50号表紙

No.50(昭和51年8月)

特集:

こうべの詩歌

あかつきや白帆すぎ行くかやの外 子規
 

布引の滝へ通じる渓流ぞいの散策路

白玉のしきりにしぶくー布引の滝

わが世をば今日か明日かと待つかひの涙の滝といづれ高けむ
佐原 行平

ぬきみだる人こそあるらし白玉の間なくも散るか袖のせばきに
佐原 業平

いかなれや雲間も見えぬ五月雨にさらし添ふらむ布引の滝
藤原 俊成

音にのみ聞き来し滝も今日ぞ見るありて浮き世の袖や劣ると
藤原 定家

布引の滝の白糸うちはへてたれ山風にかけてほすらむ
後鳥羽院

津の国の生田の川の水上は今こそ見つれ布引の滝
藤原 基隆

水しぶきが踊る布引の渓流。この水がやがて布引の滝へ流れ落ちる

今も訪れる人の絶えない布引の滝

東灘区住吉町にある求女塚の碑

水べに咲いた恋の花ー生田川

住みわびぬわが身投げてむ津の国の
生田の川は名のみなりけり

故事をとどめる若菜の阯

すずしろのうまみー若菜の里

旅人の道さまたげに摘むものは生田の小野の若菜なりけり
堀川百首・藤原師輔

須磨浦公園にある芭蕉の句碑

この海を見たよろこびーー芭蕉は語る

行きくれて木の下かげを宿とせば花
や今宵のあるじならまし

わくらばに(タマタマ)問ふ人あらば須磨の浦に藻塩たれつつ(涙ヲ流シナガラ)わぶ(心細ク暮ラシテイル)と答へよ

淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜寝ざめぬ須磨の関守

須磨寺やふかぬ笛聞く木下やみ

たつむり角ふりわけよ須磨明石

たそがれの須磨の海。鉢伏山から淡路島をのぞむ

須磨ですごした二人ー子規と放哉

ことづてよ須磨の浦わに昼寝すと

月を思ひ人を思ひて須磨にあり

こんなよい月をひとりで見て寝る

  • ハトの飛びかう須磨寺境内
  • 子規と虚子の句が仲よく並んだ句碑
  • 須磨寺にある放哉の句碑

あまずっぱい味−やまももの白川

玉ぼこの道行く人にことづててやまもも送れ白川の人

  • ひっそりと静まりかえった白川の里
  • ひまわりの咲く白川の農家
  • 有名な"石抱きかや"のある白川の里

いでそよ人を
ーー有馬あれこれ

しなが鳥猪名野を来れば有馬山夕霧立ちぬ宿はなくして(万葉集・巻七)

有馬山ゐなの笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする(後拾遺集・大弐三位)

山松のときはのかげに白鳩のくくといふ声清き朝かな
安藤 正次

  • 有馬温泉郷から三田方面をのぞむ
  • セミしぐれが涼を呼ぶ有馬・瑞宝寺公園
  • 稲荷神社に立っ歌碑

田園地帯の中にぽつんとある"野中の清水"

人と水とのつながり
ーー野中の清水

いにしへの野中の清水ぬるけれどもとの心は知る人ぞくむ

昔見し野中の清水かはらねばわが影をもや思ひいづらむ

生田神社にある一草の句碑

生き生く
ーー生田の森

秋風にまたこそとはめ津の国の生田の森の春のあけぼの
順徳天皇

神垣や又とをらせぬ梅の花
一草

ほのかなるつちの香たちて青葉なす生田の森にあめ晴れわたる
白魚

敏馬神社境内の人麿の歌碑

玉もかる
ーー海のゆきき

玉もかる敏馬をすぎて夏草の野島の崎に舟近づきぬ
柿本 人麿

息游軒遺趾のいしぶみ

山里の月はすむ
ーー熊沢蕃山閑居の地

見る人の心からこそ山里のうき世の外の月はすむらん

華麗な太山寺本堂

太山寺の三重塔

本文執筆・紫藤誠也氏(県立神戸高校教諭)

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