22号表紙

No.22(昭和48年10月)

特集:

新太陽と緑の道

新太陽と緑の道を行く 極楽茶屋付近

いつでも豊かな神戸の自然に

―新太陽と緑の道―(六甲越えコース)

 自然歩道"太陽と緑の道"は、だれもが、いつでも、自分の都合に合わせて歩き、豊かな神戸の自然にふれ、地元の人々との交流ができるよう念願して計画されたものである。
 昨年十月に開通した道場から須磨浦に至る九二キロの既設のコースと市街地とを結ぶ三七キロの六甲越えコースが完成する。
 新コースは、白鶴美術館を起点とし、石切道―凌雲台―紅葉谷 有馬温泉―落葉山―二郎 住吉道―最高峰―魚屋道 と二郎―鎌倉峡―道場の回遊コースである。

新太陽と緑の道を行く 極楽茶屋付近

●石切道・紅葉谷コース

白鶴美術館(2キロ30分)―石切道入口(3キロ2時間)―凌雲台(1キロ15分)―極楽茶屋(4キロ1.5時間)―ロープウェイ有馬駅

 住吉川をさかのぼっていくと、まず対岸に木製の樋が見られ、さらに進むと、水車小屋の名残りをとどめる木造の建物や石垣がある。最盛期にはこの住吉川ぞいに五○もの水車小屋があったといわれ、その名残りである。水車は、古くは菜種油の油絞りに、その後は酒造りの精米に、さらに幕末から明治中頃まではそうめん作りに使われた。この道は、酒米や御影石を満載したごろた車(牛車)が往来したところから"ごろた道"ともいわれている。
 住吉川を離れて荒神山に登る。高層マンションや、しょうしゃな住宅が並び、神戸の街を最初に展望できるところである。荒神山は、有名な御影石の石切場であった。ここから大阪城をはじめ近畿の城の石垣に使う石が沢山切り出された。
 石切道は、頂上近くの石切場から御影石を運び出すために造られた道である。凌雲台まで標高差六〇〇メートルで、初めは山深い感じの雑木林を行くが、やがて尾根筋に出、右に五助谷、左に岩登りの練習場として名高い大月地獄を見ながら登る。眺望が良く、明るい感じの道だ。石切場を過ぎると道は細く、険しくなり、やがて尾根。そして熊笹や潅木の茂る道を東へ登っていくと、みよし観音の少し東に出、やがて凌雲台である。ここからの大阪湾の眺めは素晴しい。またここは、六甲山のレクリエーション施設が集中している。
 尾根筋を歩いた石切道から有馬に下るときは、谷筋の紅葉谷を下る。紅葉谷は、繁った樹林と小鳥と渓流の道である。カラリと明るい表六甲の道とは対照的に静寂そのものだ。その名の通り、十一月の紅葉の頃は素晴しい。左右に見える深い渓谷には、「有馬四十八滝」で有名な数多くの滝がある。きれいな谷川を左右しながらおりていくと、大谷川につき当り、飯ごう水炊をする若い人の声ではなやぐ。やがて六甲有馬ロープウェイの有馬駅に着いた。

写真
数々の歴史を秘めた水車小屋跡
  • 写真酒の精米に使われたと思われる石うす
  • 写真石だたみの細い道がつづく紅葉谷
  • 写真殉職地淡路沖を見おろすみよし(美代子)観音とコスモス(高山植物園付近)
  • 写真
  • 写真
  • 写真石切道と住吉道の起点五助えん堤
  • 写真紅葉の瑞宝寺公園(有馬)
  • 写真緑深き谷を静かに渡るロープウェー(有馬紅葉谷)
  • 写真一人山を楽しむもまたよし(紅葉谷)
  • 写真渓流をまたぐ丸木橋(紅葉谷)
  • 写真光と影をぬって山道を行く
  • 写真農村地帯を行く太陽と緑の道(二郎)

●住吉道・魚屋道コース

白鶴美術館(2.5キロ40分)―五助えん堤(3キロ1時間)―本庄橋(1.7`40分)―一軒茶屋(4キロ1時間)―ロープウェイ有馬

 住吉道は、東海道線の住吉駅ができてから、有馬へ行く湯治客のカゴなどの往来でにぎわった。この道は、昭和一三年の阪神大水害によって流されてしまい、つい最近復活した道である。五助えん堤から流れ落ちる白い滝、青々とした水…久しく目にふれることのなかったすがすがしい景色だ。だが道は細く、渓流を何回か飛び石伝いに左右するので、ややわかりにくい。約一時間、谷筋を歩くと本庄橋に着く。この橋は、四〇センチで五メートルほどの御影石三つを並べたものであり、石に本庄橋と彫ってある。往時は、このあたりに茶店もあり、昔の幹線をしのばせる。
 五助えん堤の上から、ところどころイノシシが土を掘った跡を見てきたが、本庄えん堤の上の河原でゆうゆう散歩している一メートルほどのイノシシに出くわした。山のフトコロに入ったという感じである。ここから急坂でクネクネ曲っている"七曲り"がはじまる。約四〇分で昔の茶屋をしのばせる一軒茶屋に到着する。
 一軒茶屋の前から約一〇分登ると932メートルの最高峰である。
 魚屋道(ととやみち、さかなやみち)は、東灘区本山町森に始まる江戸時代の有馬への間道である。魚介類を有馬温泉に運んだのでこの名がある。一軒茶屋から五〇メートル東、吉高神社の鳥居跡から尾根筋をくだる。前方に丹波の山々を望み、左に紅葉谷を見、うっそうとした樹海が続き、湯の町有馬を見ながらおりる展望コースである。

  • 写真
  • 写真七曲り付近を行く
  • 写真あなたもご注意!本庄えん堤の川原で出くわしたイノシシ
  • 写真
  • 写真六甲最高峰に位置する吉高神社
  • 写真往時、山越えの魚屋さんの安全を祈願したのか?(魚屋道)
  • 写真
  • 写真落葉山から多紀連山を望む
  • 写真ゆるやかな坂道―魚屋道を行く
  • 写真
  • 写真落葉山山頂にある妙見堂(有馬)
  • 写真
  • 写真
  • 写真静かにねむる湯のまち(有馬)

●有野丘陵コース

ロープウェイ有馬駅(0.6キロ15分)―落葉山妙見堂(2キロ40分)―有馬街道(2.3キロ(高丸山)1時間)―有野団地(4キロ1時間)―北部指導農場(3キロ50分)―神鉄二郎駅

 湯の町有馬の西にあって町をつつみこむようなたたずまいの山が落葉山である。コンクリートの温泉街にあって、見事な樹林が訪れた人に安らぎを与えている。落葉山は一〇九七年、山津波で有馬温泉が壊滅し、一二五〇年仁西上人が有馬の湯再興のためこの地を訪れた時、老翁が現われ、手に持った一枚の木の葉を投げて、あれが落ちたところが温泉になるぞと告げ、コツ然と消えた。そして、その木の葉が落ちたところを掘ると、温泉が湧き出したことに由来する。赤松林の中を尾根にそって北に進むと、ひょっこりと妙見堂に出る。妙見堂は非常にこった精巧なつくりで、境内は手入れもゆきとどいている。
 ここから二〇〇メートルほど北西に進むと展望台がある。ここからは北神の平野と、遠く多紀連山を一望できる。山麓から道場へ延びる長い緑の半島が、これからたどる有野丘陵コースである。神戸市と西宮市の境界をたどり、南に六甲連山、北に多紀連山を望み、有野団地、阪神流通センターの近代さと、のどかな田園風景を下に見ながら進む。神戸市北部指導農場の北からこの丘に別れを告げ、神戸三田線の西側の道に出る。この角に石の道標があり、「右大阪、左すぐ三木」とあり、昔の人のおおらかさにふれる感じである。ここから二郎まで生活の暖みを感じながら真っ直ぐ北ヘ―。

  • 写真渓流に洗われる鎌倉峡
  • 写真秋の野原をゆく(県流通センター付近)
  • 写真丸太づくりの階段が変化をつける散歩路(落葉山)
  • 写真緑の中に開かれた有野団地

●鎌倉峡回遊コース

神鉄二郎駅(1.3キロ15分)―落合橋(1.5キロ20分)―鎌倉峡出合(1.5キロ40分)―百丈岩(2キロ40分)―国鉄道場駅

 鎌倉峡回遊コースは、有馬川の落合橋を渡り、平田配水場の横を通って、赤松林を約一キロ行くと船坂川の渓流に出合う。ここから百丈岩まで鎌倉峡を歩く。青い水、白い巨岩、緑の木が渓谷美をつくる。今までの"太陽と緑の道"にない白い色が印象的だ。瀬を渡り岩に登り、深い渕の上を渡るなどスリルに富む。約一・五キロで直立六〇メートル、空にそびえる大岩峰百丈岩につく。鎌倉峡の名は、鎌倉時代に最明寺入道(北条時頼)がこの地を訪れ、渓谷美を賞讃したということに由来する。
 このたびのコースは登り、下りが多く、それだけにしんどいコースである。しかし変化に富み、眺望も素晴しい。マイペースで登れば決して無理なコースではない。
 初めて六甲を越えた時は、やはり「ヤッタ!」という感激はある。「あなたが来る前はもっと美しかった」とだけは言われないよう、お互いに気をつけて、大いに歩きたいものである。

  • 写真刈り入れのはじまった田園風景(道場町)
  • 写真おっかなビックリ牛にエサをやる(北部指導農場)
  • 写真
  • 写真熊ザサをぬって(魚屋道)
  • 写真優雅に羽ばたくサギの姿も見られる(二郎駅付近)
  • 写真
  • 写真自然の果実あけび
  • 写真シーズンにはハイカーでにぎわう(鎌倉峡)
  • 写真眼前にひらけた百丈岩の偉容
  • 写真
  • 写真奇岩がつづく神戸の秘境(鎌倉峡)
ページトップへ