5号表紙

No.5(昭和46年7月)

特集:

須磨海水浴場を守ろう

青い海・青い空― 住みよい都市へ

美しい海に
みんなの手で

 阪神間でただ一つ残された須磨の海水浴場を守ろう―。こんないい方をすると、いわば夏のレジャー施設の一環として須磨海岸をきれいに、というような受けとめ方をされがちですが、もちろんそれはそれとして、須磨の海水浴場を守ることは、実際はそこからもっと大きな公害の問題にさかのぼり、さらには神戸港とも関連して場合によっては、われわれの日常の生活にも直接ひびきます。また須磨の海岸を美しくするためには、大阪湾全体をきれいにしなければ本当に美しくなりません。つまり須磨の海水浴場を守ることは、公害をなくす大きな意味での"シンボル"でもあるわけです。

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活躍する水質監視船(兵庫運河で)

自然に対する再評価

 公害問題で私たちはいろいろなことを学びましたが、その一つは自然環境に対する、"値打ち"の再評価でした。これまでは、ポケットにはいっているお金の額だけで市民がしあわせか、不幸かという考え方をしていましたが、そうではなく、市民の一人一人がどれだけ美しい空気と、清い水と、澄んだ青空を見ることができるかが、むしろ本当のしあわせなのではないかという気持に、みんなの考え方が次第に変わってきたのではないでしょうか。

豊かな神戸の"財産"

 外国の例をとりますと、世界最高の生活水準だといわれるアメリカのニューヨーク市では、ケネディ空港の西のジャマイカ湾に連邦政府の補助をうけて下水・公園を整備し、十五年先に海水浴や魚釣りができるような浄化運動をはじめました。こんな話を聞くと、ニューヨーク市民が十五年後に持つ豊かさを神戸市民はすでに"資産"として持っているのですから、これを大事に守ることは当然で、神戸市でも全力を挙げているわけです。

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●神戸の海を守る

 神戸港は大阪湾の一部です。大阪湾全体にわたる海水の汚濁防止のため広域的な湾対策が必要である。
阪神間で唯一の海水浴場を守るためあらゆる対策を進めています。

 ○下水の整備  ○水質監視
 ○塩素滅菌対策 ○清掃船
 ○オイル・フェンス ○市民運動
 ○養浜実験

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「風向きによって養豚所の悪臭がひどい」と公害機動隊員に訴える主婦(東灘区で)

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第三次公害防止協定のあと握手する(左)から次家・東灘煙害防止協議会長、宮崎市長、嘉納・菊正宗酒造社長

港は神戸の"いのち" 

 さきごろ、神戸青年会議所が山中総理府総務長官を神戸に招いて行なった「公害問題講演会」の席上、宮崎市長は「神戸港の水質も大阪湾の汚濁とあいまって年々悪化をたどっており、神戸の"いのち"ともいうべき港の機能がそこなわれようとする事態も憂慮されている。神戸の街は港で栄えており、この港がダメになることは神戸の街がダメになることである。また市街地から手近に行ける須磨海水浴場が閉鎖されるときは、神戸港がダメになるときだと考えて…」と、神戸港のような特定重要港湾の水質保全に対する国の強力な援助を山中長官に要望しました。
 市港湾局の調べによると、神戸の市民所得の四六%は港湾関連産業から得ているし、市民の二〇%以上は港湾関係または港湾運輸・通信関係に従事しています。そこで、たとえば田子の浦のように、荷物の積みおろし基地として神戸が不可能だというように、もし港湾機能がストップすれば、神戸の経済の四〇%はマヒするだろうといわれています。宮崎市長が、神戸の"いのち"は港だといっているのはこんな理由があるからです。
 港がいつもきれいだと働く人も気持ちよく、外国からはるばるやって来た観光客も、「さすがは神戸港!」ということになるでしょう。

ます陸上から美しく

図:市民からの公害の苦情(昭和45年度)

 ところで、海をきれいにすることは、海につながっている陸上をきれいにしなければ美しくはなりません。船から油が流れ出て海をよごす例もありますが、全体からみると微々たるものです。いままでは、上から流れてくるきたない水にじっと耐えていた海が、これからは海から陸へ攻めていく形で、単にゴミを清掃するだけでなく、下水道を早く整備し、たれ流し企業に対してもっときびしい規制をするとか、川を美しくする規準を決めて何年後にはどうするという目標を決める。あるいは産業配置の問題、都市計画の問題というふうに、これらの対策を総合的に実施することは公害の基本的な問題におのずとさかのぼります。

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排気ガスによる汚染がひと目でわかるCO電光表示機(葺合署三宮センター派出所前)

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空の汚染状況を知らせる大気汚染監視センターの電光表示機

水で分かる住みよさ

 ある地域が住みよいか、住みにくいかを決めるには、その地域の海水をコップにいっぱいくんできて、それがきれいだったらそこは住みやすい―とある学者はいっています。万国博の日本庭園にきれいな小川が流れていて、子どもがたくさんハダシではしゃいでいた風景を思い出しますが、日本の風土や生活と水は切りはなせませんし、せっかくの"グリーン神戸作戦"も、きれいな水でないと緑は育ちません。"水を制するものは国を制す"―という古めかしい言葉があります。これは行政の上でも、今もむかしも変らない永久の課題でしょう。

きびしい水質基準

 そこで具体的な対策として、七月一日の"海開き"にさきがけ、神戸市は今年から須磨海水浴場の水質に独自のきびしい基準を設けることにし、その予備調査を行ないました。その結果は、透視度以外の大腸菌や海水の腐敗度を示すCOD(化学酸素要求量)は基準を上回るかんばしくない成績でしたが、さらに本格的な調査を行ない、新しい水質基準と対応策によって昨年より快適な海水浴場づくりをめざしています。

水質監視局を新設

 水質規準は、国の海水浴場の水質環境基準よりかなりきびしい目標を定め、この実現のため須磨浦の市長公館裏に県下ではじめての水質監視局を設け、水質監視船で水質を常時観測、例年どおり須磨駅、須磨海水浴場三ヵ所、市役所市民ホールなど五ヵ所に海水浴の適否を知らせる表示板を出します。

最重点で総合施策

 一方、沖合百五十メートルの線に延長二・三キロにわたってオイルフェンスを設置、油や汚物の流入を防止します。昨年効果をあげた塩素滅菌は、今年は海水浴場に流入している小河川、下水溝七ヵ所で実施、また新鋭清掃艇も一隻ふやして二隻にして常時海面清掃を行なうなど、あらゆる対策を総合的に進めることにしています。

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