2号表紙

No.2(昭和45年10月)

特集:

市政をみんなで

対話―市民とともに 住みよいくらしのために

市政をみんなで考えよう

 「神戸市は神戸市民のためにあり、神戸市政は神戸市民とともに歩む」―これは宮崎市長のことばですが、宮崎市政の三つの柱の一つである"みんなと話し合う市政"は、ひと口にいって、これからの市政は市民とともに歩むんだという、市長のこのことばにつきると思います。つまり市政は市民のためのものですから、そのためには市が何を考え、何をしようとしているかをまず市民に十分理解していただく。と同時に、市の方でも市民が本当に何を考え、何を願っているかを十分に知る。この市と市民のパイプをどうしてつなぎ、そしてこれをもっともっと太くするにはどうすればよいか。話し合う市政の本当のねらいはここにあるのです。

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市民といっしょに火事の恐ろしさ、防火の必要を考える、"動く防火教室"

市政と市民の"対談"アンケート調査

 神戸市ではこの十月一日から五日まで全国いっせいに行なわれた国勢調査と並行して、市内の全世帯を対象にして「姿勢をみんなで考えよう」のアンケート調査を行いました。この内容についてはすでにみなさまのお手元にとどきすでにたくさんの回答が寄せられているのでここでは省略するとして、市と市民の対話としてはこれがもっとも大がかりなものですので、一体どんな思いつきで計画され、実行されたのか。話し合う市政を考える手近な材料としていま一度ふり返ってみることにしましょう。
 まずその動機ですが、市長選挙の際に市長が町のすみずみまで歩き、ヒザをつき合わせて地域の人たちと話し合って感じたことは、いかにたくさんの人たちが、いろんな形で、いろんな内容の、いわば欲求不満のようなものを持っているかということでした。市政に対して要求したいことはたくさんある。しかし、本当の意味でのパイプが通っていないため、さてどこにはけ口を求めようかと思ってもその手段がない。それでいっそう不満が高じるという実際の姿にしばしば出くわしたわけです。
 それといま一つは、とかく人間は自分の知らないところで、何事にしろ決められると腹が立つ。自分たちの住む町をよくするために自分もそこに加わりたい。むつかしくいえば直接民主主義というか、代表を通じてではなく、市民一人一人が行政に参加したい欲求が最近は非常に強くなってきていることです。
 そこで、このような欲求不満をなくし、みんなの考えをできるだけとり入れるとともに、自分も市政に何らかの形で加わっているんだという気持ちになってもらわないと、いくら市民に市が協力を求めても、なかなかおいそれと乗ってもらえません。それにはどうすればいいかをいろいろ考えあぐねたすえ、市長就任後、みんなで話し合う市政を大きな柱の一つにとり上げ、そして行政と市民の"断絶"をとり除きたい一心が、こんどの「市政をみんなで考えよう」のアンケート調査につながったということです。

回答はコンピューターで

 神戸のような大都市で、全部の世帯を対象にこんな調査をした例は日本はおろか、世界でも例がないだろうといわれています。確かに、学問的には、市民の考えていることを市が吸い上げるだけなら、もっと簡単な"サンプル調査"もあります。しかしそうではなく、このアンケートを通じて全市民の一人一人に語りかけ、また一人でも多くの人たちから回答をいただくことによって、お互いに心のかよったコミュニケーションを形づくっていきたい。ここにアンケート調査の持つ大きな意義と特色があったのです。この調査は今後も毎年続ける予定で、もちろん寄せられた回答に対してはさっそくコンピュータにかけ、行政の進め方や翌年の予算に反映させるつもりです。
 このほか話し合う市政としては、役所の機構にことしから各区に広報相談課を新設しました。これも役所の考えていることをなるべく早く、また、たくさんの人に伝えながら、市民の考えを素早く吸収するパイプ役です。このほか婦人市政懇談会や区民集会をそれぞれ開いたり、市役所での日曜相談、あるいは市民社会科教室、動く防火教室、また市民といっしょに公害の汚水調査や道路の点検をするなど、単に話し合うだけでなく、市民とともに行政を考える催しがふえています。こんな施策を積み重ねることによって、市民の理解を深めてもらう一方で市の職員自身が"話し合いの市政"の真のあり方を、自然な習慣として身につけてほしい、というのが市長の気持なのです。

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妙賀山清掃工場を見学する市民社会科教室のみなさん

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協定に調印のあとあいさつする市長
(右は外島・神戸製鋼社長)

市民も社会的視野に立って市政参加を

 そこで、この話し合いの市政、またみんなで考える市政について市民のサイドでどんな考え方があるのか。その代表的な声として永谷晴子さん(灘神戸生協婦人部長)秋山桓士氏(兵庫労働金庫専務理事)吉井みつえさん(神戸市婦人団体協議会灘区運合会長)の三人に語っていただきました。
 まず永谷さんは「たとえば最近行なわれたアンケート調査にしても、できるだけ多くの市民が回答を寄せることが第一の参加ですね。そしてただ回答するということでなく、運動場のことだったら子どもと話をし、福祉のことであれば家中でみんなが考えてみるというふうに、何日もかかって回答用紙に書くことが市政を身近に考えることになるのではないでしょうか。また、これはこれからの方法論ですが、たとえば公害防止について市民が何を望むかだけでなく、どんな方法があるでしょうというような市民への問い方、とり組み方が必要でしょう。」
 そして秋山さんは「市民はたくさんの要求はもっているが、さて具体的にどうこうとなると、大部分の人はよく分からない。だから身近なこととか、思いつきの声が多くなりがちで、それを全部満たすことが一〇〇%とは私は考えません。やはり市としては、そんな要求をふまえた行政をする一方で、あす、あさってのことを十分に考えた先取りの構えをちゃんとしておいてほしい。そうしないと、いつも後から追っかける行政、後から追っかける要求になっては困るのです。そのかわり、市民は市政に対して責任をもたなければいけないし、また市政だけでなく、社会的な責任を感じて努力をしなければいけないと思います。」
 最後に吉井さんは「私たちの身の回りの問題を解决するには、私たちみんなの努力だけではできない。やはり行政の力を借りなければということで四十二年から市政懇談会を続けてきました。数限りない要求がいろいろ出たわけですが、そのほとんど九〇%近い要望をかなえていただいたものの、ふと考えてみると、たとえばミゾの中に落ちているゴミまで役所から取りに来ていただくというようなことが果してよろこんでいいのかどうか、ということに気付いたのです。私たちは私たちなりに市民としてしなければならない義務、私たちだけでできることがたくさんあるのではないだろうか、ということに気付いたわけです」

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