73号表紙

No.73(昭和53年10月)

特集:

西北神の秋

西北神の秋 軽やかに、かきの木の下を行くハイカー(北区山田町)

西北神の秋

軽やかに、かきの木の下を行くハイカー(北区山田町)


【左】始まった刈入れ作業(北区山田町)  【右】ぽこぽこと浮いたような秋の雲。カカシさんも満足そうな顔付です(垂水区神出町)

確かな味、本物のくつろぎ
観光農園


熟(う)れたいちじくをもぐ手に
甘いかおりがうつる(垂水区岩岡町)

 私は仕事の関係でいろんな所へ取材旅行に行きますが、行く先々で神戸から来たと言いますと、「ウワー、神戸ですか、良い所ですね。港があって山があって、異人館があって、お酒が美味しい……。」
 大抵の人はこない言うてくれます。
 そうですね、これはヨソの人だけでなしに神戸に住んでる人でも、神戸いうたらそんなとこで、東西に細長ごおて、エキゾチックでハイカラな街やと思もてます。
 確かにそらそうなんですけど、ただこれはあくまでも神戸の表の顔でして、ヒトさんの前に出ていく時にお化粧をして、チョット気取った感じの時の顔ですね。
 神戸にはもうひとつの顔があるんです。
 人間がホンマにくつろいでる時の顔、そこに居ると日頃の仕事の疲れや緊張から解放される場所、それが西神・北神といわれてるところなんです。
 東西に細長いと言うのは六甲山の南側だけの話で、実はその裏側の北神、そして垂水地区にどんどん拡がる西神、これらの面積が神戸市の全面積の九割を占めてるというのを御存知でしょうか。
 しかも西北神にはまだまだ自然がいっぱい残ってるということも知ってはるでしょうか。
 新開地から神戸電鉄に乗って、三田の方へでも三木の方へでも結構ですから、三十分程行ってそこで降りてもらいますと、目の前には田園風景がひろがっています。
 そしてちょっと足を伸ばしてもらいますと、神戸市が何年か前からやってます観光農園があるんです。
 観光農園−ー今でこそハハーンあれか、とすぐに分かりますけど、はじめの頃は何のことかピンときませんでした。
 農家の人が自分らが採る手間をはぶいて客に採らして……なんて言うてた人もありましたが、今やこれが各地で大流行。
 イチゴやブドウのシーズンともなりますと、押すな押すなの大繁盛です。
 そらそうでしょう。木や畑になってるのを自分で採ってそのまま食べるんですから、新鮮このうえなしですし、ニセモンばやりの今の世の中に、これほど確かなことはありませんもんね。
 今頃やったら、そうですね、ミカン狩り。クリ拾い、ナシは少し遅いですが、イモ掘りも楽しいでしょう。そうそう枦谷の友清という所では力キ狩りもやってます。
 勿論そういう場所は、いわゆる都会人から考えますと、ヘンピなとこにあって、行くのに不便やという声もありますが、そやからこそ自然があって気分転換になって楽しいんやないでしょうか。
 汗をかいてお腹をすかして農園へ着いて、それから食べるクダモンの味。
 これは又何ともいえませんな。
 私は八年前から鈴蘭台に住んでまして、三年前からは緑ケ丘で貸農園を借りてます。
 北神に住んで西神で畑を作って、まさにくつろぎの場所で本物のくつろぎの時間をすごしています。(ちょっとオーバーかな)
 畑と言いましても猫のヒタイ位の広さですが、夏はナスビやキュウリ、ピーマン、トマトができますし、秋にはサツマイモ、そしてこれからはダイコン、ハクサイ、ホーレン草にエトセトラ。
 農薬や化学肥料は使わんことにして堆肥だけでやってるもんですから、大根の葉っぱやナスビは虫喰いの跡だらけですけど、『虫が喰うと言うことはすなわち安全な証拠や。虫も喰わん様なものを人間が食えるかい』と自分勝手な解釈をつけて食べとります
 自分の子供がヨソの子供より可愛いんと同んなじで、自分が汗水流して作った野菜は、たとえ姿形は不細工でもなんとも言えん、工工味です。
 住む場所はそう簡単には替えられませんけど、余暇をすごす場所はみなさんの気持次第でどないでもなります。
 秋の青空が、赤い柿が、そして黄金色の稲穂が…、さあ、西神・北神へ出掛けてみましょう。

タレント 西條 遊児



  • 古いなし園の向こうに、稲畑の中に新しいなし園が育っている(垂水区神出町)

  • 若い女性は果物がお好き
  • コスモスとわら葺農家(北区淡河町)
  • 石峯寺三重の塔(北区淡河町)
  • 秋の釣池風景(北区八多町)
  • 鳥居さんと火の見やぐらと、孫とおばあさん(北区山田町)
  • 群生するしいたけ(北区八多町)
  • しいたけの菌を培養
  • 大きなおいもに傷がつかないように!慎重に、手にいっぱい力をこめて、いも掘りに熱中する少女(垂水区神出町)

四季を通じてたのしめます


 日一日、ハダ寒く感じるようになり、さわやかな秋晴れがいっぱいに広がると、秋の味覚もいよいよ本番。十月上旬に垂水区枦谷町の観光農園で、"力キ狩り"が始まったのに続いて、中旬ごろから"ミカン狩り"(垂水区伊川谷町)"マツタケ狩り"(北区淡河町)が相次いでオープンしました。ごみごみした都会からぬけ出し、新鮮な空気とオゾンがいっぱいの郊外で四季折々の味覚と静かな自然を満喫するのは、子どもだけにかぎらず、またとないレクリエーションでありレジャーといえましょう。
 神戸市内の観光農業は、身近な所で、ほとんど四季を通じて楽しめるのが一つの特徴です。種類からいいますと、北神地区では、イチゴ、シイタケ、マツタケ、それにテント村や魚のすくいどりのできる柏尾谷リバーパークもあります。また西神地区では、イチゴ、タケノコ、ブドウ、ナシ、イモ、クリ、カキ、ミカンと種類はさらに豊富です。このほか、余暇を利用して家族ぐるみで花や野菜づくりをする貸農園も両地区にあります。
 春の訪れとともに、四月から五〜六月にかけてイチゴ狩り、タケノコ掘リが始まり、七月になると、ブドウ狩りに始まってナシ狩り、イモ掘リのシーズンです。そして九月の声を聞くと、いよいよクリ捨いが始まり、追いかけるように力キ狩り、ミカン狩り、マツタケ狩りと続きます。シイタケ狩りは年中楽しめます。
 料金は、たとえばカキ狩りは大人六〇〇円、小人四〇〇円、ミカン狩りは大人五五〇円、小人四〇〇円で食べ放題ですが、クリ捨いなどは大人、小人とも六〇〇円(おみやげ六〇〇グラム付)と、大人でおよそ五〜六〇〇円というところ。入園料がもう少し安くならないものか、とお客の方からも時々声が聞かれ、園側でもいろいろ検討はしているようだが、おいしい果物が食べられるようになるには早いもので三年、普通で五年から七年ぐらいかかるので農園がなかなかふやせないのと、一つには、いわゆる食べ捨てのロスが非常に多いのだそうです。ひと口かじっただけですっぱいとか、あまり甘くないとかでポイと捨てる。未成熟のものまでもいで、すぐに捨てられる残がいが毎日相当量あり、これがコスト高につながるということです。丹精こめて作ったものを大切にし、おいしそうに熟(う)れたものから食べていくマナーというかコツをおぼえるのも、自然とのふれあいの中では大事なことでしょう。
 また観光農園へ出かける際のネックの一つに足の問題があります。神戸電鉄以外はバスを利用することになり、とくに西神地区は国鉄明石駅から神戸市バスか神姫バスを利用するので、マイカーか団体で行く場合はとにかく、ついおっくうになりがちです。しかしバスに乗ってしまえば、バス停から歩いてもせいぜい二キロ程度の道のりで、標示もあります。
 料金や足の便その他、観光農業に関することは神戸市観光園芸協会(神戸市西農協内、電話○七八九(七四)二八〇〇)へお聞き下さい。

  • かき園の幼稚園児
  • 鈴なりのかき(垂水区枦谷町)
  • 天高く、枝の先っぽにまで丸い実をつけたくり(垂水区押部谷町)
  • ぽっくりと口をあけたくり(垂水区押部谷町)

    くり拾いをたのしむ家族連れ
  • 保護色のように、なかなか見定めにくいまつたけ。毎年同じ場所にかたまって生えるのが特徴(北区淡河町)

    やさしく手にすると、独特のかおりがつんとくる
  • みかん園の手入れ(垂水区伊川谷町)
  • 深まる秋(北区山田町)
  • さわやかに広がる秋の牧場(垂水区枦谷町、寺谷ファームズ)

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