4号表紙

No.4(昭和46年4月)

特集:

グリーンコウベ作戦

緑あふれる住みよい都市へ 市民の協力で全市にグリーンのネットワーク

前年より22・6%増
新年度予算

●二千億円の大台越す

 神戸市の四十六年度当初予算総額は二千三百千八億円で、前年度の当初予算にくらべて四百二十七億円、二十二・六%の増加となっており、二千億円の大台を大きく越えました。前年度にひきつづいて、「しあわせなくらしをつくる市政」と「ゆたかなあすをひらく市政」を基調とし、特にことしは「住みよいくらしのために」「子どもと老人とめぐまれない人のために」「健康と安全のためーーとくに、公害の追放と緑化の推進−ー」そして第四が「ゆたかな生活をきずくために」を重点施策として予算を編成しています。とりわけ公害の追放と、失なわれつつある緑をとりもどす"グリーン作戦"の推進、それに老人福祉の三つが最重点項目として挙げられるでしょう。
 この予算案を審議した市会本会議での提案説明のなかで宮崎市長もふれていますが、現行の税財政制度のもとでは、大都市財政はどことも非常に苦しく、政府の財政措置にもあらたに期待される要素は、ほとんど見出せない状態です。

●市民の声を予算に反映

 それにもかかわらず、このような思い切った大型予算を組んだのは市議会の意見や、また昨年末に行なった全世帯アンケートの回答にあらわれた市民の要望、あるいは市民集会や各種の懇談会などで表現された市民の感覚を敏感に受けとめ、総合基本計画と生活環境基準の調和のある達成に、可能なかぎりの配慮をしたことがおのずと"大型"につながったといえます。

●運営に企業的な感覚

 そのことについて市長は、同じ提案説明のなかで「私は市政の運営が、既存の制度や既成のワクの中で、与えられるものを待ち、安定性の確保をのぞむだけでは、大きな発展は期されないと思います。市政の運営もみずから創造する努力をかさね、ひとつの組織体として企業的な感覚を生かした配慮が必要ですしたがってその財源は、与えられることによって満たされるものではなく、運営の努力によって生み出されるものだと思います。私は、嘆くことは責任を転稼することでしかなく、苦しみを打破するなんの糧(カテ)にもならないと考え、創造することにこそ道をひらく端緒があるものと信じております」と述べています。少し長くなりましたが、新年度予算と関連して、こんな市長の政治姿勢がうかがえます。
 そこで、ことしの重点施策の具体的な内容についてはこのグラフ誌でも号を追って持集しますが、春にちなんで、今回はまず緑化の推進。"グリーン・コウベ作戦"をとりあげてみました。

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グリーン神戸作戦"の記念植樹をする市長
(市章山)

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グリーン作戦の記念植樹に参加した、たくさんの市民(灘区青谷川公園)

●三つの柱に十億円

 "花と噴水と彫刻のある街"―。
 一見ぜいたくなようにきこえますが、経済の急速な成長で市民生活の水準はかなり向上してきました。しかし一方では、生活環境が破壊され、ともすれば人々の心がすさみがちな今日ではぜいたくどころか、こんな時だからこそやらなければならないことだといえます。
 神戸の町は現在でも海と山の自然に恵まれていますが、経済の成長や住宅地の造成などで山の緑が次第に失なわれています。こうしたことへの反省もこめて、四月から全市的に広範なグリーン作戦を展開していこうというもので、市街地の緑化、背山の緑化、団地の緑化を三つの柱にしており、これに関連した事業費として新年度は約十億円を計上しています。

●楽しい"花木の山"

 まず市街地の緑化では、市内にいわゆるグリーンのネットワークを組みます。南北の川沿いと東西の幹線道路にグリーンベルトをつくり、背山には常緑樹を植え込むほか、サクラ、ツツジ、サツキなどそれぞれ特徴のある花木の山を造成する計画です。
 住宅団地や埋立造成地には、小公園や街路樹の増植のほか、規模の大きい苗木の畑づくりも考えられています。たとえば、東灘区の渦森団地では松、ツツジ、アジサイ、アベリア、サクラ、サザンカなど。また市営住宅団地ではサクラ、モミジ、マツ、アジサイなどの苗木を配布し、自治会などによる緑化を呼びかけます。

●人口の増加に対処

 以上がごく大ざっぱなグリーン作戦の内容ですが、これを全市域的な緑化という観点から説明しますと、神戸は六甲山系の奥のふところが非常に広いので現在のいわゆる市街地面積は、全市域のうちの十五%ぐらいです。残りは元の自然のままということですが、都市への人口集中はやはり続くでしょうし、また核家族化ということもあって住宅地はどうしてもふやさなくてはなりません。そこで計画的に、市内にどれくらいの人が住むようにするかについて、市の開発基本計画では、一応百八十万人を想定して団地の造成計画などを進めています。現在の人口は約百三十万人ですから、そうするといまの市街地を倍の三十%ぐらいにしないと人が住めなくなるので全体からみますと、三割が市街地で七割が元の自然のままという、これが基本的な考え方なのです。
 この三割を市街地にする造成工事がいま進められているわけで、見た目にはずいぶん自然がつぶされていくように感じますが、これが出来上がると、旧市街地よりはもっと木や花壇のある"緑の団地"になるわけです。また残りの七割についても、そのままでほっておくとマツクイ虫だとか、裏山が自然に荒れることもあるので、今後のグリーン作戦のなかで積極的に背山の植樹をする。

●街づくりにバランス

 市街地の緑化についても、さきほどの説明のように、グリーンのネットワークによって緑化する―ということですから、他の大都市などにくらべると、神戸はまだまだバランスのとれた街づくりが可能です。

●盛況な"花の即売会"

 たまたまグリーン作戦と歩調を合わせるように、四月一日から七日までを緑化強調週間として、第一日が「家庭みどりの日」第二日「職場みどりの日」第三日「山のみどりの日」第四日「街のみどりの日」第五日「交通みどりの日」第六日「学校みどりの日」、そして最後の第七日が「各自記念のみどりの日」として、市民総ぐるみで街をみどりにしょうという運動がくりひろげられました。各区ごとに区役所と神戸緑化協会、神戸フラワーソサイティが主催し、神戸市婦人団体協議会の区婦人連合会の協賛で"緑と花の即売会"が三月末から四月はじめにかけて行なわれましたが、どの会場もたくさんの市民がつめかけ、午前中の二、三時間で売り切れてしまうほどの予想以上の盛況ぶりでした。
 四月三日には、神戸の西北端にある雌岡(めっこ)山へ市長や一般市民百余人が参加してスギの苗五百本を植樹しました。家族連れが多く、なかには自分が育てたヒノキ、ヤマモモの苗木二十二本を持参して参加した灘区中原通六、美代納利さん(七二)もまじっていて、ほとんどの市民が「これからも市民参加の植樹を続けてほしい」と話していました。

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グリーン各区で行なわれた苗木の即売会は どこも家族連れや奥さん方で大にぎわい
(鶴甲団地北公園)

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市長と市民がいっしょになって、楽しそうな植樹のひととき(雌岡山)

●強い緑への関心

 また六日には、グリーン作戦開始の記念植樹を市長と一般市民がいっしょになって市章山周辺と灘区青谷川公園周辺で行ないましたが、このような一連の行事に共通していえることは、緑とか花に何かを求めようとする市民の気持が非常に強いということです。
 緑とか自然に、いまわれわれは何を求めようとしているのでしょう。経済が発達して、生活がゆたかになればしあわせなんだと思っていたら、自然がこわされ、一方では公害が起きて案外そうではなかった。そこでほのぼのとした人間性の回復という意味で、心のよりどころを緑に求める人も多いことでしょう。
 これは花を愛し、緑を育てるというやさしい心にもつながります。また町内とかグループがいっしょになって花壇づくりをする、苗木を育てることから隣人社会の輪というかコミュニティづくりができます。いずれにしろ、六甲の自然のふところに抱かれた"グリーンとブルーの街"は日本はおろか世界的に知られた神戸のイメージですし、この素晴らしい環境はぜひ守らなくてはなりません。

●緑を通じて優しい心

 ある市民の一人がこんなことをいっています。家の前の歩道に立っている木が、これまでは邪魔に思っていたそうですが、この一本の木が出してくれる酸素によって、自動車の排気ガスを何分の一にせよ薄くしてくれている。あるいは、交通事故で万一車が家へ飛び込んでくるような時にもこの木が防いでくれるー。こんなことに気付くと、急に木が可愛いくなって、水のいっぱいでもやりたくなったというのです。

●根気のいる大事業

 これは一例として、確かに私たちは植物と共存しています。植物の育たない地球に人間は住むことができません。そしていま一つ、木も人間と同じで、親が手塩にかけて子どもを育てるように、木も息の長い愛情と育ちやすい環境がなければ長生きはできないのです。その意味でも、神戸市がいまからはじめようとしているグリーン作戦は非常に根気のいる大事業であるのと同時に、市民のみなさんの協力がなければ成功はおぼつかないでしょう。
 行政と市民のみなさん一人一人がいっしょになって、大きな緑の遺産を、どうか後世に残してやろうではありませんか。

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