114号表紙

No.114(昭和57年3月)

特集:

史跡散歩道 西神

史跡散歩 西神 寺の栄えた頃には、支院が14坊もあったといわれる多聞寺はさすがに立派なお寺です。私(西条遊児)の立っている石だたみの奥の社に重要文化財・阿弥陀如来座像がまつられています
 

多聞寺から 如意寺へ
如意寺とはおれのことかと"によじ"言い
タレント 西條 遊児

 このコースのスタートは平安時代の初めに開基されたと伝えられる多聞寺からです。重要文化財の阿弥蛇如来はお堂のすき間からしか拝めませんが、仁王門とか本堂がしっとりとしたなかなか感じのエエお寺です。
 その少し北にあるこじんまりとした多聞六神社へ登る階段は、いかにも時代劇が似合いそうな八十段の石段で、大きな団地が側にあるとは思えんような静かなたたずまいでした。
 実は私は多聞団地の出来はじめから丸五年間そこに住んでいましたが、あの頃はほんまに開発途上という感じで、十年ぶりに来てみますと落ち着いたエエ団地になってましてびっくりしました。当時、多聞寺があるという事は聞いていましたが、実際に来たんは今度が初めてで、燈台下暗しとはよう言うたもんです。
 得てしてそんなもんでして、地元にある物はあまり良お見えんと、遠くの物ばかり有難がる。まあそやから観光産業が成り立つんでしようが―。しかし、地元にこんなエエところがギョーサンあるんですから、やっぱり、この際、足元から見直していくんが賢明やないでしょうか。
 ではその足元をもう一寸、御案内しましょう。
 多聞団地から神陵台までは住宅街で、これを通り抜けて伊川谷高校まで、この辺りは車の往来が激しいので子供連れの時は気をつけてください。しかしここを過ぎますと、長坂から小寺橋までのどかな田園風景が続きます。ネコがのんびり田んぼを横切ってました。
 小寺橋から吹上げを通って永井谷までへの道は、このコースで一、二のエエ感じの道で、両側にズーッと孟宗竹の林が続きます。
 この道も時代劇の撮影にはもってこいのとこで、虚無僧姿の隠密と悪家老一味のチャンバラがよお似合うでしょう。
 付近では「夕ケノコ狩」もできるということですが、一寸時期が早かったのは残念でした。(毎年四月〜五月、問い合せ0789-74-1901、神戸市西農協伊川支所)
 永井谷で農家のおはあさんに如意寺への道を聞きますと「あゝにょーじかいな」と親切に教えてくれました。私はにょいじと思ったらにょーじと言われびっくりしたんですが、土地の古老が言うんですから昔はにょーじと言うてたんでしょう。その証拠に、途中の山道に室町時代に作られたといわれる仏像を彫った道標がありまして、そこは「右によじ」「左太山寺」と刻まれてます。但しこれは向かって読むと左右が逆になってまして、このまま行ったら反対方向に行ってしまうことになります。江戸時代以前は「向ってミギ、ヒダリ」という表現方法がなく、道標の仏像自体の左右を刻んだということで、これはちょっと注意!
 この永井谷から如意寺までの山道は値打ちがあります。スタートの時は街の中で、田んぼを通って竹林を抜けて、そして自然一杯の山道を登って如意寺へ近づく。ハイキングをしているという感じがだんだん盛り上ってきます。そして、その如意寺の三重塔が木の間からチラチラ見えてきた時には思わず『ワァー、きれいやなあ!』。以前、テレビの取材で来た時は車で来たもんですからそんなに思いませんでしたが、こうして歩いて来ますと又、有難さは格別で、昔の人は皆こうして来たからよけい信仰心が強なったんでしょう。ここは境内が広々としてまして、子供と一緒にのんびりとお弁当を食べられるから良いですよ。トイレのきれいなのも嬉しいですね。スタートから私の足で三時間。子供づれでも四時間位で大丈夫やと思います。

  • 多聞寺の門多聞寺の門。「ざりがにを捕りにはいったり、遊び道具を持ち込んではいけません」と書いた張り札がある。そうでない人はどうぞご遠慮なく
  • 多聞六神社多聞団地の一角にある多聞六神社
  • 多聞六神社の階段時代劇にぴったり似合いそうな多聞六神社の階段。80段もあるんです
  • 地図
  • 長坂の「日限り地蔵さん伊川谷高校を過ぎ、田んぼ道へ下る細い道の手前にある祠。長坂の「日限り地蔵さん」
  • 池をまたぐきれいな石橋池をまたぐきれいな石橋。冬のお寺の境内はしーんとしていいですよ
  • 途中の田園風景途中の田園風景。団地を過ぎてほんのわずかの所にこんな風景がひろがっています
  • 道の所々にある供養碑道の所々にある供養碑。私のようなものでもつい敬けんな気持になりました
  • 永井谷の民家の土塀永井谷の民家の土塀。こせこせとした世の中の動きなど、われ関せずの風情です
  • 見事な孟宗竹の林をぬけて永井谷へ見事な孟宗竹の林をぬけて永井谷へ
  • 室町道標「右によじ(如意寺)」「左太山寺」と刻んである室町道標。向かって読むと左右が逆です
  • 吹上の集落にある民家吹上の集落にある民家。人の住んでいる様子はなく、現在は物置にでも使っているようです
  • 「左如意寺」の道しるべ田んぼの中の分かれ道に立っている「左如意寺」の道しるべ。30cm足らずのかわいい石ですが、こっそり持ち帰ったりしたら必ず罰があたりますぞ!
  • 伊川谷疎水路跡伊川の上流から現在の神陵台団地の西側の台地まで、約6kmにわたって水をひいた伊川谷疎水路跡。今はもう廃溝になっていますが、伊川の本流より20mも高い台地へ水を運んだ昔の人の生活の知恵に感心しました

  • 地図
  • 近江寺の本堂近江寺の本堂。美しい色付きの絵馬が多く、訪れる人たちの目を楽しませてくれます
  • 池池の名前は知りません。如意寺への山越えの道もやっと終り近く、目の前に青い池が静かに眠ってました。心洗われる水の青さよ!
    供養碑如意寺境内に並んでいる供養碑
  • 如意寺の山門老朽化がひどく昭和54年に修理工事が行われた如意寺の山門
  • 如意寺文珠堂平地より二段も低いところに建っている如意寺文珠堂(重要文化財)。内部の厨子(ずし)には文珠菩薩像が安置されています

住吉神社から近江寺へ 海を想う山辺の道
兵庫高校教諭 中西 健治

  • 性海寺への道は静かな田んぼ道が続きます性海寺への道は静かな田んぼ道が続きます
  • 地図
  • 性海寺本堂毎年、成日の日に行われる追儺(ついな)式には人垣がこの性海寺本堂を埋めます
  • 住吉神社住吉神社は海からかなり離れているのに、祭神はみな航海神です。いかにも神戸らしいですね
  • 性海寺山門大きな杉の古木の前にある性海寺山門。近くにあつた山門をここへ移してきたのかも知れません
  • 森の中に古色をとどめる神殿森の中に古色をとどめる神殿
  • 性海寺から近江寺へのゆるやかな山越えの道性海寺から近江寺へのゆるやかな山越えの道。いわば間道の一つでしょうね
  • 草むらに立つ古い道標草むらに立つ古い道標
  • 近江寺の山門から本堂へ向かう途中の道で出会った農家のおばあさん近江寺の山門から本堂へ向かう途中の道で出会った農家のおばあさん
  • 近江寺境内の道しーんとした近江寺境内の道
  • 近江寺の裏山から押部谷へ抜ける尾根道近江寺の裏山から押部谷へ抜ける尾根道を行くと前方に雄岡(おっこ)山や新しい住宅群がひらけてきます
  • 神出神社から裸石神社へ下る長い石段神出神社から裸石神社へ下る長い石段。静かな道で人の気配など全く感じられません
  • 近江寺の本堂近江寺の本堂。ここでも2月11日に追儺式があり、桜の造花を持つた赤鬼・青鬼が踊ります

  • 地図
  • 梅雌岡山の上り道に赤、白、ピンクの梅がかんばしいにおいを漂わせていました。後ろの山が雄岡山で、その右手には西神地区が広がっています
  • アヒルとカモ金棒池近くの道路ぞいの原っぱで、アヒルとカモが楽しそうに遊んでいました
  • 雄岡山登山口雄岡山登山口。ただし雌岡山から歩いてきた場合の登山口で、五百蔵から登るとここに出てきます
  • 雄岡山の上り道雄岡山の上り道、ちょつと急な山道です。でも短かいのでたすかりました
  • 雄岡山の下り道雄岡山の下り道。上りにくらべると、とってもいい気分
  • 雄岡山の下り道雌岡山の下り道、すべりますので気をつけてください
  • 神出神社の由来をまず一読神出神社の由来をまず一読
  • 石造物が祭られている社珍しい石造物が祭られている社を見て・・・
  • 神出神社雌岡山の頂上にある神出神社です。あたりはシーンと静まり返つていました
  • 転法輪寺本堂ひなびた転法輪寺本堂のたたずまい。春近しというものの、山の木々もまだ静かに眠っているようでした

転法輪寺から太山寺へ
私のロケハン道中記
タレント 西條 笑児

―笑児さん"花笠道中"と言う歌、知ってはりますか?
 「ああ、美空ひばりのヒット曲」
―そうそう
 「これこれ石の地蔵さん、西へ行くのはこっちかへ、黙っていては判らない、ほっかり浮んだ白い雲……………。のんびりしたなかなかええ歌やがな」
―そんなゆっくり気分のハイキングに行きはりませんか?
 「行く、行く、行きまっせえ、どの辺り?」
―垂水区の転法輪寺から太山寺までの九キロ、二時間三〇分のコース
 「了解、了解。ほんならカワイ子ちゃんとビールと弁当、頼みまっせ」
―カワイ子ちゃん、ビール、弁当一切なし!!
 「きつーう。まあええわ、春の半日、のんびり"花笠道中"の気分を味わうてみよや。よっしゃ、よっしゃ」

 転法輪寺は大瀬康一
 ここはええお寺や、よしここは大瀬康一の隠密剣士や。本堂の前で忍者に取り巻かれた大瀬剣士、見事な太刀さはきでバッタバッタと忍者共を切り倒し、剣を鞘(さや)に納めたその横には宝篋印塔(ほうきょういんとう)、うしろには本堂と堂山。一流監督による一流映画でなく、TVマンによる、TV映画の雰囲気で続く。剣士はゆっくり庫裏へ。そこには見事な「男根石」、剣士はそこで一言、「おぬし仲々やるなァー」、次行こ。

 高塚山はマイトガイ
 ここからは須磨ニュータウン等がよく見えるが関係なし。左に目をやる、おお!!なんと広大な関拓地よ、そこには山もなく、木もない。え?四年後のユニバーシアードの会場や、研究学園都市の予定地?。よしここは小林旭と宍戸錠。ギターを抱え馬にまたがるマイトガイ、迎えるは何故かジープに乗ったエースのジョー。「お前とはやりたくなかったぜ」「来るべき時が来たのさ」「ゆくぜ!!」
 ええなぁ、こんなところで遊べたら、次行こか。

 徳川道は田村正和
 正和扮する眠狂四郎がこの道を例の何がお面白いねやと言う顔でゆっくり歩く、そうそう。前方からスリがすーっと近ずく。スリは誰にするかなァ、そやあの火野正平、よし。
 とーんと当って狂四郎の懐からサイフを抜き取る。直ぐに気が付く狂四郎「待て、待てと申すに!!」「待てるかい、ここは逃げるが卜クガワ道じゃい!!」、次行こか。

 たんぽ道は寅さん
 映画のはじめの夢から覚めた寅さん、辺りを見回すと一面のレンゲ畑。ふと横を見ると何処から来たのか一匹の小犬、シッポを振ってじゃれつく小犬をあやしながらこれも一言「さくらやおいちゃんのところへ帰ろう」、次行こか。
 富士山にではなく、大山寺の屋根に向かって歩く道行きの二人連れ。男が笑いかける、あ!大川橋蔵。ニッコリ答える美空ひばり。
 これこれ石の地蔵さん、西へ行くのは、こっちかえ…………………。

  • 地図
  • 転法輪寺の石段いつ頃にできた石段やろ。角は丸うなってるし、ボロボロ欠けてるし、さすが年季が人つてるなぁ…(転法輪寺の石段)
  • 徳川道山いうてもこの辺一帯は、徳川道と言いまして、ゆっくり歩けばたいしたことおまへん。六甲全縦経験者のわたしには楽すぎるぐらいで…
  • 中山のバス停から転法輪寺への道中山のバス停から転法輪寺への道
  • 高塚山からはユニバーシアードの会場予定地が見えます高塚山からはユニバーシアードの会場予定地が見えます
  • 鳥居この鳥居の手前に右へ折れる道があるけど、鳥居をくぐってまっすぐに行きはること
  • 本堂こんもりとした山をバックに、あっさりとした本堂がまたええなぁ。外観はあっさりでも、ご本尊の阿弥蛇如来さまは重要文化財でっせ
  • 太山寺への道太山寺への道。これが神戸かいなと思うような田んぼの中の一本道
  • 石戸神社ここまで来れば太山寺はもうすぐ。伊川谷町前開(ぜんかい)にある古めかしい石戸神社
  • 犬田んぼの中のこのむく犬、ものすごう人なつっこうてねぇ
  • 本堂本堂をあとにして、ああ しんどかった
  • 太山寺本堂まずは太山寺本堂に両手を合わせて。この本堂は国宝で、国宝建造物は神戸市内ではこれ1つしかないとか。このほか同寺には建築、絵画、彫刻、古文書など県下第1と言われるほどたくさん重要文化財があるそうです
  • ねこやなぎねこやなぎも、ちょっとでも目立つように背伸びをしています
  • 地蔵さん山を越えて村里へおりると、まず目についたのが地蔵さん。 これこれ石の地蔵さん……………
  • 菜の花菜の花が咲いていました
  • わたしなんかより、マイトガイやエースのジョーに登場願った方がよろしいようで
  • 太山寺の三重塔太山寺の三重塔。しっとりとしてええもんですな
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