10号表紙

No.10(昭和47年6月)

特集:

六甲を見直す

かけがえのない六甲を
 
苔むした老木をぬって
  • 清流に沿って(地獄谷)
  • そびえる杉木立(摩耶天上寺付近)

建設進む第二六甲山トンネル

写真
 昭和五十年に人口が十数万人になる見込みの裏六甲側の北神地城と、表側の市街地を結ぶ自動車道路として四十二年四月完成した六甲山トンネルは、現在一日平均六千台で、今後も毎年−日千台程度の通行量の伸びが予想され、近い将来、機能マヒを起こすおそれがある。このため、市街地の中心部、山陽新幹線「新神戸駅」西側から北神地域の中心である箕谷に向け、六甲連山の下を横断する第二六甲山トンネルを建設することにし、市道路公社が昨年十月、総事業費一一〇億円におよぶ大工事に着手した。トンネル部分六・九キロ。完成は五十年三月末の予定。
 これが完成すると、"六甲のカベ"はさらになくなり、北神地城と市街地中心部が文字どおり一直線で結ばれることになる。(写真は、新神戸駅西側から北へ約三〇〇メートル地点での掘削作業)
  • 写真たそがれの小休止
  • 写真
  • 写真裏六甲を行く
  • 写真泣いている渓流
  • 写真樹海を越えて(六甲有馬ロープウェイ)
  • 写真清流に遊ぶ

緑の胎動

 歩きながらホーッと思わず声がでる。
 一日の陽気で、一晩の休養で、道ばたの草はずいぶん伸びるものだ。草だけではない。冬空にすっかり裸にされて、寒さに耐え抜いた落葉樹林、木枯しの山容が少しずつ色づいた、と思う間もなく山ハダが丸味をもって明るくなる。
 淡い緑、紅い芽、白い緑が一度に競い、重なりあう。緑が深まるかと見れば、また別の緑がせり出して湧いてくるようだ。春の波、春動春色、春を知るのは山に限る。  谷が多い。谷が深い。谷は流れを、流れは人を誘い、幾筋かの登山の道をつくる。若葉の谷にふさわしい名の青谷、青葉を透して見る港の風景はあざやか。若葉をすかして仰ぐ青空はさわやか。

   あなとうと 青葉若葉の日の光

 芭蕉の句はすべてを言い尽している。六甲山の多くの若葉の谷、とりわけ紅葉谷、二十渉、大師道、杣谷…を尋ね歩いてもらいたい。新葉の美しい落葉樹林帯は、また秋の紅葉の美しい所でもある。やがて来る錦秋の美を想定しながらの山登りをおすすめしたい。
 長く神戸に住んでいる人は、今日の天気をきく前に六甲山を仰ぎ、疲れては山を、寒くなっては山をながめる習慣がついている。とかく季節から離れ、遠ざかる生活に追いこまれている人々に、季節を伝える六甲山を知らせたい。
 それには新緑のころが最もうなずき易いと思う。ヤマザクラの咲く早春、まだ山の中は冬姿であり、木枯らしの中である。こずえに開く花は生命を伝える光りに見える。新芽の美しさも花のようである。紅い芽、緑の芽が競う。続いて紫色というか桃色というか、ミツバツツジがふもとから順々と奥に咲き広まる。
 ボツボツ芽立ちはじめたアセビが花のような若芽を見せ出す。小鳥が動き、虫が動き、樹木のうごめきが一度に、一雨ごとに変わって行く。

 草臥て宿かる頃や藤の花   芭蕉

(教育植物園長・林 中元)

写真
緑深い谷間を縫って(天月地獄谷)
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