活動をしているのだ。ポートアイランドに追いつけ追い越せ、と島全体が息づく日もそう遠い将来ではない。

家並みが眼下をサァーっと流れるスピード感

 急に機首を北に振り、ヘリコプターは市街地の方に向きを変えた。ヘリコプターの旋回はあまり気持ちのいいものではない。機体が前のめりに曲がろうとする方向に傾くので、とっさに足を踏んばってしまう。
そんなこちらの気持ちなど知らぬ顔で、ヘリコプターはゆうゆうと市街地の上を飛んでいた。平均時速200km。さすがに市街地を飛び始めると、家並みが眼下をサァーっと流れてスピード感を増す。阪神高速道路と国道2号が互いにけん制し合うように西へ伸び、ビルが密集する三宮の中心街へ割り込んでいる。高速道路の上を車が二列に規則正しく走っていた。
岡本・住吉の住宅街は上から見ても家々の間に緑が豊富で、閑静さがよくわかる。色とりどりの屋根瓦があざやかだ。高台の住吉台団地や渦ヶ森団地などの新しい住宅地では黒い屋根瓦は見つけることができなかった。住吉川が好き勝手に曲がりながら、ゆったりと海に流れこんでいる。
阪急西灘駅西の王子陸上競技場は、アンツーカーと芝の取り合わせがまぶしいほどきれいだ。王子動物園や体育館・プールなどが集まったこの付近は、おどろくほど緑が豊富だ。美しい空色のプールでは夏休み最後の泳ぎを楽しむ子供たちで混雑していた。
生田川がこんなに大きかったのかと思ったほど太く見えた。そういえば住吉川にしても石屋川、都賀川にしても太くなったように感じた。やはり川の両岸の整備がすすんできたせいだろう。それにくらべると、布引の雄滝がなんと可愛らしいんだろう。岩頭から滝壷までの高さが約43mもある壮大な滝水も、上から見るとまるで小便小僧の小水みたいである。
三宮の市街地が真下に見えてきた。三宮駅の北側では今、市営地下鉄山手線の工事の最中で、信号一つおきぐらいにクレーン車がいて長い腕を動かしていた。三宮東地区に新しく建てられたレンガ造りの中央区総合庁舎と勤労会館・青少年会館、真っ白いサンパルがツンと澄まし顔で駅周辺の仲間入りをしている。

いつも見上げてばかりの六甲山を上から見下ろすと…

 ヘリ飛行の最後は山だ。諏訪山へ向けてヘリコプターはぐんぐんと高度を下げていく。深緑の山腹に淡い芝色の錨と市章が浮き出、次第にその紋様が大きくなっていった。高度1千m。六甲山を見下ろすというのは奇妙な具合だ。いつもは見上げるばかりの六甲山が、まるで丘のように見える。丘の上の稜線沿いに六甲山牧場、ゴルフ場、カンツリーハウス、十国展望台などが連らなっている。六甲山の裏側では、新神戸トンネルの北出口にある箕谷駐車場に収容された満車のマイカーが夏の日差しを受けてキラキラと光っていた。
1時間の空中散歩はアッという間だった。帰路についたヘリコプターからふり向くと、六甲山の稜線のむこうに魅力的な東神戸の市街地がやさしく広がっていた。
次号は、西神戸を中心に飛んでみよう。

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