71号表紙

No.71(昭和53年8月)

特集:

山麓リボンの道(上)

山麓 リボンの道(上)閑散な小道(御影山手1丁目)

山麓リボンの道(上)

 歩く。気軽に歩く。誰でも歩く-―。東西に長くのびる六甲山系の南麓を横に結ぶ「山麓リボンの道」は、そんな神戸らしい、やさしく美しい道です。
 楽しい散策を通して、路傍にたたずむ文化的遺産、めずらしいまち並み、自然などに親しみながら、わたしたちの住むまちを一度見渡してみて下さい。きっと新しい視角が生まれ、神戸のまちの再発見につながることでしょう。

写真 閑静な小道(御影山手1丁目)

本山のみち
のしかかる保久良の緑

 出発点の稲荷神社の北側一帯は、ここ何年かの間に見違えるような住宅街に一変してしまった。この神社から甲南女子大前を通って真直ぐ北へ上り、風吹岩、本庄橋を経て六甲山頂から有馬へ出る道が「魚屋道」(ととやみち)と呼ばれ、むかし深江や青木の漁師がとれとれの魚をかついで往来したという。今は山際ぎりぎりまで住宅が建ち並び、白い舗装路は夏の日ざしの照り返しでまぶしい。
 神戸女子薬大南側の起伏の多い住宅街をぬけ、小さい川を渡ると、この地区独特の迷路のような細道がくねる。しかし案外迷わないもので、およその勘で西へゆっくり進むと、やさしいナゾ解きのように道の方がほぐれてくれる感じである。
 古めかしい蔵のある家の隣が赤いカワラの新築の家であったり、塀の途中に大きなクスノキが割り込んでいたり、モザイク模様の石塀もある。一軒ごとに違う生垣など、住む人のにおいのようなものが感じられて自然に表情がほころんでくる。家の屋根越しに保久良の緑がのしかかるように見え、やがてそれを過ぎると、阪急岡本駅北の南北線に出、少し北へ上ると八幡神社だ。
 神社の西の坂道を北へ回り込むような感じで一つ目の筋を西へ。これからが岡本の山の手住宅街で見晴らしは抜群。なんとなく気分までゆったりとしてくる。いったん甲南大グラウンドの北側に出て、広い道を真直ぐ進むと住吉川に出る。


  • 落着いた色合いのモザイクの石塀
    (本山北町5丁目)

  • 道にそってくねる石垣。
    その上から赤い花が愛敬をふりまく(本山北町5丁目)

  • 大きなクスノキをはさんで石垣が
    左右にわかれた蔵のある家(本山北町4丁目)

  • 神戸女子薬大下の新しい住宅街を抜けると、
    かれんなコスモスが道にせり出すように咲いていた
    (本山北町4丁目)

  • 八幡神社の鳥居

  • 涼しい緑陰の道(岡本5丁目)

  • 川のある坂道。その先にひろがる景観…(岡本6丁目)

  • 岡本の高台から見おろす市街地と大阪湾

六甲のやますそ
心なごませる水路の道

 白鶴美術館から水路のある道を南へ、そして大きな屋敷のやや赤味を帯びたグリー厶色の高いコンクリート塀にそって西へ折れる。このあたり住吉・御影山手の水路は神戸では珍しく、きれいな住吉川の水が音を立てて走っている。水の流れというのは不思議と気持をなごませるもので、この水路を見るためにわざわざこの道を通って六甲へ登るハイカーもいるそうだ。
 鴨子ヶ原への道は若宮神社を南へ下り、マンションの前のやや広い道を西へ、天神川橋から千鳥橋を越えるとちょっとした坂になる。木に囲まれた甲南病院前でひと息入れ、北へ折れてしばらくすると、左の舗装道ぞいに外人住宅が見える。赤、白に彩色された建物と前庭の緑のとり合わせがなかなか見事でつい足を止めてしまう。鴨子ヶ原の住宅街を抜け、まだ新しい大仏橋を通り過ぎると山を切り開いた尾根道が外大前へと続く。
 一方、南のコースでは阪急御影駅北の深田池から御影北小へ抜ける小路が短いながら実に感じがよい。竹垣あり、古い石積みあり、しかも植込みの木が道を覆っていて日中でも涼しい。この真北にある外人住宅とは全く対照的な純日本的な小道である。
 六甲登山口の少し北にある六甲会館へは、外大前から一王山十善寺を経て神大農学部前を抜ける北コースと、外大前から登山口へ至る広い道の一つ北側を歩く二つのコースがある。いずれにしろ「六甲のやますそ」の道は、比較的坂が多くコースも長いので、各自の体力、好みに応じて散歩コースを組まれるとよい。


  • 松の木の間に並ぶ外人住宅。赤と白に彩色された建物と、緑したたる前栽(せんざい)と石の燈籠(とうろう)がしっくりとけ合っている(東灘区鴨子ヶ原3丁目)

  • 傾斜のきつい鴨子ヶ原への道(御影山手1丁目)

  • 分かれ道に立つ「左一王山」の道標(一王山町)

  • 涼風が吹きぬける竹垣の小道(御影山手1丁目)

  • 酒蔵を思わせるような古いたたずまいの屋敷と石垣の道
    (灘区大土平町1丁目)

  • 東灘区天神山団地から御影の市街地を望む

  • 子どもたちでにぎわう深田池

  • 墓地の道(御形山手1丁目)

摩耶山のふもと
カラフルな神戸のまち

 今は人の住んでいる気配のない六甲会館はなかなか立派な洋館で、このままほっておくのはおしい気がする。この建物の北側を通り、表のバス道から一歩裏へ入ると、ここの点景もまたおもしろい。  赤茶の洋館と隣りあって、酒蔵を思わせるような黒板、白壁の屋敷がある。そのむかし、この上流の水車新田一帯に灘の酒米をつく水車がたくさんあったそうだが、そんな往時をふとしのばせるような風情である。  屋敷のすぐ裏を流れている都賀川上流の六甲川を渡り、六甲学院のある伯母野山へ上らずに一直線の道を西へとる。やがて護国神社の北塀を過ぎ、再び川を渡って一つ目の筋を北へ。そして美野丘小の南の道を西に折れると、再び摩耶ケーブル高尾駅までの一本道が続く。すりばち式にゆるやかな下りと上りの匂配になった道で、上りきったあたりの南の坂道が有名な高尾の桜並木である。  ケーブルの駅から神戸高校の校舎の北側を回って同校テニスコートの南側を西へ。その突きあたりの丸いカワラののった石塀の坂道を上ると、青谷へのゆるやかなカーブの小道になる。  この一帯も眺望がすばらしい。別にここだけに限ったことではないが、こうして山麓の道を歩きながらまちを見渡して感じるのは、神戸のまちが年々カラフルになっていくように思うことである。屋根の色ガワラも随分多くなったし、港の赤いクレーンもここから見るといかつさは全くなく、やっぱり神戸だなと、ホッとしたような気分になる。


  • 高尾の桜並木

  • 背のびして、セミの姿をさがす幼児(篠原北町2丁目)

    六甲川の清流。

  • すりばち状に起伏した高尾の道

  • 異入館風の煙突の向こうに、神戸らしい景観がひろがる。みなとの赤いクレーンや船、色とりどりの家の屋根が西日に光っていた(灘区城の下通2丁目)

  • 深い木立に囲まれた洋風の建物(城の下通2丁目)

  • 神戸高校の"地獄坂"

布引のみち
歌碑も整備された布引の滝

 青谷の「まやばし」からハイキングコースを少し上って、真下にまちを見おろしてみた。ここから見る家々の屋根も色とりどりで、逆に黒い屋根を一、二、三と数えてみたら、確か目のとどく範囲で三、四軒ぐらいしかなかった。
 橋から馬頭観音のある妙光院の前を通って二つ目の筋を西へ。まもなく南側に門柱に番号のある洋館が四、五軒並んでいる。松陰女子短大寮の角を南へ下り、神戸労災病院の北の塀にそって西へ折れる。この道の北側にあるマンションは一軒残らず窓辺にハチ植が置いてあって見るからに楽しい。
 春日野墓地南側の小路に入る。ここから熊内の南北幹線道路に出るまでくねくねと折れ曲った道をたどることになる。同じ細道でも東灘の岡本周辺とまた趣は違う。あちらは比較的横の線がしっかりしているのに対し、ここは縦線も横線も同じようにくねっている。「道せまし、通り抜け困難」と石塀に掲示してある所もあった。
 熊内へ入るととたんに道が広くなる。新幹線をまたぎ、布引中学の横を通って熊内八幡への急な階段を上り布引方面へ下ると、塩原学園への舗装路をたどればやがて徳光院、布引の滝だ。
 散策コースとしての布引の滝は、最近は歌碑も整備され、リボンの道の中ではやはり格が数段違うといった感じである。ここへ来るたびに、なぜもっと多くの市民がここを訪れないのだろうと不思議にさえ思える。

  • 青谷川をまたぐ「まやばし」
    (青谷町4丁目)
  • ゆるやかにカーブした青谷への小道
    (城の下通3丁目)
  • 急な石段の上に立つと、見事な眺望がひらける
    (城の下通2丁目)
  • ここから青谷ハイキングコースを経て摩耶山へ
  • 独特のまがりくねった布引への道。明るくユーモラスな三角屋根の家が見る目をたのしませてくれる(葺合区中尾町7丁目)
  • 神戸労災病院前の大クスノキ(籠池通4丁目)
  • 門柱に番号のついた洋館(神仙寺通2丁目)
  • 山際の曲りくねった道(中尾町7丁目)
  • 閑散な徳光院境内
  • 川べりに立つ古い木造の洋館
  • 石段の道(熊内町9丁目)
  • 石段の道(熊内町9丁目)

  • 布引から望む市街地の景観

イラスト地図 丘あつし


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