54号表紙

No.54(昭和52年1月)

特集:

神戸の文化財(上)

神戸の文化財(上) 重要文化財櫻山鵲蒔絵硯箱(蓋裏、4ページ参照)
 
  • 国宝説文木部残巻(縦25.6a、長242.4a)
     この書は唐鈔本説文木部の残巻で6紙に書かれ、全部で93行ある。本紙を上下2段に分け、各段を3分して墨界中に篆文、音釈を書いている。篆文は晤臺銘に似た所があり、楷書は写経体と異り儒者の風に近い。米友仁の審定は南宗の時であって、宗代の諸印とともに古くから宝物とされたことを証している。
  • 国宝宋版毛詩正義金澤文庫本 17冊(縦26.8a、横19.4a)
     本書は40巻中巻1より7までを欠き、現存は33巻である。紹興9年(1139)9月15日、紹興府において淳化3年(992)壬辰4月の藍本を再刻したもの。各冊に金澤文庫もしくは香山常住の墨印がある。
  • 国宝版本史記集解(宋刊本) 11冊
     本文の中で宋真宗の諱(いみな)を欠画していないので、この本は太宗真宗間の版本であるとされている。同本の残巻が中国にあるが、わが国においては史記はもちろん宗版本中の最旧の版本であって、これによって流布本の誤まりを正すことが多く貴重な典籍である。
  • 重要文化財櫻山鵲蒔絵硯箱(縦21.8a、横20.9a)
     この硯箱は幸阿彌家5代宗伯の作とされている。幸阿彌家の作品で確証のあるものはほとんど見当らぬところから、宗伯の作風を知り、あわせて室町時代末期の蒔絵様式を知る上で貴重な遺品。箱の表には青貝と錫の切金をまじえて桜に山鵲(やまかささぎ。喜びを知らせる鳥といわれる)の図が描かれ、蓋裏懸子(かけご)には若松と梅の蒔絵が施されている。すぐれた意匠、緻密な構成、鮮麗な表現は注目に値する。
  • 重要文化財染付牡丹唐草文大皿(径44.5a、高7.5a)
     円形鍔縁(つばぶち)をつけた大皿で、白色の磁胎に染付にて牡丹唐草文を描いている。牡丹唐草文は典型的な中国元時代末の特色をあらわしており、花は大きく、葉先が鋭くとがっている。焼上がりも非常によく、コバルトは美しく発色している。数多い元時代の染付の大皿のうちでも、特にすぐれた作品といえる。

多い神戸の指定文化財

神戸市内指定文化財件数一覧表
( )は個人管理
文化財の分類 国特別指定 国指定 県指定 合計件数
有形文化財        
建造物 国宝 1 重要文化財 15
(1)
県指定重要
有形文化財
15 31
(1)
絵画 国宝 0 重要文化財 46
(13)
県指定重要
有形文化財
0 46
(13)
彫刻 国宝 0 重要文化財 19 県指定重要
有形文化財
3 22
工芸品 国宝 0 重要文化財 20
(8)
県指定重要
有形文化財
5 25
(8)
書跡 国宝 6
(3)
重要文化財 23
(11)
県指定重要
有形文化財
1 30
(14)
考古資料 国宝 1 重要文化財 13 県指定重要
有形文化財
0 14
無形文化財 芸能     重要無形
文化財
0 県指定重要
無形文化財
3 3
民俗文化財 有形のもの
(物件)
    重要有形
民俗文化財
2 県指定重要有形民俗文化財 2 4
記念物 遺跡 特別史跡 0 史跡 4 県指定史跡 1 5
名勝地 特別名勝 0 名勝 0 県指定名勝 1 1
動植物、
地質鉱物
特別天然記念物 0 天然記念物 1 県指定天然記念物 4 5
合計件数 8(3) 143(33) 35 186
(36)

国宝も含め一八六件

 神戸市内には有形・無形の文化財が多数点在している。
 神戸といえば、明治の開港によって急速に発展したみなと町で歴史は浅いとよくいわれるが、それ以前に歴史がなかったわけでは決してない。現在、市内にある指定文化財は国特別指定の国宝八件、国指定の重要文化財など百四十三件、県指定の重要有形・無形文化財など三十五件の合計百八十六件で、このうち個人管理分は三十六件ありほとんどが絵画、工芸品、書跡である。
 神戸に文化財が多いのは、古くから大和、山城(やましろ)という王朝の地の周辺にあって、中央の文化の影響を非常にストレートに受けていたこと。また、昔から交通の最要路にあって人の往来が激しかったことなどから、自然と神戸の文化的風土をはぐくんだといわれている。
 これらの貴重な文化財は、郷土の古い文化や歴史を知るうえで欠かせないだけでなく、将来の文化の向上、発展の基礎となるものである。このため、単なる保護・保存にとどまらず、文化財に対する理解をいっそう深め、現在の生活の中に積極的に取り込んでいくことが大切である。同時に、われわれ自身が生み出す新しい文化を後世の市民に引き継いでいくことも、文化財保存の大きなねらいといえるようだ。
 そこで、市民の目にふれる機会の少ない個人管理の指定文化財を上下にわけて特集してみた。

文化的活用に努力
文化財の公開

 現行の文化財保護法によると、「文化財の所有者その他の関係者は、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等文化的活用に努めなければならない」と規定し、できるだけ一般への公開を図っている。
 これら文化財のうち、建造物や史跡、名勝、天然記念物など野外にあるものは、いつでも鑑賞できるので、特別な場合、たとえば建造物の内部や庭園などを一般に公開する場合以外、公開について特別な問題はない。重要有形民俗文化財についても所有者または管理者以外のものが広く一般の観覧に供しようとする時は、文化庁長官に届出が必要だが、それ以外は特別の制限などはない。
 したがって、文化財の公開で特に問題となるのは、美術工芸品などを展覧会場などで公開する場合で、それをできるだけ多くの人に見せることと、それによって生ずる損傷の両面を配慮しなければならない。
 国宝、重要文化財の公開は所有者が行なうのが原則だが、美術工芸品の場合はそれが秘蔵または死蔵されて、一般に公開されない場合があるので、文化財保護法では平素接触の機会の少ない国宝、重要文化財に国民が接する機会を与えるため、所有者に期限を切って出品を勧告するなどして、それを国立博物館などで公開する制度を設けている。
 この制度により、文化庁長官が所有者から出品させた国宝、重要文化財は現在、東京、京都、奈良の各国立博物館、鎌倉市立鎌倉国宝館、大阪市立美術館の五施設で公開されている。
 このように、文化庁では国宝、重要文化財の一般への公開を図っているが、これらの美術工芸品はかけがえのない貴重な文化財であるため、無制限に公開することには問題がある。そこで所有者以外のものが公開しようとする時は、文化庁長官の許可が必要としているほか、展覧会場の防災施設や陳列の方法などについて随時指導も行なうことにしている。そして特に損傷の危険のあるものについては移動を禁止し、あるいは公開の日数や回数を制限するなど、厳重な注意をはらっている。

文化財保護行政を推進
文化財保護法令のあゆみ

 ところで、わが国の文化財保護法令は戦前にもいろいろな形で存在していた。古くは明治四年の「古器旧物保存方」という太政官布告から、明治三十年に制定された初の文化財保護立法「古寺保存法」、さらに大正八年の「史蹟名勝天然記念物保存法」。昭和に入ると四年に制定された「国宝保存法」。八年の「重要美術品等ノ保存二関スル法律」などがあって、すでに第二次世界大戦以前にも、建造物、美術工芸品ならびに史跡、名勝、天然記念物については、文化財保護法令の体系は一応整備されていたといえる。
 しかし、第二次世界大戦中、ならびに戦後の社会的混乱により文化財は保存上最大の危機に直面、とくに昭和二十四年の法隆寺金堂壁面の損焼という不幸な事件を直接の契機として、「文化財保護法」が昭和二十五年五月、議員立法として制定され、わが国の文化財保護制度は画期的に充実された。
 同法は、保護対象として、従来の建造物および美術工芸品(有形文化財)、ならびに史跡、名勝、天然記念物のほかに、新たに埋蔵文化財と無形文化財を加えたほか、指定制度として有形文化財に重要文化財の指定制度を創設。さらに重要文化財ならびに史跡、名勝、天然記念物のうち特に重要なものを国宝、特別史跡、特別名勝、特別天然記念物に指定する二段階指定の制度を創設し、重点的保護を図ることになった。

文化庁の設置

 その後、昭和二十九年の一部改正により、無形文化財についても重要文化財の指定、ならびにその保持者の認定制度を創設。さらに有形の民俗資料について重要民俗資料の指定制度を創設した。  しかしそれからの二十一年の間は、昭和四十三年に文部省の外局として文化庁が設置されて文化財保護行政を担当するようになったほかは、同法の実質的な改正は行なわれないまま推移してきたが、近年の各種の開発事業の急速な進展や社会経済情勢の変化に伴う生活様式の変ぼうなどにより、次第に文化財保護に関して新たな困難な問題が提起されるようになり、昭和五十年、さらに同法の一部改正が行なわれ、十月から施行された。  主な改正点は、まず、埋蔵文化財に関する制度を整備し、とくに国、地方公共団体等と文化庁長官との協議制を新設したほか、重要な遺跡発見の際の文化庁長官による発掘停止命令を新設するなど、同長官の権限を大幅に強化した。

各種の制度新設

 また、従来の民俗資料の名称を民俗文化財に改め、無形の民俗文化財について重要無形民俗文化財の指定制度を創設。さらに宿場や城下町などの伝統的建造物群保存地区の制度を創設し、これら周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している建造物群で価値の高いところを新たに文化財として定義づけることなどが決められた。  そのほか、書画・仏像の修理技術。建造物の屋根葺技能など、文化財の保存技術の保護制度を新設。また、地方公共団体における文化財保護行政体制を整備するため、従来の文化財専門委員制度に代え、都道府県の教育委員会に文化財保護審議会を置くことができることとされるなど、この改正により文化財保護行政をいっそう推進されることになった。

資料提供 文化庁

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