3号表紙

No.3(昭和46年1月)

特集:

ゆたかなあすへ

自然と調和したゆたかな都市へ 住みよいくらしのために

人間中心のマスタープラン

 ゆたかなあすの神戸を私たちが考える場合、その大きな土台になっているのは、神戸市が昭和四十年につくったマスタープランであります。これは昭和七十年、つまり当時から三十年後の神戸のあるべき姿を見越してつくった都市づくりの計画ですが、この計画の一番大きな柱は人間が人間らしく生きられる都市という、いわゆる人間尊重を基本理念としてつくられたものです。
 当時は、まだ、公害も人間尊重ということばも出ていませんでした。そんな時代に、都市を育て、繁栄させていくためにはまず人間が中心でなくてはならない。そこに生活する市民がたとえば公害で悩むとか、交通事故のために苦労をするということであっては、決してゆたかな繁栄にならないというマスタープランの基調は、画期的なものとして、注目されました。この精神はもちろん生かされるべきだし、今後とも生かすように最大限の努力をするのは当然のことといえるでしょう。
 そこでゆたかなあすへ向かって何をどうすべきかということですが、ごく大ざっぱにいえば、まず海と山にはさまれた細い帯状の市街地をどうするかの問題、そして六甲山のうしろにある未開発の西北神をどうするかという点。一方、神戸はなんといっても港によって栄え今後とも繁栄する街ですから、港湾というか海の問題もあります。また、市街地と西北神を、"びょう風"のようにへだてている六甲山系をどうするか―などの点に分けて考えることができるようです。
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市街地再開発が急ピッチの三宮付近

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海にひろがる神戸―。
手前がコンテナー専用埠頭の摩耶埠頭、前方やや左の新しい陸地がポートアイランドで、スピードアップが要求される港湾荷役はますますコンテナー化が進んでいる

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すでに使用されているポートアイランドのコンテナーバース。真新しい大型クレーンと前方の神戸大橋の赤色がひときわあざやか

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ポートアイランドの完成予想図

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大規模な開発が進む鈴蘭台団地

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西神地区を結ぶハイウエー名谷インター付近

再開発と高度利用の市街地

 まず市街地については、過密した市街地を住みよくするためには土地の高度利用による再問発が行なわれなくてはなりません。この再開発事業はこれまで西神戸、六甲道の副都心づくり、あるいは三宮の市街地改造事業というような主として商業地域を中心に行なわれてきましたが、これからは商業地域以外にもこれをひろげていくことになります。国鉄兵庫駅前に"ミニ・シティ"をつくるのもこの一例です。
 また最近、職住近接ということがいわれていますが、職場と住居がいくら近くて便利でも、公害のあるような所では意味がありません。そこで公害がないようにするためには地域の純化が当然大きな問題として起こってくるでしょう。たとえば工場と住居がいっしょに同居しているようなことでは公害のない街づくりも不可能なわけで、できることなら工場は工場でまとめ、住宅と分離していくというような施策の前進も市では考えています。

西北神に住みよいニュータウン

 西北神の大がかりな団地づくりは、ここにはまだ山もあり緑もあるわけですから、ほんとうに人の住みやすい、生活がたのしめる思いきった新しい街づくりが考えられています。交通事故のない歩車道分離も完全に行なわれますし、緑もふんだんにあるでしょう。マスタープランが達成されるころには恐らく百八十万ぐらいの人口になる想定で、北神に二十五万人、西神は三十五万人という人口分布からみても、これは単なる団地づくりというより文字どおりニュータウンづくりです。
 それだけに、中間にはさまっている六甲山をどうするか、そして六甲にはさまれた市街地と新しい西北神地域を結ぶ交通をどうするかが大きな課題になるわけです。すでに第一六甲トンネルができ市民の足を便利にしていますが、昭和四十六年度からは第二六甲トンネルがいよいよ調査の段階から、実施への第一歩を踏み出すことになります。これは国鉄新幹線の新神戸駅、つまり布引のところからトンネルを堀り進んで箕谷へ抜くという長いトンネルで、これが完成すれば北神と市街地を結ぶ市民の足はいっそう便利になります。
 鉄道の関係では山陽新幹線が四十七年四月から岡山まで開通することになり、われわれ市民にとっては新神戸駅、西明石駅の両方が利用でき、東京へ行くにしても、四国や九州方面に行くにしてもこれまた非常に便利になるでしょう。

「六甲埠頭」建設も本格調査へ

 一方、港湾の関係ではポートアイランドの造成は着々と進んでおり、いま西側の一部を使用しているコンテナー専用埠頭はどんどんふえます。さらにポートアイランドだけでは将来のバース不足が予想されるので、ポートアイランドの東に六甲埠頭をつくる計画を進めています。これはポートアイランドの約一・五倍という大きさで、これも近く本格的な調査がはじまる予定です。
 神戸港は単に物資の輸出入港というだけでなく、いわゆる瀬戸内海の東の門戸として国内物資の流通の面でも大事な機能をもっているわけで、そんな意味でもフェリー時代を迎えた今日、その基地も並行して充実しなければなりません。東神戸フェリー埠頭にすでに一バースが完成、つぎつぎに計四バ−スがつくられます。西の長田にもフェリー埠頭があり、この整備拡充もはかられるというように東西のフェリー埠頭が完成すると、神戸は名実ともに日本の東西の接点としての役割を果すことになります。さらに現在、国で調査段階にある国際空港の建設場所が決まると、陸海空の接点に神戸がなるという可能性も多分にあります。

公害のない"頭脳産業"中心に

 このような神戸の将来図、あるいは地域の性格からいっても、神戸の産業は情報化時代に合った頭脳的な産業を中心に考えられるべきでしょう。もともと神戸は海からはいってきた情報によって栄えた都市だし、今後も情報の収集には努力をしなければなりません。そのために商工貿易センタービルができ、一方、将来はポートアイランドなどにもそんないろいろな情報網を集める機能をもたせることが大切です。また臨海部には新しい産業立地の余地がないため、これから開発される西神地域あたりに公害のない頭脳的な産業をもつための工業団地づくりも計画されており、準備を進めています。

レクリエーション地域の整備

 ところで海の問題と関連して昨年、須磨浦海岸の"養浜実験"というユニークな事業を市で行ないました。白砂青松として広く知られたこの海岸も最近は次第によごれ、海岸の砂が浸しょくされて海水浴もできなくなったところからこれを復元し、レクリエーション地域として夏は海水浴場に、秋や春はたのしい散策地として、そこで市民が語らい、安らぎを求める場所にしようという試みです。この事業も今年からさらに進められることになります。
 またレクリエーションといえば、神戸市民の大きな財産である六甲山地域があります、これも緑を守り、市民の手近なレクリエーション地域として市民の健康を増進することに役立てようと、中央森林公園計画と並行した自然保全の施策が行なわれています。さらに六甲山だけでなく、六甲山のうしろ側に帝釈山系があり、この残された処女地を第二の六甲として今から大事にして荒されないようにし、ここも将来は新しいレクリエーション地域として開発する計画です。

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目を見はる高倉山一帯の造成工事

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区画整理事業も同時に進む布引周辺

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急ピッチで進む新幹線新神戸駅

神戸の独自のよさを育てる

 このように、私たちがゆたかなあすを考える場合、ともすればフィジカル(物的)なことだけを想像しがちですが、その基調になるのは、さきにも述べたようにやはり人間が中心なのです。百八十万の人口が神戸に住んでも、どこよりも神戸が住みよい街だということでなければなりません。そのためにいまから手を打って、緑を残し、住宅にしてもきれいに配置して公害のない、ほんとうに人間のための住む街にみんなで力を合わせて、そうしなければならないのです。

市民と行政が力を合わせて

 そしていま一つ私たちが考えたいのは、よく神戸はエトランゼの街だとか、エキゾチックな街だとかいわれますが、そのような他の大都市にはない独特のふんい気、街の良さをぜひ育てていきたいしこんな特異性をもっともっとのばすことも非常に大事ではないでしょうか。せっかくわれわれの先輩が育ててくれた神戸の良さを守り、さらに育てていくためには、やはり神戸の特殊性を十分に生かした街づくりや計画が必要です。
 そんな意味ても、たとえば街路樹にしてもコマ切れの点ではなく、もっと広い線的、面的に考える。あるいは噴水や彫刻をふんだんに街に配していくというような、新しい都市計画のあり方についても市民と行政がいっしょになって考えていくことが大切ではないでしょうか。

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