94号表紙

No.94(昭和55年7月)

特集:

水の旅

水の旅 子どもたちは水が大好き。プールで泳いだあとシャワーを浴びる児童(神戸小学校で)
 

 明治三十三年(一九〇〇)年四月に、神戸の水道が日本で七番目の近代式水道として生まれて以来今年でちょうど八〇年になります。
 布引貯水池の完成によって、約七千戸に水道の水を送っていたのが、今では琵琶湖・淀川の水を加えて約五十万戸に給水しています。
 今回は、じゃ口をひねるだけで出るのが当然のように思われがちな水道の水が、どのような旅をして家庭にまで届けられるのかを見ることにしました。

地球上の水の九七%は海水

 氷雨、五月雨、梅雨、夕立、時雨、霧雨…。
 私達の周りには、雨に関する言葉も数多くあります。
 これらの雨水は、川へ流れ、海に集まり、そして蒸発して雲を作り、また雨水となって地上へ降ってくるという循環をくり返しています。
 無限にあるように思える水。しかし、地球上にある水の約九七%が海水なのです。残り約三%が淡水ですが、そのうち約八〇%は南極と北極地帯に氷となっています。
 つまり、私たちが利用できる水というのは、地球上の水のうちわずか〇・六%程度だけです。

琵琶湖の水位を示す鳥居川量水標

近畿の水がめ ─ 琵琶湖

 七月一日から「琵琶湖富栄養化防止条例」が施行されました。
 この条例は、滋賀県内だけに適用されるものですが、琵琶湖の水をきれいに守ることによる恩恵は非常に多くの人が受けることになります。
 琵琶湖から流れ出る水が淀川となって、大阪湾に流れ出るまでの間に、水道や工業用水の水源として有効に活用されているのです。
 ちなみに、琵琶湖の面積は約六八〇ku、いままでに神戸市民が一日に使った水の最高は約六九万立方メートル(貿易センタービルをますにして約四はい半)ですら、この日でも琵琶湖はおよそ一oだけしか影響を受けないのです。
 しかし、京阪神を中心とする水需要、将来とも増加すると考えられており。増大する水需要に対応するために琵琶湖総合開計画が進められています。
 この事業は、琵琶湖の利用水位をマナスー・五mまで下げることによって、新しく一日に三四五万立方メートル(毎秒四〇立方メートル)のを開発しよ うとするものです。
 この事業が完成すれば、神戸市へは阪神水道企業団を通じて、一日あたり二三万八千立方メートルの水が配分される予定です。

淀川

淀川の大道取水口。神戸の水の7割以上はこの淀川の水に頼っている

神戸の水の四分の三は淀川の水

 淀川を流れる水は、阪神水道企業団(神戸芦屋、西宮、尼崎の各市で構成る組合)によって、大道、淀川の二つの取水口でとり入れられ、猪名川、甲山などの浄水場で飲み水につくりあげられます。
 この水と上ケ原浄水場で飲み水につくりあげられた千苅の水が上ケ原浄水で一緒になって、神戸市民の家庭へ届けられています。
 神戸市が供給できる水は、一日七七・五万立方メートルありますが、干苅・布引・島原三貯水池や住吉川などの小河川の水、山陽新幹線等のトンネル湧水などを合わせも二十万立方メートルにしかなりません。
 残る五七・五万立方メートルの水は、阪神水道企業団から買っている琵琶湖・淀川の水なのです。

飲み水の製造工場 ─ 浄水場

 河川や貯水池の中には、土砂やプランクトンなどの不純物が含まれています。
 これらを取り除き、安全な飲み水を製造する工場といえるのが浄水場です。
 水をきれいにする方法には、川や貯水の水をそのままろ過池に入れ、一mほどの厚みのある砂の層の中をゆっくり水を通してきれいな水にする『暖速ろ過法』と、薬品を使って予め水中の土砂等を取り除いたうえで、六〇pどの砂の層の中を通してきれいな水にする『急速ろ過法』の二つの方法があります。
 緩速ろ過法の場合は約一九時間。急速ろ過法の場合は約二時間で不純物のないきれいな水なります。
 こうしてつくられたきれいな水に消毒の薬品(塩素)を入れて安全な飲み水をつくります。
 このように浄水場は、水道の心臓というべき重要な役割を果たす施設だといえます。

市街地へは二のトンネル

 上ケ原浄水場から送り出された水は、山陽新幹線より少し高い所で六甲山を横断する二本のンネル(高さ二・五mと一・八m)で垂水西端まで運ばれます。その途中には接合井いう所があり、トンネルを流れている水をり出せるようになっています。
 接合井で取り出された水は、近くの配水池で貯められ、市内を網の目のように走っている配水管・給水管を通って市民の家庭に届けられいます。

市内全域を一カ所でコントロール ─ 管理センター

 トンネルを流れる水の速度は一時間に三〜四q。人が歩くのとほぼ同じ速さです。そのため、神戸の東端から西端まで行くのに八〜十時間もかかります。  東の方から順次トンネルの水を取って配水池に貯めて行くと、西の方では水がたりなくなってしまう。そのため、配水池の水を管理している職員の間で、トンネルの水の取り合いがよくあったということです。
 しかし、今では。奥平野浄水場にある管理センターで毎日の水の使用量を予測し、電波で指令を出してトンネルに送る水の量、各配水池に貯める水の量などを調整しています。

いつでも必要な水を送り続ける

 二○○一(昭和七十六)年には一日にて一二八万立方メートルの水を使う日もあると考えられています。その段階であわてないよう、神戸市では琵琶湖総合発計画や兵庫県営広域水道事業等による水資源の確保に努力しています。
 また、全市にわたり三○〇m以上の高低差がある神戸の地形の特色から、海抜三〇mごとに配水区域をわけており、数多くの配水池をつくっています。その数は平野部の多い大阪市の十倍以上の九七カ所、高い所へ水を押し上げるためのポンプ場も約四倍の三九カ所もあります。
 これらの施設を日夜監視するだけでなく、無駄に水を流さないための漏水調査や安心して飲める水を守るための水質検査も常時行われています。

  • 淀川の大道取水口から取水した水は直径一・八メートルと一・三五メートルの二本の導水管によって猪名川浄水場(阪神水道企業団)へ送られてくる
  • 沈でん池にたまったドロは広い天日乾燥池で乾燥される。機械も電気も使わない省エネ式だが、そのかわり広い用地が必要だ
  • 猪名川浄水場の着水井。淀川からの水はまずここにつく
  • 沈でん池から急速ろか池を経てゴミや無機物を取り去ると、浄水に近いきれいな水になる。着水井からここへくるまでの所要時間は3〜4時間で、あとは塩素を入れると出来あがり
  • 広々とした薬品沈でん池。水はここでゆっくりとくつろぎながら、水中のゴミを底へ沈めていく

    猪名川浄水場で浄水になった水は、猪名川送水橋を通ってほとんどが神戸へ送られる
  • 千苅貯水池。神戸市の北のはし(北区道場町)で、三田、宝塚市にまたがっており市内では一番大きい

    千苅浄水場を経た浄水は武庫川の上流と国鉄福知山線をまたぐ水管橋を通って北神地区へ。千苅貯水池の水は地下の導水路から上ケ原浄水場へも送られる
  • 千苅貯水池での水質検査。水温やプランクトンなどが定期的に検査される

    上ケ原浄水場の着水井。貯水池からきた水はまずここに着き。きれいな水になるための準備をする
  • 水中のゴミを乾燥する汚泥処理施設
  • 浄水場のフロック形成池。水車を回すようなかっこうでゆっくりかきまぜながら水中のゴミをかたまりにする(千苅浄水場)
  • 関西学院大北側の台地にひろがる上ケ原浄水場の緩速ろか池

    沈でん池からきた水はこの緩速ろか池で砂とジャリの層を通りさらにきれいな水になる
  • 緩速ろか池から出てきた浄水池。このあと塩素処理をしてトンネルに送られ、猪名川浄水場からきたきれいな水と合流する
  • 地下の送水トンネル内部、手前は接合井。送水トンネルには何力所か接合井かあり、そこから各配水池へ送られる
  • 千苅浄水場からの水を送る北神地区の管路ずい道
  • 地下36メートルの布施畑ポンプ場へ下る卜ロッコ。延長約200メートルもある
  • 接合井の入口の点検
  • 布施畑ポンプ場。市内のすみずみに飲み水をとどけるため、水はポンプの力でいったん高い所にあるタンク(配水池)へ送られる
  • 水源の確保にも努力一山陽新幹線と新神戸トンネルの湧水。この水も近くの浄水場へ送られ、布引貯水池の水と一緒にコウベ・ウォーターになる
  • 住吉川上流の取水口
  • 管理センターにある水質試験所。安全な水をまもるために、市内の各施設から送られてくる水の各種の検査を毎日行っている(奥平野浄水場内)

    管理センターのテレメーター・テレコントロール施設
  • 神戸の水道の心臓部ともいえる管理センター。無線を使って市内の配水池やポンプ場などをコントロールする。左は容量1万トンの配水池(奥平野浄水場で)
  • 高台の民家の中にそそり立つマンモス配水池"西垂水高層配水池"。右側のはるか後方に高倉台団地が見える
  • 船舶給水船から給水を受ける神戸港内の船舶。神戸の水はきれいでおいしいうえ、赤道をこえても変質しないことから世界各国の船舶によく知られている
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